これからの時代に求められるコールセンター運営とは?- 前編 : 分散コールセンターの強み -

これからの時代に求められるコールセンター運営とは?- 前編 : 分散コールセンターの強み - 2020年の初頭に勃発した新型コロナウィルスの脅威は、コールセンター運営にも大きな影響を与えました。また、人手不足や働き方改革など、コロナ禍以前から存在していた課題への対応に追われる企業も少なくありません。こうした状況から、コールセンター運営には何らかの改革・変容が必要になると考えられます。そこで今回は、前後編の2回にわたり、これからの時代に求められるコールセンター運営について解説していきたいと思います。

1.コールセンター運営の背景

近年、コールセンター運営の難易度は高度化し、変化を余儀なくされる企業が増えています。その背景には、次のような理由があると考えられます。

問い合わせ内容の高度化

現在、コールセンターへの問い合わせは「ユーザーが自ら調べてもわからない、複雑で高度なもの」が増加しています。近年のユーザーは、何か問題が発生したとき、まずインターネットで独自に解決方法をリサーチします。つまり、コールセンターへは、ユーザーが自己解決できなかった高度な内容の問い合わせが集中するわけです。このことが、コールセンター業務の難易度を押し上げる要因のひとつになっています。

BCP対策

高度な内容の問い合わせは、重要度も高い傾向にあります。そのため、コールセンターは常に事業継続性(BCP=Business Continuity Plan)を強く意識した運営が求められるようになりました。いつ、いかなる状況でも稼働し続けるコールセンターを運営するためには、それなりの人材と設備が必要です。しかし、単純に人と設備を拡大するだけではコスト増の問題が生じてしまいます。コストをできるだけ抑えつつ事業継続性を高めるための対策が必須となるでしょう。

人材確保と働き方への配慮

高度な内容の問い合わせは、重要度も高い傾向にあります。そのため、コールセンターは常に事業継続性(BCP=Business Continuity Plan)を強く意識した運営が求められるようになりました。いつ、いかなる状況でも稼働し続けるコールセンターを運営するためには、それなりの人材と設備が必要です。しかし、単純に人と設備を拡大するだけではコスト増の問題が生じてしまいます。コストをできるだけ抑えつつ事業継続性を高めるための対策が必須となるでしょう。

従業員の衛生対策(密回避)

人材確保の問題をさらに深刻にしているのが、新型コロナウィルス対応としての「密回避」です。通勤やオフィスへの出社などが「密」に該当する可能性があれば、優先的に対応せざるを得ません。しかし、その結果として人材配置や補充が思うように進まず、サービス品質の維持やBCPに悪影響をおよぼす可能性が否定できません。

2. 時代の要請を受けてトレンド化する「分散コールセンター」

これら複数の課題を解決しつつ、コールセンターに期待される役割(カスタマーサクセス、顧客満足度の向上)を達成するソリューションとして「分散コールセンター」があります。分散コールセンターは徐々にトレンド化しており、これからのコールセンター運営のロールモデルになると考えられます。

分散コールセンターとは

分散コールセンターとは、「必要な人材がいる場所に、複数の小規模センターを構築・運営するモデル」です。従来型のコールセンターで主流であった「拠点ありきのコールセンター構築・運営」では、まず単一の拠点を定め、拠点の通勤圏内から人材を集めるといった手法が主流でした。しかし、こうした従来型のコールセンターモデルでは、新型コロナウィルスのような想定外の有事や、働き方の多様化に対応しきれないという弱点がありました。

これに対し、分散コールセンターは「人ありきで拠点を分散する」という考え方が基本です。


従来のコールセンター運営モデル



交通の利便性を持った都市部に一定の規模間を持つ拠点を構築し、"拠点"を中心に人を集めるモデル



従来型のコールセンター運営モデル

 従来型のコールセンター運営において 
 採用難や事業継続性の課題は深刻化 


分散コールセンターモデル



都市部近郊のベッドタウンなど、人が居住する場所に拠点を分散し、"人を中心に拠点を分散するモデル"



