システム統合を実現するCRM~業務システム再構築の成功事例

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業種・業態を問わず、顧客接点の強化を経営課題に設定する企業が増えています。この流れを受け、年々需要が拡大しているソリューションが「CRM」です。


IT専門調査会社 IDC Japanの調査によれば、CRM市場はやや落ち着きを取り戻したものの、2022年まで年平均6.2%で成長を続けると予測されています。(※1)


CRMは「顧客情報を管理するアプリケーション」というだけではなく、顧客接点の強化とビジネスの成長をつなぐ「ハブ」として使われているのです。顧客管理という「守りのIT」から、顧客接点の強化・ビジネスの成長という「攻めのIT」への変遷と言えるかもしれません。


そこで今回は、CRMを中心に既存業務システムを再構築し、ビジネスの成長に繋げた事例を紹介します。


生活トラブル解決サービスを展開する企業へのCRM導入事例


今回紹介するのは、生活トラブル解決サービスを提供する企業に対する、弊社CRMソフトウェアinspirX(以下、インスピーリ)」(※2)の導入事例です。

生活トラブル解決の総合サービスを提供する同企業では、コールセンター業務の効率化に加え、事業規模拡大や新規事業の迅速な立ち上げを支えるシステムを求めていました。ちなみにCRM導入前は、コールセンター受付の段階で事業領域ごとに異なるUI・データベースへの入力作業が発生していた、という状況です。

CRM導入の背景

同企業では、水回りのトラブルや鍵交換を対象とした個人向けサービス、不動産分譲・賃貸・管理などの法人向けサービスを展開。また、グループ会社では、賃貸住宅入居者向け家財保険や家電・住宅設備機器の保証事業なども提供。これらサービスに対する問い合わせは、WEBやタウンページなどから行われる。CRM導入以前のコールセンター受付業務では、サービスごとの特性にあわせて、複数の受付システムを利用することを余儀なくされていた。受付業務領域は、大きく分けると以下の3領域である。


①一般個人顧客からの水漏れ、鍵の紛失など生活トラブルへの問い合わせ対応、駆けつけのサービスを提供

②生活トラブルサポートをパッケージ化した会員向けサービスを提供

③不動産企業等の管理業務の一部として受付業務を受託


①~③はいずれも、グループ内で事業領域がわかれていた。また、「①は顧客情報や顧客とのコンタクト履歴」「②や③は会員情報やクライアント企業の物件情報」といった具合に、重視されるデータにも違いがあった。

このように、サービス・業務ごとに必要な情報が異なるため、これらを踏まえつつ、受付システムを刷新する必要があった。また、システムの刷新に伴い、各関連部門や現場の作業スタッフ、クライアントとの情報共有、手動での作業の自動化を含む業務効率化の促進、そして今後の事業拡大の際にも柔軟に対応できる拡張性が期待されていた。


CRM導入の目的

・業務ごとに分かれていた受付システムの統合

・情報共有と手作業の自動化による業務効率向上

・今後の事業の拡大に対応可能な拡張性の高いシステムの構築


業務的な課題

・事業Aでは顧客とのコンタクト履歴、事業Bでは顧客情報など、業務ごとに情報の質が異なることから受付とデータ入力の手間がかかっていた。

・コールセンタースタッフとエンドユーザー、提携法人、現場で作業を行うサービススタッフのマッチングをエクセル作成の一覧表で行っており、手作業が発生していた。

・現場作業スタッフからの報告業務において、手書きベースのFax送信やメール添付での手動送信が発生するなど、後処理業務が効率的ではなかった。


CRMを中心としたシステム再構築のプロセス

・上記課題を解決するため、バーチャレクスのCRMパッケージ「インスピーリ」を導入。

・まず、複数存在していた受付システムを統合し、入力画面を共通化。その上でセルフカスタマイズ機能を使い、インスピーリと連携させた。

・受付システムの刷新に合わせ、現場情報を登録するモバイルシステム、作業依頼内容をネット上から確認できるWEBシステムを構築した。


CRMを中心としたコールセンター総合受付システムイメージ

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導入後の成果

・作業依頼と登録業者のマッチング業務効率化

全国から寄せられる現場作業対応依頼に対し、登録業者・作業スタッフをシステム上でマッチングできるようになった。

・コールセンター架電件数削減

上記システム上でマッチングした登録業者に対し、トラブル内容・作業日時・場所などの情報を一斉配信することで、コールセンターからの架電件数が30%以上削減 された。

・手作業の大幅な削減と報告のリアルタイム化

外部委託業者の現場スタッフはこれまでFax送信していた作業報告書をモバイルシステムで入力するようになった。このため、コールセンター内でのFax用紙の使用量を80%減少させることができた。(毎月5000~6000枚から1000枚程度にまで減少)

