はじめに
近年、AI技術の進化により、コンタクトセンターの業務が大きく変わりつつあります。特に生成AIの登場は、問い合わせ対応の自動化やオペレーター支援の高度化を可能にし、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上にも貢献しています。
本記事では、コンタクトセンターが直面する課題を整理し、生成AIを活用して業務を効率化しながらCXを向上させる方法について解説します。さらに、各種AWSのサービスの利用例や具体的なユースケースを示し、導入に向けた成功のポイントを紹介します。
コンタクトセンターが直面する課題
コンタクトセンターは、顧客対応の高度化やコスト削減など、多くの課題に直面しています。特に、従来の方法では対応が難しくなっている領域において、AIの導入が求められています。
高まる顧客期待への対応
顧客はより迅速で正確な対応を求めており、単なるFAQでは満足しなくなっています。特に、パーソナライズされた対応が求められています。
オペレーターの負担増加
問い合わせの複雑化により、オペレーターの業務負担が増しています。特に、単純な問い合わせはAIで処理し、オペレーターは高度な対応に集中する必要があります。
コスト圧力
人件費の高騰やコールセンター運営費の増加により、効率化が必須となっています。
生成AIがコンタクトセンターを変革する方法
生成AIの活用により、コンタクトセンターの業務効率を向上させるだけでなく、より質の高い顧客対応が可能になります。ここでは、AWSサービスを利用した具体的な変革の方法を紹介します。
1. 問い合わせ対応の効率化
・ 自動応答ボットの高度化: Amazon LexとBedrockを活用し、より自然な会話が可能なチャットボットを構築。
・ FAQの自動生成: 過去の問い合わせ履歴を分析し、生成AIで最新のFAQを自動作成。
・ リアルタイム翻訳: Amazon Translateを活用し、多言語対応をスムーズに実現。
Amazon Translateを使用した翻訳(英語 → 日本語)の例
2. オペレーター支援
・ リアルタイムサポート: 生成AIが顧客との通話内容をテキスト化し、オペレーターに提示。
・ FAQの動的検索: 顧客との通話内容に応じた最適な回答をその場でFAQから検索。
・ 通話内容の自動要約: 通話後に生成AIが顧客との通話内容を要約。
受電~通話中のオペレータへのサポート イメージ図
※ 弊社製品 inspirX(CRM)、Connectrek(ソフトフォン)を利用する場合
3. コールログの自動分析
・ 通話内容の要約とエスカレーション提案: Contact Lensを活用して通話内容をテキスト化し、Bedrockを使用して要約を自動生成。
・ 顧客感情の追跡: Contact Lensを活用し、通話中の顧客の感情を分析してCX向上に活用。
Contact Lensにより通話内容のテキスト化と感情分析
生成AIがカスタマーエクスペリエンスを向上させる方法
生成AIは単なる業務の効率化にとどまらず、顧客の満足度を向上させる大きな可能性を秘めています。顧客との接点をよりパーソナライズし、積極的なコミュニケーションを実現する方法を解説します。
1. パーソナライズされた対応
顧客プロファイルに基づき、生成AIが個別に適した提案やサポートを提供。
2. 顧客とのエンゲージメントの強化
顧客の行動を予測し、適切なタイミングでプロアクティブな対応を行う。
3. フィードバックの迅速な分析と対応
顧客アンケートを生成AIが自動分析し、改善策を提案。
具体的なユースケース
業界ごとに異なる課題を抱える企業にとって、生成AIは様々なシナリオで活用できます。ここでは、代表的な業界の事例を紹介し、どのように生成AIとAWSが問題解決に寄与するのかを解説します。
ユースケース1:問い合わせ量の多いEC企業
課題: セール時期に問い合わせが急増。
解決策:
・ Amazon LexによるFAQ対応の自動化。
・ リアルタイム要約機能でオペレーターの負担を軽減。
詳細は以下のAWS公式ブログ記事をご参照ください。
Amazon Connect で簡単に実現する、生成 AI を活かしたより良いカスタマーエクスペリエンス | Amazon Web Services ブログ
ユースケース2:多言語対応が必要な旅行業界
課題: 世界中の顧客から問い合わせが発生。
解決策:
・ Amazon Translateと生成AIを活用し、多言語対応をリアルタイムで実施。
詳細は以下のAWS公式ブログ記事をご参照ください。
Amazon言語系AIサービスによるコンタクトセンターのライブ通話分析とエージェントアシスト | Amazon Web Services ブログ
ユースケース3:サブスクリプション型サービスの顧客維持
課題: 解約率の上昇。
解決策:
・ Comprehendで解約理由を分析し、生成AIが再契約を促す最適な提案文を自動生成。
詳細は以下のAWS公式ブログ記事をご参照ください。
Amazon言語系AIサービスによるコンタクトセンターの通話後分析 | Amazon Web Services ブログ
生成AI導入の成功ポイント
AI導入の成功には、適切なデータ管理や導入プロセスの設計が不可欠です。ここでは、AIの効果を最大限に引き出すための重要なポイントについて説明します。
1. データ品質の確保
生成AIの精度は入力データの品質に依存。正確なデータを活用することが重要。
2. 人間とAIの協調
AIは補助的な役割を果たし、オペレーターの判断を支援する形で設計することが重要。
3. スモールスタートでの検証
小規模なプロジェクトから開始し、効果を測定しながらスケールアップ。
最後に
生成AIはコンタクトセンターの運用効率化とCX向上を実現する強力なツールです。積極的に活用し、業務の変革を推進する第一歩を踏み出しましょう。また、各種AWSサービスとともに利用することで様々な応用が利くので、併せて導入することをお勧めします。
いかがでしたか?
これからもAmazon Connectを中心にコールセンター関連の情報を発信してまいります。