次世代コンタクトセンターデザイン論②~大手ホテルグループが描く、次世代コンタクトセンター像~

第2回 要旨:

首都圏を中心に複数のリゾートホテルを運営する、大手ホテルグループのA社。ウェブでの宿泊予約が主流になっていく中、A社のコンタクトセンターが目指している「電話でしかできない」顧客サービスとは? BtoCのサービス業において次世代コンタクトセンターはどうあるべきなのか、現在進行中のプロジェクト事例と共に考えます。

※ 第1回はこちら:「次世代コンタクトセンターデザイン論①~次世代コンタクトセンターに求められる役割とは~

- 藤村さんが現在携わっているプロジェクトで、プラスアルファの「かゆいところに手が届くような顧客サービス」提供に向けて取り組んでいる、具体的な事例を紹介してもらえますか。

現在携わっている大手ホテルグループA社のプロジェクトでは、コンタクトセンターを通じてひとりひとりのお客さまに、単なるお問い合わせ対応にとどまらない、より魅力的な顧客体験を提供することを目指しています。

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藤村 将宏 | MASAHIRO FUJIMURA

バーチャレクス・コンサルティング株式会社 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 ゼネラルマネジャー

A社では数年前、お客さまからの予約や問い合わせ対応を行うコンタクトセンターを、ある地方都市に移転しました。移転に伴い、それまで外部のテレマーケティング会社に委託していたセンターを内製化し、自社運営に切り替えました。その中で私は、中長期的な営業・マーケティング戦略の観点から、次世代コンタクトセンターの「あるべき姿」を描き、それを実現するためのマネジメントや現場のオペレーションを整理するお手伝いをしています。移転のお手伝いをしたり、新オフィスのレイアウトを一緒に考えたり、といったところまで携ることもあります。いわば「コンタクトセンターを中心とした非対面顧客接点のよろずサポート係」といったところでしょうか。

- 具体的には、どのような取り組みをしているのでしょうか。

まずはコンタクトセンターで交わされるお客さまとのコミュニケーションを、お客さまにとってより楽しく気持ち良いものにしていくことに取り組んでいます。

A社にはスタッフ全員が共有する企業哲学があり、それに基づくサービスがA社のブランドを支えています。しかし、こうした企業哲学のようなものは、たとえばホテルのスタッフなどお客様と対面で接する人たちにとっては体現しやすい言葉で表現されていても、コンタクトセンターでは実務レベルで体現することが難しかったりします。そのため、それを容易にするための「翻訳」や、オペレーションを最適化することによって、コンタクトセンターで働くオペレータが企業哲学を体現しやすいような環境を整えています。

ただお客さまから聞かれたことに答えるだけでなく、予約や問い合わせのために電話をかけた瞬間から「旅がはじまっている」と感じられるような顧客体験の提供を、ひとつの目標にしています。

- 今は電話をかけるのではなく、ウェブで予約をする人も多いと思います。その中でコンタクトセンターは、どのように位置づけられているのでしょうか。

ウェブ予約の増加に伴い、センターの体制は縮小していっても構わないと考えています。移転に際しても、拡張性のあるオフィスを選びませんでした。コンタクトセンター単体で考えるのではなく、あくまでも多様な顧客接点のひとつとして、どのような役割を果たしていくべきかを考えています。

具体的には、ウェブを見ただけでは判断できないお客さま、電話で相談して決めたいお客さまに満足してもらうことに、より特化していく方向に舵を切っています。

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ホテルを予約するお客さまは、ホテルに泊まるだけではありません。日中はどこで何をし、どのレストランで食事をし、といったことも考えながら、ホテルを探す人が多いはずです。コンタクトセンターではこうしたお客さまに対して、様々なサービスを組み合わせた体験をパッケージとして「これがあなたにとってベストシナリオではないでしょうか」と提案していくことで、組織の中で付加価値を発揮できると思います。

ウェブサイトを見ながら自分で選べる人たちにはウェブサイトに行ってもらい、コンタクトセンターはベストシナリオを提案することで満足するお客さまたちをサポートすることに集中する。コンタクトセンターが今後目指すべき方向性として、それがひとつの正しい姿なのではないかと考えています。

- 具体的には、どのような提案の仕方があるのでしょうか。

A社のコンタクトセンターでは、たとえば「○月○日にこの部屋空いてますか?」「申し訳ございません。満室です」「そうですか。失礼します」といったやり取りが、これまで大量に行われていました。しかし、もしオペレータがそのお客さまについて「なぜその部屋が良いのか?」「その部屋でどんな過ごし方をしているのか?」といった情報を把握できていれば、たとえば「その部屋は満室ですが、こちらの部屋はいかがでしょう」といった具合に、お客さまの嗜好に合わせて提案しやすくなります。あるいは、そうしたお客さまの嗜好をホテルのスタッフと共有することで、宿泊当日に良いサプライズなどができるかもしれません。コンタクトセンターで得られたお客さまのパーソナルな情報は、様々な顧客接点で活用することができるはずです。

- オペレータがお客さまについての情報を素早く把握できる仕組みが重要ですね。

そうですね。そのために、価値のある顧客データを蓄積し、それを上手く活用していくためのオペレーション設計にも取り組んでいます。

たとえば、オペレータが使うシステム画面は、電話をかけてきたお客さまについての情報をリアルタイムで掴めるように、直感的に理解できるユーザーインターフェースである必要があります。私はシステム画面のデザインにも携わったのですが、お客さまから電話を受けて画面に氏名が表示されるとき、その横にアイコンが6つほど表示されるエリアを設けました。それぞれのアイコンは、たとえば「ホテルに加えてレストランを予約した実績がある」とか「何かしらのパッケージを購入したことがある」あるいは「レコメンドすべきことが多い人」といったことを示しており、大まかに「どんなお客さまなのか」をすぐに把握できるようにしました。丁寧な対応履歴を文字で残しても、それを通話中に全て読むことは現実的に難しいからです。

もっとも、システムを良くしただけで良い顧客対応ができるわけではありません。「こういうお客さまに対しては、こういう対応をする」といったケースを明確に定義して、それにもとづいたオペレーションを実施し、検証し......といった具合に、PDCAのサイクルをしっかり回していくことが重要です。

(第3回へ)

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