DX時代のIT導入成功の鉄則~ベンダー視点編

DX_vendor_tobira.jpg

前回の記事では、IT導入を成功させるための視点として「COEの配置をはじめとした入念な準備」「作り込みすぎない(≒開発しすぎない)」「使い続け、育てる」の3つを紹介しました。続く後編では、「ベンダー側の視点」からDX時代のIT導入成功の鉄則を解説していきたいと思います。

1. IT人材不足による「壁」

 

まずベンダー側の視点を語る前に、日本のIT人材の現状を整理しておきましょう。経済産業省の委託により、みずほ情報総研がまとめた「IT人材需給に関する調査」によれば、2030年までに最大で約79万人のITエンジニアが不足するとされています。ちなみに、IT需要の伸びによって3つのシナリオがあり、次のように予測されています。


・低位シナリオ(IT需要の伸びが1%の場合)...最大16.4万人不足

・中位シナリオ(IT需要の伸びが2~5%程度の場合)...最大44.9万人不足

・高位シナリオ(IT需要の伸びが3~9%程度の場合)...最大78.7万人不足


DX_vendor_graph.png

みずほ情報総研株式会社 経済産業省委託事業 「IT人材需給に関する調査」20193


2030年の断面で見ると、最もIT需要の伸びが小さい低位シナリオの場合でも、最大16万人強のIT人材が不足するとの予測です。さらに日本のIT業界は、ユーザー企業にIT人材が少ないという問題も抱えています。下の図は、日米のIT人材の数を比較したものです。


DX_vendor_itresource.png

米国のIT人材は、日本の約4倍です。内訳をみると、ベンダー側は約2倍の差にとどまるにもかかわらず、ユーザー側は10倍近い差が生じています。このように、日本は「ユーザー側のIT人材が圧倒的に不足」しているわけです。


こうしたユーザー側のIT人材不足が、セルフインプリメンテーション(自社のみでのIT導入)を阻害し、ベンダーに頼らざるを得ない状況を作り出しています。DX時代は「ビジネス変革」までを見据えたIT導入が必須です。本来、変革に際しては、IT知見だけでなく、業務知見も必要不可欠です。IT知見も業務知見もあるユーザーが、自社に不足している部分を外部パートナーの力を借りつつ変革を進める。このユーザー主導での変革が理想的であり、アメリカでは一定それができる遡上がある。一方、日本では、業務知見はあるものの、IT知見が大きく不足しがちなため、ITベンダーが「導入」「活用」「定着」までを一手に引き受け、支えて(時にリーディングも)いかなくてはならないわけです。


2. IT導入成功のためにITベンダーは何をすべきか


では、DX時代に求められるIT導入の真の成功のために、ITベンダーは何をすべきなのでしょうか。結論から述べると、今後のITベンダーには「カスタマーサクセス」を意識した行動が必須です。つまり、ユーザー企業と「導入目的」「ゴール」を共有し、その達成を意識した継続的な支援・伴走が求められるのです。


DX_vendor_requirement.png

〇ベンダーが意識すべき鉄則「カスタマーサクセス」


ここで、カスタマーサクセスの定義を簡単におさらいしておきましょう。書籍「カスタマーサクセス(通称:青本)」の著者の一人でもあるダン・スタインマン氏は、カスタマーサクセスを以下のように定義しています。


"カスタマーサクセスとは「プロダクトで出来ること」と「顧客が出来ること」のギャップを埋め続け、「顧客がしたいことを出来るようにする」仕事である。"


この定義をIT導入の成功という文脈に当てはめると「"製品・サービスができること"と"ユーザー側ができること"のすり合わせを行い、最適な結果へと落とし込むこと。そしてその落とし込まれた結果が期待した成果として現れるよう伴走し続けること」がカスタマーサクセスと言えそうです。カスタマーサクセスの実現においては、顧客の成功を第一に考え、ビジネスを設計し、行動することが第一です。また、リアクティブ(受身)とプロアクティブ(能動)の融合を目指し、「顧客の成功こそが自社ビジネスの成長の要」というコンセプトを念頭においた姿勢が求められます。


では、もう少し具体的にIT導入におけるカスタマーサクセスを紹介します。


IT導入におけるカスタマーサクセスとは


カスタマーサクセスの実践を通し、顧客に対して提供できる価値を最大化することが重要です。ここで言う価値とは、次の3点です。


・コアとなる製品/サービス

・付帯サポート/サービス

・上記を提供する人材(ベンダーの従業員)


