コールセンターをはじめとするカスタマーサポートの現場では、業務効率化が急務となっています。これは単に人手不足対策だけに留まりません。日々増え続ける膨大な顧客情報、応対履歴などのデータを適切に管理・活用できる仕組みを整えることが、カスタマーサポートの品質向上に直結するためです。
電話、メール、SNS、チャットなどコンタクトチャネルが多様化している今、「使い勝手の悪い既存システムを仕方なく使い続けている」「Excelで代替えし、手入力や確認が多く、業務が煩雑になっている」といった課題を抱えるコールセンターにとって、精密なデータ管理と業務自動化を実現するマルチチャネルのCRMシステムの導入は、有効な解決策の一つです。
本記事では、不動産関連企業であるK社が、従来の「独自システムとExcel」による顧客とのコンタクト履歴管理をCRM導入によって刷新し、業務効率を飛躍的に向上させた事例をご紹介します。
1. 導入前の課題:Excelと独自システムによるコールセンター業務の属人化
システムリプレイスの背景
近畿圏の不動産関連企業のK社は、分譲マンションの入居者様からの問い合わせに対応するコールセンターを運営しています。その運営は、K社と外部委託先2社をあわせた3社体制で行われていました。
しかし、業務の基盤となっていた顧客情報管理のためのシステムは、長年利用してきた独自システムとExcelの併用であり、業務の複雑化や属人化といった多くの課題を抱えていました。
【課題1】: 独自システムとEXCEL併用のため、データ二重入力と管理の煩雑化が発生
K社のコールセンターでは、直接K社が対応する問い合わせと、委託先経由の問い合わせでは入力先が異なり、最終的にすべての情報をK社が管理するExcelに転記するという複雑な運用を行っていました 。
CRM導入前の応対履歴管理の手順
この「独自システム+Excel」という2つのシステムを併用した情報管理が業務の煩雑化を招き、担当者間の引き継ぎにも支障をきたしていました。業務の属人化を解消するためにも、顧客情報の一元化とシステム刷新が急務な状態でした。
【課題2】: 20年分、15,000件のExcelデータから手作業での履歴検索
また、検索機能や履歴管理機能が十分ではないことから、顧客対応履歴やFAQ、問合せ内容の集計・分析といった業務には非常に時間がかかっていました。
独自システムは「顧客単位」での履歴管理ができず、過去の問い合わせ詳細を確認するには、20年間で蓄積された延べ15,000件もの膨大なExcelデータを手作業で遡る必要がありました 。
20年前のデータには手入力による情報の抜けや誤りも多く含まれており、担当者はこの膨大なデータの中から必要な情報を探し出し、時には社内外から別途資料を取り寄せて回答するという、非常に時間のかかる対応を強いられていました。
【課題3】: 自動作成などの機能がなく帳票作成のたびに発生する手作業
K社では、物件の管理や修繕を外部企業へ委託しており、その都度、依頼内容を記した帳票を発行する必要がありました。しかし、従来のシステムには帳票の自動作成機能がなく、担当者が関連データを探しながら一件ずつ手動で作成していたため、この作業が大きな負担となっていました。
2. CRM導入後の効果:応対時間は半減、帳票作成は1/10に!具体的な4つの改善点
これらの課題を解決するため、K社はクラウドCRMサービス「Virtualex iXClouZ(以下、アイエックスクラウズ)」の導入を決定しました。その結果、業務効率は飛躍的に向上します。アイエックスクラウズは、バーチャレクスが自社開発した本格的なCRMパッケージである「inspirX(インスピーリ)」をベースとしたサブクリプション型のCRMです。
コールセンター業務を支える基本機能に加え、セルフカスタマイズ機能やユーザビリティを意識したUIなど、業務負荷軽減と効率化に貢献する機能を安価に利用できる製品です。
アイエックスクラウズによるコールセンターシステムイメージ
アイエックスクラウズをCRMとして導入し、顧客情報や顧客とのやり取りを一元的に管理することで、以下の効果がみられました。
【効果1】: 問い合わせ1件あたりの応対プロセスと時間が半減
