RPA2.0の世界観の実現に向けて -中編-

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RPA2.0の世界観の実現に向けて -前編-

「RPA2.0の世界観の実現に向けて -前編-」では、現代の企業におけるIT・デジタルの適用・活用が重要な意味を持つことを解説しました。特に、DX(=デジタルトランスフォーメーション【DX】)による変革の影響を受け、ビジネス環境が変化していることには要注目です。DX時代におけるRPA/AIは、企業の将来を左右しうる重要なテクノロジーです。これまでのRPAはルールベースによる単純作業や、定型作業・業務の自動化を実現する「RPA1.0」の段階でしたが、今そして今後向かうであろう、「一部非定型作業・業務の自動実行(RPA2.0)」では、RPAと各種周辺テクノロジーとの連携による「掛け算(シナジー)」が重要になることは、前編でお伝えしたとおりです。

そこで本記事では、RPA2.0実現の鍵になるツールや、具体的に何を自動化できるのかなどを紹介していきます。

RPA2.0実現への架け橋「RPA とOCR(AI-OCR)の連携」

RPA2.0の世界観を実現するための第一歩は、「RPA とOCR(AI-OCR)の連携による業務の自動化」といえるでしょう。そこで、RPAとOCR(AI-OCR)の連携が何をもたらすか、具体的に説明します。 RPAが人間の「手足(作業・処理)」を司ると仮定すると、OCR(AI-OCR)は「目(視認)」に相当します。



RPAは「手足(作業・処理)」、OCRは「目(視認)」



そして、RPAとOCR(AI-OCR)との組み合わせることで、「帳票ファイルの仕分けと読み取り、システム登録までを行う業務をシームレスに自動化する」ということが考えられます。 従来であれば、メール添付やWeb経由で受領した「データベースの帳票」、FAXや郵送書類など「紙ベースの帳票」のいずれであっても、個別に対応が必要でした。データベースの帳票については「システムに登録可能な形式(CSVやテキスト)への変換」という作業が発生します。また、紙ベースの帳票については、上記CSVやテキスト変換の前に、まず「スキャナを使った画像データ化」を行う必要があります。これらはいずれも、「人の手を介したアナログな作業」でした。 これらアナログな作業を一貫して自動化できるのが、「RPAとOCR(AI-OCR)連携」の強みといえます。具体的には、まずOCR(AI-OCR)が帳票のフォーマット、発行企業、記載されている商品といった帳票ごとの違いを自動認識し、仕分けを行います。次に、OCR(AI-OCR)の持つ優秀な画像認識機能によって、画像データから文字情報を抽出します。抽出した文字情報は、RPAによってシステムに自動登録される、という流れです。ちなみに、RPA側では、登録されるデータに対する「検算(数値の検証)」や「人間の目視確認を促すアラート通知」といった役割も担います。 この流れを見てわかるとおり、OCR(AI-OCR)単独では業務自動化を達成できません。これはRPA単独の場合でも同様です。二者がシームレスに連携することで、「認識する」「区別する」「抽出する」「登録する」という一連の作業が自動化され、シナジーを生み出しています。

なお、バーチャレクス・コンサルティングでも、OCRとして以下3製品を取り扱っています。

  • AI inside(AIインサイド)社の「DX Suite」(ディーエックススイート)
  • ABBYY(アビー)社の「FlexiCapture」(フレキシィキャプチャ)
  • Panasonic(パナソニック)社の「帳票OCR」

取り扱いOCR製品の比較


取り扱いOCR製品の比較


この図は、各OCR製品を推奨シーン別に分類したものです。本稿の執筆時点では、全てのシーンにおいて完璧な動作をするOCR製品は存在していません。そのため、クライアントが想定する用途や状況に応じて、以下のように選定・提案を行っています。

  • ・日本語による手書きの定型帳票が中心...「DX Suite」
  • ・デジタル文字による準/非定型帳票を複数パターン使用...「FlexiCapture」
  • ・とにかく手軽に素早くOCRを導入したい...「帳票OCR」

3製品のうち帳票OCRを除く2製品は、AIを支える技術のひとつ「ディープラーニング(深層学習)」を取り入れている点が特長です。ただし、いずれの製品も読み取り精度100%を保証するものではありません。手書き帳票への対応精度が最も高い「DX Suite」でも、チェックボックス・郵便番号・氏名の読み取り制度は99%、電話番号97%、金額95%という結果になっています。

OCRの読み取り精度は、AIとの融合で著しく向上しました。しかし、現時点では「ヒト」が読み取れない文字を全て判読するのは難しいのです。つまり、当面の間は「ヒト」の認識能力とOCR(AI-OCR)の機能を組み合わせながら読み取りミスを無くす、という方法が現実的だといえるでしょう。

こういった制約がある一方で、RPAとOCR(AI-OCR)の連携が、着実に効果を発揮している実例も出てきています。
今回はその一例として、当社のクライアントである某医療機器メーカー様への導入事例をご紹介します。

某医療機器メーカーでは、RPAとAI-OCRの導入により、業務自動化を達成しました。その結果、以下のような効果が確認されています。

導入前「26名体制で人件費は約760万円/月」⇒導入後「15名体制で人件費は約570万円/月」

このように、11名の人員と月間190万円の人件費削減に成功しています。RPA×AI-OCRの運用費として60万円/月が必要になったものの、差し引き約1500万円/年の人件費削減が可能になりました。精度100%のAI-OCRでなくとも、一定の導入効果を見込めることが証明されたわけです。ちなみに、以下は、RPA×AI-OCRで自動化できる業務例を図にしたものです。