この3つを最大化するためには、それぞれを常にアップデートし続けていく必要があります。3つが常にアップデートされ、顧客が期待する体験・価値の最大化に寄与することが、カスタマーサクセスの要諦なのです。こうした過程は、(大きな/思想としての)カスタマーサクセスを構成する「プロダクトサクセス」「(小さな/業務としての)カスタマーサクセス*」「エンプロイーサクセス」と言い換えることもできます。


なお、代理店販売など、取扱商材のカスタマーサクセス業務をパートナー企業が推進するビジネスモデルがあります。その場合は、商材を提供するメーカー自身がカスタマーを直接支援するのではなく、カスタマーサクセス業務を推進するパートナーが自走できるよう後方支援することが必要になります。これをパートナーサクセスと呼びます。


DX_vendor_success.png


ダン・スタインマン氏の定義にもあるように、「カスタマーサクセス=顧客が期待する価値水準と現状提供できる価値水準のギャップを埋めること」です。
IT
導入における具体的な活動としてはそれぞれ、

・メーカーであれば製品・サービス自体を、ベンダーであれば最適なソリューションを提案することで解決策としての質を高めること

IT導入のそもそものゴールを達成するために、QCDを充足し初期導入を完遂すること、そして導入したITベースでの新業務の定着化を支援・伴走すること

・その導入や定着化を支援するメンバーのスキルをアップすること、その仕組みを確立すること

と言い換えることができます。この3つを意識することで、顧客が期待する価値水準へと徐々に近づき、価値水準の差を縮めていくことができるでしょう。


3.「あたりまえ」を「当然のように」提供することが肝

IT導入を真の成功に導くためには、上述したとおり、ベンダー側がカスタマーサクセスを意識した提案・伴走を続けていく必要があるでしょう。これ自体には何ら目新しさはありません。至極当たり前といえば当たり前のことです。しかし、この当たり前を貫き通す難しさも同時に理解いただけるのではないでしょうか。


そもそも発注者と受注者は、一種の利益相反の関係にあります。発注者側は少しでも安く高性能な仕組みを手に入れたい一方で、受注者側はより大きな売上と利益を効率よく確保したいのが本音ではないでしょうか。しかし、こうした利益相反をそのままにしておくと、ともに真のゴールを目指す伴走者として付き合うことは難しくなります。


真のゴールについて、侃々諤々の意見を交わし、ユーザーとベンダーで双方に合意する。そのゴール実現に向け、ユーザーと真摯に向き合い、苦楽を共にすること。つまり、「単なる受発注の関係」を超えて、ゴール実現に向けた全行程に寄り添う、いわば「伴走者(パートナー)」になろうとする姿勢こそが、現代のITベンダーに求められることなのです。


DX_vendor_process.png

4. まとめ

本記事では、DX時代のIT導入成功の鉄則をベンダー視点から解説してきました。ユーザー側のIT人材が著しく不足している日本では、ベンダーとユーザーの協調が欠かせません。
ユーザー側は業務要件を提示しつつも「準備し、使い、育てる」ことを意識し、ベンダー側はITの知見を提供しつつ「カスタマーサクセス」を意識する。言い換えれば、それぞれが材料を持ち寄り、同一のゴールを目指して共創を続ける。こうした両社の協調関係こそが、DX時代のIT導入を真の成功(=ビジネス変革)へと導くのです。


DX_vendor_closing.png

バーチャレクス・コンサルティングでは、コンサルティング・開発・構築・運用の全フェーズにおいて、カスタマーサクセスを意識した伴走型サービスを提供しております。お困りごとや課題等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。


お問い合わせはこちらをから

執筆者紹介

執行役員
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長
森田 智史(もりた さとし)
2013年に中途で入社。前職より、CRM関連に限らず、新規事業策定・戦略立案案件や、システム構築案件など、 幅広いテーマのコンサルティング案件に従事。 2017年から現職。現在は、コンサルティング案件全般を所管すると共に、 自社デジタルマーケティング領域の事業拡大の他、RPAソリューション等新規事業開発にも従事。2018年6月に出版した『カスタマーサクセス ー サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の訳者であり、カスタマーサクセスに関するコンサルティングや講演なども行っている。

RELATED POSTS