7/31開催「理論と実践から学ぶカスタマーサクセスの基本」イベントレポート

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『カスタマーサクセスーサブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の発売から約2ヶ月が経ち、国内でも徐々に「カスタマーサクセス」への注目度が高まってきました。

去る7月31日に、カスタマーサクセスを積極的に実践されているSansan株式会社様、カスタマーサクセスの書籍(通称:青本)を出版いただいた英治出版株式会社様との共催で、「理論と実践から学ぶカスタマーサクセスの基本〜サブスクリプション時代に求められるカスタマー対応とは?〜」と題したイベントを開催しました。その時の様子をレポートしたいと思います。

告知開始直後から続々と参加申し込みを頂き、当日はおよそ100名の方にご参加いただきました。 

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今回のイベントはカスタマーサクセスについてまだよく知らない方、これから取り組んでいきたいと思っている方を対象としたもので、カスタマーサクセスの理論と実践について、パネルディスカッション形式で行われました。

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登壇者(右から)
小川 泰正様 / Sansan株式会社 Sansan事業部 カスタマーサクセス部 部長
高野 達成様 / 英治出版株式会社 取締役 編集長
辻 大志 / バーチャレクス・コンサルティング株式会社 執行役員

テーマ
1. カスタマーサクセスの概要と必要性について
2. 「10の原則」のうち、これだけは押さえておきたい原則
3. これから取り組む企業にとってのカスタマーサクセスとは

1. カスタマーサクセスの概要と必要性について

辻: 世の中の流れとして、モノの「所有」から「利用」への変化をきっと皆さんも感じているかと思いますが、利 用の際の「乗り換えコスト」が昔と比べて安くなっています。パワーバランスがユーザーにシフトし、売り逃げでは許されない時代に突入した今、企業にとってお客さんの乗り換えを防ぐために求められるようになったのが、サービスによってお客さんの成功に貢献できるということです。何でこのサービスを使ってるの?と聞かれたときに、「それは我々の成功に貢献して くれているからだよ」とお客さんに言ってもらえることがカスタマーサクセスの神髄だと思います。

高野:カスタマーサクセスの源流は1990年代の「One to Oneマーケティング」や「CRM」ですが、2000年代に登場した「アドボカシー・マーケティング」が興味深いです。「顧客を徹底的に支援し味方に付け、信頼関係から長期的利益を得る」というこの概念により、顧客像の大きなパラダイムシフトが起きました。さらに近年ではデータ活用が進んだことでより精緻かつ高度に顧客と向き合うことが可能となり、それがカスタマーサクセスという言葉として洗練され体系化されてきたのではないかと思います。

辻:カスタマーサクセスの支援ツールを提供しているアメリカのGainsight主催のイベント「Pulse 2018」に参加したときの衝撃はすごかったですね。参加者同士で「お客さんのサクセスの指標はどうやって定めているの?」といった、より具体的・実践的な議論が交わされていて、日本との大きな差を感じました。

小川:熱狂がすごかったですよね。自分たちがマーケットを作り上げていくんだという思いを感じました。IT組織に次ぐ新たな組織体として、これまで具現化されなかったものが誕生するという意味でとても価値あるマーケットだと思います。Sansanとしてカスタマーサクセスという言葉を使い始めたのは2012年からですが、そもそもは2005年ごろにSFDCが具体的に取り組み出したところが始まりです。マーケティング戦略の中で本を出版し、Pulseの開催で市場やコミュニティを作り上げてきたのがGainsightという、カスタマーサクセスソリューションを提供している会社です。

2. 「10の原則」のうち、これだけは押さえておきたい原則

辻:全て大事ですが、あえて言うなら原則1の「正しい顧客に販売しよう」です。これは、自社企業のサービスが全てのお客さんにとって有益とは限らないので、提供するサービスで本当に成功してくれるお客さんを選ぶことが大事です。もし間違ったお客さんを選んでしまうと、すぐに解約されて積上げがなくなってしまう上に、「あのサービス使いにくいんだよね」といった悪い評判が広まってしまう恐れがあります。もう一つ、原則7の「タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう」も大事です。これはお客さんが最初に価値を感じるまでの時間をなるべく短くしましょうということで、どんなに小さくてもいいから成功という価値ある体験をまずは感じてもらうことが大切だということです。

