この記事はAmazon Connectの機能を実際に設定して、バーチャレクス・コンサルティングのメンバーがコンタクトセンターでの利用を想定したコメントをします。
Amazon Connectについての詳細情報はAWS公式ドキュメントを参照してください。
Contact Lens の機能強化で画面の録画が可能に
Contact Lens for Amazon Connect は機械学習を利用してコンタクトの文字起こし、感情分析、評価などができる機能です。
6月16日のアップデートで顧客とのコンタクトに対応しているエージェントのPCの画面を録画する機能が追加されました。通話録音、通話内容の文字起こしに加えて対応中の画面を見ることで、SVがエージェントの対応を観察することがさらに容易になりました。
コンタクト詳細の録音を有効化している場合、録音再生エリアだった場所に録画が表示されます。「画面録画を表示」のトグルで録音の再生と切り替えることができます。
エージェントが操作しているすべての画面(3画面まで)が録画されるため、横長の録画になっています。見にくい場合は動画を右クリックして「ピクチャーインピクチャー」で開くと多少拡大して表示できます。
設定手順
Amazon Connect公式の管理者ガイドに沿って進めます。
1.クライアントPCにアプリをインストールする
Amazon Connect クライアントアプリケーション をダウンロードし、PCにインストールします
(インストールが一瞬で終わるうえ、「ダウンロードしますか?」「PC起動時にデフォルトで起動しますか?」といったよくあるメッセージが出ないので、インストールが完了しているかどうか分かりにくいです。ご注意ください)
C:\Program Files\Amazon\Amazon.Connect.Client.Serviceにある「Amazon.Connect.Client.Service.exe」をダブルクリックで起動します。
コマンドプロンプトでtasklistコマンドを実行して「Amazon.Connect.Client.Service」があることを確認しましょう。
2.ディレクトリの確認
ローカルにアプリが配置されるディレクトリ(①)とログが保存されるディレクトリ(②)が自動で作成されます。
①はアプリの起動時に既に確認済みですが、下記2箇所にアクセスできるか確認します。
① C:\Program Files\Amazon\Amazon.Connect.Client.Service
② C:\ProgramData\Amazon\Amazon.Connect.Client.Service\logs
3.画面録画の保存先S3バケットを設定
画面録画を保存するストレージを明示的に決めなくても画面録画自体は可能ですが、録画をダウンロードしたり、他のアプリと連動させるために自分が確認できるS3に動画を置きたいといった場合は保存先を指定します。
Amazon Connect>インスタンス>データストレージ の「ScreenRecording」で「編集」をクリックし、保存先のS3を新規作成または既存から選択します。
画面の指示に従うとS3バケットを新規作成することを推奨されますが、Amazon Connectの通話録音や文字起こしの設定を既に行っている場合は同じバケットを指定したほうがデータの整頓がしやすいと思います。
4.コンタクトフローの設定
画面録画を有効にするフローを開きます。
「記録と分析の動作を確認」ブロックをフローに配置し、「画面録画」をONにします。
画面録画はデータが大きいだけでなく、クライアントPCも高負荷がかかるため、すべてのコンタクトでONにしておくのは現実的ではありません。
業務運用上問題なければ、全体のコールの一部を録画するように「分散(%)」ブロックを「記録と分析の動作を設定」ブロックの前に配置し、分岐を設定しましょう。
録画があるコンタクトをAmazonConnectの「コンタクトの検索」で検索しやすくするため、コンタクト属性を追加しておくこともお勧めします。
5.エージェントに権限を割り当てる
録画を再生するエージェントのセキュリティプロファイル(権限設定)に権限を付与します。
セキュリティプロファイル>分析と最適化>画面録画 で許可する権限のチェックボックスをONにします。
以上で設定は完了です。テストコールをして動画が確認できることを確かめてください。
設定・テストした所感と留意点
画面録画はエージェントの操作を把握するためには十分な品質で、話している音声を聞きながら画面を見るとエージェントが顧客と話している時に何をしているのかよく把握することができました。複数の画面を録画できるところも、2画面以上でたくさんのアプリを使いながら運用することが多いコンタクトセンターの運用に向いています。
録画を後から確認できるのであれば、多忙なSVがエージェントの指導のために電話中ずっと張り付いていないといけないといった運用を回避できますし、エージェント自身もずっと隣で見られているプレッシャーからむしろミスをしてしまう、といったデメリットを避けることができます。
また、コンタクトデータの検索と組み合わせて「通話後の処理が長いメンバーを抽出して、その画面録画で何をしているのか見てみよう」といった、データと操作内容を組み合わせたコンタクトセンターの運営状況チェックも可能になりそうで、用途が色々と思い浮かぶ便利な機能です。
ただし、(簡単ですが)クライアントアプリがあるためセットアップの手間が発生します。PCの台数が多いコンタクトセンターでは設定担当者の負担が少し増えそうだと思ったのと、通話中のCPU使用率の上昇が気になる(手元のPCで30%程度上昇。Zoomなどのツールと同じ感覚でしょうか)ので、研修中のメンバーにだけ設定するなど、マシンスペックも考慮した運用を同時に検討する必要がありそうです。
バーチャレクスでは、Amazon Connectの導入支援や、AWS基盤活用のコールセンターシステムクラウドサービス「Connectrek」の開発・提供を行っています。
執筆者紹介
プロダクトエンジニアリング&サービス部