RPA×OCR(AI-OCR)で実現可能な業務例

RPA×OCR(AI-OCR)で実現可能な業務例

緑枠で囲まれていない部分(FAX受け取り⇒スキャン)は、いわゆるアナログな作業です。紙ベースでの帳票運用における「ボトルネック部分」ともいえます。こういったボトルネック部分の運用を変えることで、さらなる効果が見込めるでしょう。

ただし、言わずもがなですが、RPAやAI-OCRは打ち手の1つでしかありません。いわば目的を達成するための「手段」です。そのため、弊社ご支援の際は、クライアントの状況によっては、BPRの展開やEDIの適用、電子署名(DocuSign等)などを併用しつつ、そもそも紙帳票をなくすなど、ツールの導入が目的化しないよう心がけています。

RPA2.0実現へのさらなる一歩「RPA とChatbot(チャットボット)の連携」

RPA2.0の実現において、RPAとOCR(AI-OCR)の連携が有効なことは既に述べたとおりです。ここでは、さらなる一歩として「RPA ×Chatbot(チャットボット)の連携」をご紹介します。Chatbotは、RPAを「手足」として考えた場合、「口・耳(対話・発信)」に近いものと考えて良いでしょう。

RPAは「手足(作業・処理)」、OCRは「目(視認)」例



RPAにChatbotを組み合わせることで、「ユーザーが手を動かすことなくシステムを操作できる」ようになります。具体的には、Chatbotを介し、ユーザーからのリクエストを受けてRPAがシステムを自動操作し、情報の照会や手続き処理を行えるようになります。また、Chatbotを介した質問・確認に対する回答、処理結果などをユーザーに返すことも可能です。

では、RPA × Chatbotがもたらす業務自動化の例を考えてみましょう。RPA × Chatbotによる業務自動化としては、以下のようなものが考えられます。

○ 社員からの有給に関する問い合わせ受付と自動回答

・社員から「有給休暇の残日数」を訪ねられたChatbotが、RPAに勤怠システムのデータ参照を促します。次いでRPAが勤怠システムを参照して当人の有給休暇残日数を確認し、Chatbotに返します。Chatbotは、 RPAから返された結果(勤怠システム上の有給休暇残日数)を社員に伝えます。

・同じような仕組みで「有給休暇が発生する仕組みは?」という問いに対する答えをFAQから探し、社員に回答します。(回答例:有休休暇は、毎年1月に勤続年数に応じて規定日数分が付与されます。)

○ 残業申請受付の自動処理

・部下からの残業申請に対し、RPA × Chabotが自動照会を行います。もし既定の残業時間をオーバーしている場合は、Chabotが上司に対し「この社員は、既に今月は働き過ぎです」といった回答を上司に返します。さらに、上司は部下に対し、チャットベースで「残業申請は却下」という返答をしていくわけです。

○ 社内外からの情報照会の回答自動化

金融機関における利用者からの残高照会や、携帯電話キャリアでの携帯電話料金の請求額照会に対して、自動応答が可能になると考えられます。また、利用者がChatbotに対して知りたいことを質問すれば、RPAとの連携で各種システムを参照し、必要なデータを提示することも可能です。このとき、利用者の口座番号や氏名、生年月日などを使い、本人認証も完了させます。また、なんらかの問題が発生したときに備え、「オペレーターに連絡」というフローを設けることも可能です。

Chatbotを組み込んだワークフロー

○ 社外からの請求受付フローの自動化

保険会社の顧客や代理店からの「保険金を請求したい」という要求をChatbotに投げかけ、問題がなければシステムへと自動入力します。また、利用者に確認が必要な場合には、Chatbotがオペレーターへとエスカレーションを行い、オペレーターが対応するといったフローも可能になるでしょう。

以下は、弊社のクライアントである某人材派遣企業におけるPoC事例のデモ動画です。

RPA X Chatbot デモ動画



登録者はChatbotと会話し、OCRで読み取らせるための画像(免許証等の身分証明書)をスマートフォン等で撮影し、人材派遣企業側へアップロードします。アップロードされた画像は、まずAI-OCRによって解析・読み取りが行われます。読み取った結果をもとに本人へ確認を行い、問題が無ければ登録処理へと進みます。さらに、ChatbotがRPAを呼びだし、CRMに対して情報登録が行われ、完了したら顧客IDを生成します。最後に顧客IDをChatbot経由で登録者に通知する、という流れです。AI-OCRとRPA、Chatbotの連携が進めば、こういった流れ全てを自動化できるわけです。

(後編に続く)

執筆者紹介

常務執行役員
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長
森田 智史(もりた さとし)
2013年に中途で入社。前職より、CRM関連に限らず、新規事業策定・戦略立案案件や、システム構築案件など、 幅広いテーマのコンサルティング案件に従事。 2017年から現職。現在は、コンサルティング案件全般を所管すると共に、 自社デジタルマーケティング領域の事業拡大の他、RPAソリューション等新規事業開発にも従事。2018年6月に出版した『カスタマーサクセス ー サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の訳者であり、カスタマーサクセスに関するコンサルティングや講演なども行っている。

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