次世代コンタクトセンターデザイン論⑤ ~テクノロジー偏重への警鐘 -「人と人」のコミュニケーションこそプラスアルファの価値提供の鍵~

~この記事の要旨~

様々な業界のプロジェクト事例を交え、次世代コンタクトセンターについて考える本連載。最終回となる第5回は、企業が思い描いた次世代コンタクトセンター像を形にしていくための現場のマネジメントやオペレーションのあり方について考えます。ポイントは、テクノロジーを活用しながらも「人にしかできないコミュニケーション」を追求すること。ビッグデータなどの大規模な投資をせずとも、まずは足元で改善できることがあるかもしれません。

「次世代コンタクトセンターデザイン論」前回までの記事はこちら:

第1回~次世代コンタクトセンターに求められる役割とは?~

第2回~大手ホテルグループが描く、次世代コンタクトセンター像~

第3回~コンタクトセンターでお客様を"見える化"する。金融業界にみる次世代コンタクトセンター像~

第4回~鉄道会社発「コンタクトセンター情報ハブ化」への挑戦~

- 最終回となる今回は、企業が思い描いたコンタクトセンター像を形にしていくための、現場のマネジメントやオペレーションのあり方について伺いたいと思います。

冒頭(第1回)でも話しましたが、コンタクトセンターに「プラスアルファの顧客サービス」提供を期待する経営層と、日々の業務に手一杯のコンタクトセンターの現場にはギャップがあります。経営層が思い描いたコンタクトセンター像が「絵に描いた餅」にならぬよう、経営層からは明確なメッセージとして具体的にミッションを伝えつつ、現場でもそのミッションに対する理解と納得を醸成するといったコミュニケーションをとる。そして同時に実現可能なレベルで現場のオペレーションを最適化し、ギャップを埋めていくことが重要です。

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藤村 将宏 | MASAHIRO FUJIMURA

バーチャレクス・コンサルティング株式会社 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 ゼネラルマネジャー

また、「プラスアルファの顧客サービス」を実現するためには、オペレータの基礎的な応対スキルを高めていくことはもちろん、価値のある顧客データを蓄積していくことが不可欠です多くのコールセンターでは、オペレータが通話後に対応履歴を入力する「後処理」時間を設けています。大抵は、オペレータ全員が「通話3分、後処理3分」といった具合に、横並びで同じ業務を担っています。しかし、ただ機械的に対応履歴を残していくだけでは、本当に「使える」データは溜まっていきません。

実際のところ、対応履歴の入力に3分かけるべき通話と、そうではない通話があります。闇雲に全ての対応履歴を残していると、両者がごちゃまぜになってしまい、大量のデータの中に本当に価値ある情報が埋もれてしまいます。価値ある情報を効率良く抽出していくためには、「こういう場合はこういう情報を残しましょう」といったケースを明確にして、後処理時間を意味あるものにしていくことが重要です。また、通話内容だけでなく、オペレータのスキルにもバラツキがあります。たとえ同じ通話内容だったとしても、3分かけて対応履歴を残してもらうべき人と、そうでない人がいるのが現実です。全員に同じ業務を課すのではなく、担当者ごとに適切なミッションを与え、ある程度差別化していった方が良いケースもあると思います。

- テクノロジートレンドとしては、ビッグデータのように「量を集めろ」という流れもありますよね。

テクノロジーを否定するつもりは全くないですが、たとえば音声認識を用いてテキストマイニングを実施しても、無駄なデータばかり溜まってしまうことが多いのが現実です。いきなりビッグデータほどの大規模な投資をせずとも、まず足元を見て改善できることがあるのではないか、と私は思います。

優れた「センサー」を持っているオペレータは、適切なミッションを与えると、ポイントをついた情報をしっかり残してくれます。闇雲に集めたデータを眺めるよりも、ポイントをついた情報を絞って見ていった方が、的確な答えが早く見つかる場合が多いのです。

また、センスの良いオペレータが残した価値のある対応履歴は、そのままリアルタイムで編集し、社外向けのウェブFAQとして掲載することなども可能です。ウェブ担当者は一生懸命FAQを作っているものの、お客さまが本当に知りたいポイントを抑えられておらず、結果として上辺だけのコンテンツがたくさんできてしまう、といったケースはよく見られます。そうした中で、あるお客さまが実際に体験した電話対応というのは、他のお客さまにとってもポイントを抑えた情報になりやすい。こうした連携をスムーズに行って行くために、社内コミュニケーションのあり方も変えていく必要があります。

特に大企業の場合、コンタクトセンターとウェブ系の部門をそれぞれ別の役員が管轄していて、予算も別々に持っているというようなケースが多く、組織全体で同じ方向を向いて課題解決に取り組んでいくことが難しいこともあります。ですので、組織を横断したプロジェクトとしてある程度トップダウンで進めることが、近道だったりもします。

- お客さまとのコミュニケーションのみならず、企業内のコミュニケーションを最適化していくことも重要ということですね。

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コンタクトセンター設計の肝はコミュニケーションデザインだと、私は考えています。

どれだけテクノロジーが発展しても、人と人とのコミュニケーションはなくならないと思っています。最先端のテクノロジーを十分に活用しながら、本来人しかできないことにフォーカスし、どんな新しい価値を提供できるか。テクノロジーの"旨み"を活かし、量的や定型的な対応を効率的にこなしつつ、「人にしかできないコミュニケーション」をベースにしたプラスアルファのサービスを提供することで価値を高めていくこと。これこそが、これからのコンタクトセンター像そのものですし、企業は、それに資する投資をしていくべきだと思います。

20年ほど前のコンタクトセンターは、大量の席を設けて大量のオペレータを雇い、できるだけローコストで大量の電話をさばくという、大手テレマーケティング会社のビジネスモデルが主流でした。当時、ADSLや光回線といった大規模コールセンターを支える巨大な成長産業があったことも、その大きな要因です。しかし私は、ホテルグループの事例でもお話した通り、コンタクトセンターの規模は縮小していっても構わないと考えています。重要なのは企業にとって、そして顧客にとって価値を高めていくことです。

私はコンサルタントとして、クライアント企業をハンズオンで支援しています。何かのテーマがあって限られた領域を担当するのではなく、クライアント企業の一員となって「我々の会社はこれからこうしていくべきだと思う」と提言していく、そんな役割を担っています。そうした中で、本当に価値あるコンタクトセンターをつくっていくことに貢献できれば幸いです。

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全5回に渡って次世代型のコンタクトセンターのあるべき姿について論じてきましたが、いかがでしたでしょうか?

個々の事例についてより詳しく知りたい、弊社コンサルタントへのご相談などございましたらお気軽にお問合せ下さい。

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