次世代コンタクトセンターデザイン論③ ~コンタクトセンターでお客様を"見える化"する。金融業界にみる次世代コンタクトセンター像~

~この記事の要旨~

金融業界では、ひとりひとりの顧客についてライフプランや投資意欲といった「やわらかい」情報を入手し、ポテンシャルの高い顧客を見極めて効率的に営業活動を展開していくことが重要です。そのために、日々顧客の生の声に接しているコンタクトセンターは何ができるのでしょうか? 住宅総合サービス企業、大手銀行の事例から考えます。

前回までの記事はこちら:

次世代コンタクトセンターデザイン論①~次世代コンタクトセンターに求められる役割とは?~

次世代コンタクトセンターデザイン論②~大手ホテルグループが描く、次世代コンタクトセンター像~

- 前回は大手ホテルグループのプロジェクト事例について伺いましたが、他にはどのようなプロジェクトを担当していますか。

ひとつは、住宅総合サービス企業B社のプロジェクトです。前回お話したホテルグループのプロジェクトと同様に、こちらも中長期的な営業・マーケティング戦略の観点から次世代コンタクトセンター像を描き、その実現に向けた組織作りやオペレーションの改革に取り組んでいます。

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藤村 将宏 | MASAHIRO FUJIMURA

バーチャレクス・コンサルティング株式会社 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 ゼネラルマネジャー

B社はもともと、住宅ローンの販売を専門に行っている会社でした。しかし少子化が進み、今後家を買う人も減っていくだろうという見通しの上で、今後はローン販売にとどまらない「住宅総合サービス企業」への転換に舵を切りました。具体的には、住宅購入に付随する様々なイベント、たとえば引っ越しや家具の購入など、お客様が生活インフラを整えるためのフルサポートをサービスとして提供していきます。

こうした事業の多角化に伴い、コンタクトセンターに求められる役割も変わりました。

B社のコンタクトセンターはこれまで、たとえば

「繰り上げ返済したいのですが」とか

「私はローン借りられますか?」

といった、単純なお問い合わせに答える事務的な業務が大半を占めていました。これまではある意味「ローンを売って終わり」で、プラスアルファの顧客サービスを提供するまでには至っておらず、またその必要性もさほどありませんでした。しかし今後は、ひとりひとりのお客さまと長期的に末永く良い関係を築いていかなければなりません。そのためにコンタクトセンターは、日々お客さまとの会話の中から価値ある顧客情報を積み上げ、ひとりひとりのお客さまのことをより深く理解していくことに貢献していくことが期待されています。

長期的に多様なサービスを展開していく上では、ひとりひとりのお客さまに適切なタイミングで、適切なアプローチをしていくことが重要です。ローンの申し込みや店頭での対応、DMの送付など、様々な顧客接点でユーザーエクスペリエンスを積み上げながら、会社からのアプローチに対して興味関心を持ってもらえるような、オープンマインドな状態のお客さまを増やしていく。そのためにコンタクトセンターはどうあるべきか、というのを模索しています。

- ひとりひとりのお客さまのことをより深く理解できるような価値ある顧客情報とは、具体的にどのようなものでしょうか。

たとえば年齢や性別といった、お客さまの表層的な属性を分類するデモグラフィック情報はもちろんですが、それに加えて重要なのは、ひとりひとりのお客さまが「どのような嗜好を持っていて」「どの程度(潜在顧客として)ポテンシャルを有しているのか」といった、「やわらかい」情報です。

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たとえば「繰り上げ返済したい」と電話をかけてきたお客さまについて、会社が知りたいのは「そのお客さまはなぜ、繰り上げ返済できるようになったのか」という、お問い合わせの背景にあるパーソナルな情報です。それによって、このお客さまにはどの程度ポテンシャルがあるのか、といったことがわかり、今後の営業・マーケティング活動に活かせるからです。もっともお客さまは、わざわざ自分から「自分にどれくらいポテンシャルがあるか」といったことは教えてくれません。コンタクトセンターには、そういった情報を会話の中からうまく引き出していく役割が期待されているのです。

- コンタクトセンターで引き出した情報を、具体的にはどのように営業やマーケティング活動に活用できるのでしょうか。

お客さまの嗜好にあわせて提案内容をカスタマイズしたり、DM送付など会社からお客様にアプローチするタイミングを正しく判断するための材料にもなると思います。さらには、そもそも営業活動の対象とすべきお客さまと、そうではないお客さまの線引きにもつながります。

以前に担当した大手銀行のプロジェクトでは、コンタクトセンターで蓄積した情報をもとに潜在顧客のスクリーニングを実施し、ポテンシャルの高いお客さまに絞った効率的な営業活動を展開しました。

銀行はひとりひとりのお客さまについて、自社の口座に預け入れられている金額は把握できるものの、他行の口座状況までは把握できません。しかし、保険や投資信託など様々なサービスを販売していく上で知りたいのは、自社口座への預け入れ金額だけでなく「他に大規模な資金を持っているか」とか「投資意欲が強いか」といった、お客さまのポテンシャルを測るのに役立つような情報です。こうした情報をコンタクトセンターで引き出すため、会話の中での「聞き出しポイント」をいくつか定義しました。その結果、営業部隊は闇雲に営業をかけるのではなく、ポテンシャルのあるお客さまを見極めて効率良く営業できるようになりました。

多くの会社の顧客データベースは「いつ、何を買った」といった購買履歴や契約内容など、結果論的な情報が中心になっています。しかし、営業やマーケティングの観点から必要なのは、今後の購買の兆しやポテンシャルなど、未来に関するインサイトです。これからのコンタクトセンターでは、そうしたインサイトをいかに蓄積していくかが、より一層重要になっていくと考えています。

(第4回へ)

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