次世代コンタクトセンターデザイン論④ ~鉄道会社発「コンタクトセンター情報ハブ化」への挑戦~

~この記事の要旨~

鉄道会社では運行障害などのアクシデント発生時、お問い合わせが爆発的に増加します。「1対1」に個別対応に限界がある中、ウェブのFAQやSNS、電話のIVR、SMS(ショートメッセージ)などクロスチャネルでスピーディな情報発信をしていくために、コンタクトセンターは何ができるのでしょうか? 従来の「1対1」の顧客対応に止まらない、次世代コンタクトセンターのあり方を考えます。

前回までの記事はこちら:

次世代コンタクトセンターデザイン論①~次世代コンタクトセンターに求められる役割とは?~

次世代コンタクトセンターデザイン論②~大手ホテルグループが描く、次世代コンタクトセンター像~

次世代コンタクトセンターデザイン論③~コンタクトセンターでお客様を"見える化"する。金融業界にみる次世代コンタクトセンター像~

- 前回は住宅総合サービス企業の事例を交え、コンタクトセンターで蓄積した情報を営業やマーケティングに活用する方法について伺いました。

前回の話は、コンタクトセンターで蓄積された情報をもとに、ひとりひとりのお客さまについて理解を深め、ひとりひとりのお客さまに最適なアプローチをしていくという、いわば「1対1」のコミュニケーションをより良くしていこう、という話でした。しかし今後、コンタクトセンターは「1対1」だけでなく、不特定多数のお客さまに向けた「1対N」のコミュニケーションにも、大いに貢献していくことができると考えています。

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藤村 将宏 | MASAHIRO FUJIMURA

バーチャレクス・コンサルティング株式会社 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 ゼネラルマネジャー

私が現在携わっている大手鉄道会社C社のプロジェクトでは、コンタクトセンターを企業の「情報ハブ」とした「1対N」の情報発信に挑戦しています。

鉄道の駅には「出面」という、いわゆる駅員室があります。各駅の出面ではこれまで、駅構内にいるお客さまの対応に加えて、電話での問い合わせ対応も担っていました。しかし各駅の出面は、収益化のため必要最小限の人員体制で運営されており、たとえば事故や天災による運行障害が起こった際などは、とても対応しきれません。そこで現在、これまで各駅で対応していたお客さまからの電話でのお問い合わせを、段階的にコンタクトセンターで巻き取っていく体制作りを進めています。

C社ではこれまで、お客さまからの電話を各駅がバラバラに対応していた上、対応履歴も残していませんでした。それを今回、まずはお問い合わせ窓口をコンタクトセンターに一元化すると共に、試験的にSaaS型のコンタクトセンターシステムを導入しました。これにより、コンタクトセンターには「お客さまが知りたいことは何なのか = お問い合わせリーズン」が集約され、より「かゆいところに手が届く」情報を提供しやすい環境になりました。

- 具体的に、どういったお問い合わせが多いのでしょうか。

このプロジェクトが特に見据えているのは、事故や天災による運行障害など、何らかのアクシデントが発生したときのお客さま対応です。

鉄道会社では運行障害の発生時、問い合わせが爆発的に増えます。しかし、コンタクトセンターはアクシデント時の問い合わせ量にあわせて人員を配置することはできないため、とても全ての電話には対応しきれない状況になります。運行障害の発生時に多いのは、たとえば「今わたしは○○駅にいるのですが、何時に○○駅につきますか?」とか「○○駅で〇〇駅の間で電車の中に閉じ込められているのですが、いつ動くのですか?」といった、致命的かつパーソナルなお問い合わせです。こういったお問合せへの対応としては、一般的にWeb上に掲載される、「○○線の運行状況についてのご連絡」といった粗い、不特定多数の"N人"向けの情報発信では不十分です。また、上記の通り、こうしたひとつひとつのお問い合わせ全てにお電話で「1対1」で対応することにも限界があります。

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- では、お客様の個別ニーズに応えつつ、コンタクトセンターとしての限界も超えるにはどうすれば良いのでしょうか。

コンタクトセンターには「お客様が知りたいこと」が集まってくるため、そこで「どんな情報を発信すべきか」を把握することができます。大量のお問い合わせから「今、お客さまが困っていること」を集約し、お困りごとを解消する情報が何かを見出すことも可能です。そして、そのお困りごととお困りごとを解消する情報を、ウェブのFAQやSNS、電話のIVR、SMS(ショートメッセージ)、あるいは各駅での対面対応などあらゆる顧客接点で、リアルタイムに展開することもできます。運行障害の復旧状況についてすぐに答えられなくとも、たとえば「今どういう作業をしているのか」「今のところ見通しはどうなっていているのか」「何分後に情報を出します」という情報をクロスチャネルで適宜発信するだけで、お客さんは安心できます。コンタクトセンターが企業の「情報ハブ」になって、「1対N(不特定多数の人々)」をさらに高度化した、「1対G(グループ=特定の興味関心を持った特定の人々)」のコミュニケーションに貢献できるのです。

電話での問い合わせをコンタクトセンターに回したことによって、各駅の出面が楽になったことも活用できます。大規模な運行障害の発生時などには、路線情報などがシステム的に追いかけ切れず、情報が錯乱してしまうこともあります。そうしたときに、各駅の出面と連携して生の情報をリアルタイムで仕入れ、素早く発信していくことができれば理想的です。コンタクトセンターを中心に、様々な顧客接点がリアルタイムで連携できるような組織体制を整えておくことが重要です。

- 震災時の対応などにも活用できそうですね。

そうですね。東日本大震災のときは、電話がつながらない一方で、ツイッターなどのソーシャルメディアが情報ソースとして活躍しました。そのことは、大きなアクシデント発生時のコミュニケーションツールとして、ソーシャルメディアが強固な情報インフラとしての機能を果たし得ることを証明したといえます。一方で、様々な「デマ」や真偽がわからない情報が拡散され、一層の混乱を招いてしまう、といった問題も発生しました。鉄道会社のように社会インフラを担う組織が、信頼できる情報をリアルタイムで広く発信していく基盤を作ることは、社会的にも大きな意義があると認識しています。このプロジェクトは現在、ある地方都市で試験的に進めていますが、他の都市にある各支社からも興味を持っていただいています。

鉄道会社のように巨大な顧客層を持つ企業では、「1対1」の対応には自ずと限界があります。また、お客さまとしても、電話をかけずして必要な情報を得ることができるに越したことはないはずです。コンタクトセンターが「情報ハブ」となって、情報を「適切な人に、適切な形で、適切なタイミングで」届ける仕組みにどう貢献するか。次世代コンタクトセンターを描く上で、これはひとつの重要な概念だと思います。

(第5回へ)

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