分散コールセンター運営モデル

 採用難や事業継続性の課題を解消する 
 新たなコンタクトセンター運営モデル 


分散コールセンターでは在宅勤務を中心としたテレワーク環境の整備によって、小規模拠点を多数構築し「常に稼働できる人材が存在する」状態の維持が容易です。また、出社や通勤の機会が格段に減ることから、密回避のための施作やコスト、事業継続性の低下も防ぐことができます。こうした分散コールセンターの特徴は、パンデミックや自然災害時のBCP対策、パートタイマーや時短勤務者などの活用とも親和性が高いと考えられます。

分散コールセンターのメリット

分散コールセンターのメリットとしては、以下が挙げられます。

地域の有能な人材にリーチ

拠点ありきの従来型コールセンターの場合、就業意欲・スキルともに十分な人材であっても、拠点への通勤が不可能であれば採用に至らないことが大半だと思います。分散コールセンターであれば、在宅勤務を基本とすることで通勤の制約が無くなるため、さまざまな地域の有能な人材に対して積極的なアプローチが可能です。

BCPの側面

分散コールセンターでは、数席~20席程度の小規模なコールセンターを複数構築します。この「小規模、複数」なコールセンターは、何らかの事情によるどこかの拠点が停止しても、他の拠点が稼働することで常に冗長性が保たれます。また、自然災害による交通機関の麻痺やパンデミックによる密回避の影響を受けにくいことも強みです。特に、発生頻度が高い交通機関の麻痺に対しては通勤が発生しない(もしくは通勤距離が短い)ことが稼働人員の維持・確保につながるため、優れた事業継続性を発揮します。

各拠点の一括管理が可能

複数拠点を運営する場合「拠点の管理工数が増え、マネジメントが煩雑にならないか」という懸念を持つ企業が多いようです。しかしこの点もテクノロジーの活用で十分にカバーすることができます。具体的には、クラウド型のCTICRMの活用によって、拠点間の連携強化しつつ、各拠点のオペレーターを一元的に管理することが可能です。

分散コールセンターのメリット
※画像をクリックすると拡大して見れます。

3.「分散コールセンター」運営の最適化に向けたノウハウとは

このように複数のメリットを持つ分散コールセンターですが、実際に構築・運営している企業は少数派と言える状況です。そのため、分散コールセンター構築・運営のノウハウを持つベンダーもそれほど多くありません。バーチャレクス・コンサルティングでは、分散コールセンターの有用性にいち早く注目し、すでに構築・運営の実績を保持しています。今回はその経験から、分散コールセンターのノウハウをピックアップしてお伝えします。

運営スタイルを柔軟に使い分ける

バーチャレクス・コンサルティングでは、分散コールセンターの運営スタイルには複数のバリエーションがあると考えています。例えば、以下のようなものです。

1. 一定のスキルを満たしたオペレーターのみを在宅勤務とする(分散、在宅平行型)

2. 平常時は分散型で運営し、緊急時に在宅型に移行する(分散、在宅切替型)

3. 新設時は分散型で運営し、安定化したら在宅型に移行する(在宅移行型)

4. 1~3のスタイルを使い分けるハイブリット型

分散コールセンター構築・運営時には、分散拠点勤務か在宅勤務かという2択から脱し、それぞれを状況に応じて切り替え、使い分けながら最適解を探していく視点が大切です。また、運営スタイルの切り替えや混合によって発生する課題に関しては、大半がテクノロジーの活用によって解決可能です。

マネジメント効率低下を防ぐ工夫

分散コールセンターでは、拠点の分散とリモート化が同時に起こるため、マネジメント効率が低下するリスクがあります。そのため、最上段に統括のマネジメントチームを設け、その下に各拠点のコントロールチームを設けるなど、マネジメント方法や体制に対する工夫が必要になるでしょう。