また、外部委託業者からコールセンターへのコールセンターのスタッフがクライアントへの報告に使用していた、作業写真付きメールの送信数も75%削減できた。(毎月7000~8000件から2000件弱にまで減少、これは外部委託業者の作業工数も削減されたことを表している。)

外部委託業者がモバイルシステムに入力した作業完了の報告書は、全てCRM(インスピーリ)に集約されるため 、クライアントがシステム上から直接報告書を閲覧できるようになり、作業完了報告・確認のリアルタイム性が向上した。

同企業では、コールセンターでの受付業務だけではなく、クライアント(企業及び個人)、外部委託業者、自社間で発生するコミュニケーションの効率性をも追求したといえます。

ここで注目すべきは、自社だけではなく外部委託業者の利便性や作業効率も考慮した施策だったという点です。CRMを活用したシステム間連携・統合は、ややもすれば「対顧客」「対消費者」の面だけが強調されがちです。一方、本事例ではパートナーとの連携強化にも注力し、業務効率の向上を達成しています。

継続した取り組みでさらなる充実を目指す

このようにCRM導入で一定の成果を上げている同企業ですが、今後は次のような課題にも対応したいと述べています。

・ビジネス環境の変化に対応するため、新たなITトレンドを吸収したい

・手配状況や各業者の対応品質の評価を数値化し、Win-Winに繋げる仕組みをどう作っていくか

・会員系アプリなどの新しい仕組みにどう対応していくか

・これら新しい仕組みを、今後CRMといかに連携させるか

さらに、バーチャレクスにシステム構築を依頼した理由について、同企業では以下2つを挙げています。

・実現性や費用感が適切だったこと

・長期間にわたるシステム再構築プロジェクトにおいて、ビジネスを成長させるため「一緒にやれそう」だと思えた


CRMを中心とした大規模なシステム改修・連携・統合などのプロジェクトでは、テクノロジーの優劣よりもベンダーの姿勢が問われることが珍しくありません。ソリューションやパッケージの導入がゴールとせず、いかに自社ビジネスに寄り添い、伴走してくれるベンダーを選ぶかが重要だと言えます。

まとめ

今回は、総合生活サービスを提供する企業における、CRM導入・システム再構築の成功事例を紹介してきました。CRMは「既存顧客との関係強化」「サービス品質の向上」「手作業の効率化」「コールセンターの業務効率向上」といった効果が期待できます。本事例ではこれらに加え、「パートナー企業との連携強化」でもその威力を発揮することが確認できました。

毎年のように新たなITトレンドが登場する現在のビジネス環境では、拡張性を担保しつつ、いかに既存システムを刷新するかという視点が欠かせません。CRMの導入においても、これは変わらないと言えるでしょう。

また、CRMを中心としたシステム構築・統合プロジェクトは、流動的かつ長期化する可能性があります。したがって、自社事業に対する理解と伴走を提供できるベンダー選びも重要になってきます。

当社では、当社では顧客ビジネスの成長をサポートするため、コンサルティング、システム構築、コールセンターのアウトソーシングサービス提供まで行っております。


ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

※1
国内CRM市場、2022年までの年間平均成長率は6.2%で市場規模は1,430億3,600万円へ――IDC予測

※2
inspirX(インスピーリ)
バーチャレクス・コンサルティングの長年にわたるコールセンター運営の経験から生まれた、マルチチャネル対応の顧客対応業務を支援するCRMソフトウェアです。

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執筆者紹介

オペレーションコンサルティング部
栗原 侑矢(くりはら ゆうや)
新卒で入社以降、大手鉄道会社・大手医療関連サービス提供会社・大手家電メーカー会社をクライアントに、「全社的顧客満足度向上に向けた計画策定および施策推進」「コンタクトセンター再構築に向けた現状分析/課題把握/ロードマップ具体化」「コンタクトセンターIT化を目指す上でのソリューション導入支援」等をテーマとしたコンサルティングプロジェクトに従事。現在は西日本エリアの事業強化に伴い、関東・関西両地区でのクライアント支援に携わっている。

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