CRM導入による最大の効果は、問い合わせ1件あたりの応対時間が半減したことです 。以前は、例えば「壁紙を修理したい」という問い合わせに対し、担当者が壁紙のカラーをヒアリングし、膨大なExcelデータから該当情報を探し出すのに多大な時間がかかっていました 。導入後は、物件ごとの詳細情報(壁紙のカラーなど)を保管したGoogleドライブのURLをCRMの顧客情報画面に添付する運用に変更 。これにより、担当者は即座に必要な資料を参照できるようになり、従来4~5ステップかかっていた応対プロセスが2ステップ程度に短縮されました 。結果として、1件あたりの応対時間は約半分になったと評価されています。
【効果2】: 問い合わせ回答の属人化を解消、リードタイムが短縮
従来のコンタクト履歴管理体制では、「その案件を詳しく知る担当者」の回答を待たなければならず、属人化しており、お客様への回答が遅れる原因となっていました 。CRM導入後は、すべての「コンタクト履歴」や「応対履歴」がシステム上で一元的に共有されるようになり、どの担当者でも迅速かつ的確な対応が可能になりました 。これにより、回答までのリードタイムが短縮されただけでなく、担当者による対応のバラつきがなくなり、応対品質の均一化にも繋がっています。
【効果3】: CTI連携により、高難易度案件へのフォローが迅速化
CRM導入に合わせ、既存のPBX(電話交換機)とCTI連携機能を使えるようになりました 。
導入前は、通話履歴を確認するために管理者権限でシステムにログインし、膨大なデータから探し出す必要がありました。導入後は、発行されたリンクをクリックするだけで即座に通話履歴を特定できるようになり、クレームなどの高難易度な問い合わせにも迅速にフォローできる体制が整いました。更にCRMにすでに登録されている電話番号であれば、着信時に顧客情報がポップアップされる仕組みも利用可能になりました。
【効果4】: 帳票作成が自動化され、作業工数が1/10に削減
CRMの帳票テンプレート機能を活用し、これまで手作業で行っていた帳票作成を自動化しました 。特に時間のかかっていた、物件の部屋番号・名前・電話番号といった情報の突合作業が一切不要となり、帳票作成にかかる工数は従来の約10分の1にまで削減されるという大きな成果を上げています 。
3. 選定のポイント:なぜ大規模改修ではなくCRMだったのか?決め手は「採算性」と「汎用性」
K社が数ある選択肢の中から「アイエックスクラウズ」を選んだ理由は、大きく2つあります。
ポイント1: 高い採算性(機能と価格のバランス)
K社では当初、オーダーメイドのスクラッチ開発と大規模なCRMパッケージの両方を検討していました 。しかし、スクラッチ開発は費用対効果が見合わず 、大規模パッケージは自社の規模に合わないと判断されました 。
その中で「iXClouZ」は、コールセンター業務に必要な基本機能、セルフカスタマイズ機能、使いやすいUIなどを安価に利用できる点が高く評価され、「機能と価格のバランスが良い」という理由で選定されました 。
ポイント2: 既存システムと連携できる汎用性の高さ
すでに導入していた他社製のPBXとスムーズに連携できるCTI連携機能や、自社の業務に合わせて項目をカスタマイズできる豊富さなど、その汎用性の高さも大きな決め手となりました 。最終的には「ほぼアイエックスクラウズ一択の状態だった」と、高い評価を得ています。
まとめ:CRMによるコールセンターのDXで、顧客満足度と業務効率の向上へ
本記事では、不動産関連企業であるK社がCRMを導入し、コールセンター業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させた事例をご紹介しました 。
「独自システムとExcel」による属人化したアナログ管理から脱却し、CRMによって情報共有と業務自動化を実現したことで、同社は「応対時間半減」や「帳票作成工数1/10」といった劇的な業務効率化を達成しました。
K社は今後、物件の不具合情報などもCRMで共有し、グループ会社との連携をさらに強化していく展望を描いています 。適切なCRMの導入は、コールセンターの業務効率化だけでなく、その先にある顧客満足度の向上にも繋がる重要な一手と言えるでしょう。