クラウド型ソリューションの導入

分散コールセンターは「コスト削減」をターゲットにしたモデルではありません。しかし、拠点を増やしつつもコスト抑制を意識した構成にすることは十分に可能です。特に各拠点の業務に必要なITインフラについては、オンプレミス型からクラウド型へ移行することで投資の抑制が可能です。クラウド型CTIやCRMはオンプレミス型よりもスケールイン・アウトの制約が小さく、リードタイムも短いことが特長です。したがって、業務内容や業務量に応じた投資が可能になり、コストの面からも「最適解」を維持しやすくなります。

また、前述のように分散コールセンターでは在宅勤務と拠点勤務の混合が発生することも少なくありません。このとき発生する労働環境の差や情報格差を埋めるためにも、クラウド型CTIやCRMの活用は必須と言えるでしょう。

伴走型サービスを提供するベンダーの選定

このように分散コールセンターへの移行を成立させるには、運営スタイルの決定やマネジメントの工夫、必要になるシステムの選定を行う必要があります。また、実際に分散コールセンターが稼働してからも、オペレーターの補充・育成といった課題が発生します。もし可能であれば、構築から運営までを含めた伴走型サポートの提供が可能なベンダーをパートナーとすべきでしょう。

ちなみにバーチャレクス・コンサルティングでは、分散コールセンター構築・運営に必要なノウハウをまとめ、分散コールセンター関連ソリューションとして提供しています。

分散コールセンターソリューション

分散コールセンターの構築支援、在宅勤務移行支援、運営アウトソーシングなど分散コールセンターの立上げから運営までを一気通貫でサポートするサービスです。
https://www.virtualex.co.jp/service/distributed-callcenter.html

AWS基盤を活用したコールセンタークラウドサービス「Connectrek(コネクトレック)」

AWS基盤を活用したクラウドCTIです。Amazon Connectをベースとし、バーチャレクス・コンサルティングが独自に開発したアプリケーションを組み合わせて最適なテレワーク環境を構築します。 https://connectrek.virtualex.co.jp/

イオンタウンのようなネイバーフッド型の商業施設と分散コールセンターの親和性は高いと推測されます。なぜなら、人材不足の解消やBCP対策のみならず、地方創生やSDGs推進など、複数の社会課題に対応するモデルに成り得るからです。

対 クライアント ・事業継続性の高いセンター運営モデルの提供
・安定的な人財供給による安定的かつ高品質なパフォーマンス提供
対 働く人 ・働き方ニーズにマッチした、新たな就業機会の創出
・居住地近隣に仕事がある事で、安心して住み続けられる(SDGs)
対 イオン
(ショッピングセンター)
・地域に根差した雇用機会創出貢献によるブランドイメージの向上
・勤務地での消費活動によるイオン内で消費の好循環サイクルの発生
対 コールセンター業界 ・新たな雇用モデルの横展開による業界全体の採用難の解消

4.まとめ

ここでは、これからのコールセンターとして「分散コールセンター」を紹介し、その概要やメリット、運営ノウハウについて解説してきました。ここ数年は、規模の大小に関わらず、従来型の一極集中型コールセンターから分散コールセンターへの移行が進んでいます。もし分散コールセンターにご興味があるようでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。次回の記事では「分散コールセンター構築時の課題と解決方法」について詳しく解説していきます。

後編記事はこちら(これからの時代に求められるコールセンター運営とは?- 後編 : 分散コールセンター構築のテクノロジー -)


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執筆者紹介

バーチャレクス・コンサルティング株式会社
常務執行役員
クライアントパートナリング部 部長
江本 研(えもと けん)
2001年よりカード会社や生保などの金融、メーカー、通販業界等の多数のコンタクトセンターシステム導入プロジェクトにコンサルティングやプロジェクトマネージャーとして従事。コンタクトセンター業務改革支援とシステム構築マネジメント経験を活かした、顧客の課題に対する的確な提案力が強み。

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