小川:私も全て大事だと思いますが、2つ挙げるとすれば、1つは原則2の「顧客とベンダーは何もしなければ離れる」です。サービスを売った後、お客様を取り巻く状況は変わるし、もちろんベンダーを取り巻く状況も変わります。そのときに何のアクションも起こさなければ、お客さんは我々から離れていってしまいます。ここでお客様とベンダーを繋ぎとめ、より良い信頼関係を構築するのがカスタマーサクセスなのです。もう1つは、原則5の「ロイヤルティの構築に、もう個人間の関係はいらない」です。原則2に則れば、それは人の介入が必要になります。しかし、カスタマーサクセスではお客さんに関わるデータを把握し、どのようなアクションを起こすべきかの分析がされます。テクノロジーを活用することで人による介入を柔軟にコントロールできるようになるのです。実際にSansanでも製品利用率やWebアクセス数、動画視聴数やイベント参加率などのデータからカスタマーサクセスを実践しています。

3. これから取り組む企業にとってのカスタマーサクセスとは

高野:書籍出版の反響はすごいですが、具体的にこの手法を日本企業に落とし込んだ際の課題やハードルといった事例が知りたいという読者の声はいくつかいただいています。今後そういった事例は増えてくると思います。また、データドリブンではない定性的な余地も重要になるのではないかと考えていて、データだけではどうにもならない範囲の補完が大切になってくるのではないでしょうか。

辻:なんとなくカスタマーサクセスを実践する企業は増えると思いますが、カスタマーサクセス部門が開発部門と連携したり、独自の権限で運営を開始したといったような、組織自体が大きく変わるほどの本質的なカスタマーサクセスの取り組みを進めていく企業の登場には大きな関心があります。

小川:カスタマーサクセスは人の働き方を変える力があると思います。これまでの仕事を効率化するデータドリブンだからこそ、特に多くの女性にとっての活躍の場が提供されるのではないかと思います。また、カスタマーサクセスはマーケティングやデータ分析、プログラミングやコンサルティングといった様々なスキルを必要とする職種のため、個人のキャリアアップの可能性が広がります。カスタマーサクセスマネージャーやCCOの登場が新たなキャリアとしての道を切り開くとともに、より良いサービスを生み出していくことに繋がります。

今回のイベントをまとめると、

1. カスタマーサクセスとは、パワーバランスが顧客へと移るパラダイムシフトの歴史の中で洗練されてきた経営理念であり、売って終わりではなく、売った後も顧客の成功の実現のために伴走していくことである。

2. 10原則は全て大事だが、これから国内企業がカスタマーサクセスを始めていくにあたっては、特に原則1「正しい顧客に販売しよう」、原則2「顧客とベンダーは何もしなければ離れる」、原則5「ロイヤルティの構築に、もう個人間の関係はいらない」、原則7「タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう」は押さえるべし。

3. カスタマーサクセスという組織の誕生は、人々のキャリアの可能性を広げ、より良いサービスを生み出すためのエンジンとなる。特に多くの女性が活躍できるポテンシャルが大きい。

参加者に皆様からは「カスタマーサクセスに関する理解を深めることができた」というたくさんのお声とともに、「三名の登壇者が異なる視点や切り口でカスタマーサクセスを捉えていて非常に面白かった」といったコメントも多くいただきました。今回のイベントでは、カスタマーサクセスの理論という基礎的な話から、カスタマーサクセスが注目されるに至ったビジネス潮流の歴史、登壇者自らが感じた発祥の地アメリカでの圧倒的熱量の高さ、更には実際に日本で実践している企業の具体的な話まで、多角的な切り口からカスタマーサクセスの全体像をご理解いただけたと思います。

当日の参加者の中で、既に「青本」を読んだという方は約半数ほど。「Pulse 2018」についての話にもあったように、日本での認知度は海外と比べてもまだまだ低く、Sansan様のように積極的に実践し、効果を出している企業は数えるほどです。

弊社にとって「青本」の出版は始まりに過ぎず、この理念を日本国内へ広めていくことが我々の第一のミッションだと考えています。既にカスタマーサクセスへ取り組まれている企業様はもちろんのこと、これから取り組みを始めていく方々とも協力しながら、バーチャレクスとして国内でのマーケットを盛り上げていくための活動を今後も推進していきたいと思います。

『カスタマーサクセス -サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則-』


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執筆者紹介:
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部
金井 昴(かない すばる)

新卒で入社以降、顧客の保有する膨大なデータを一元管理し、BIツールでの可視化/活用から経営課題を解決するITコンサルティングプロジェクト及び、複数メーカーのIoT戦略方向性検討支援や事業戦略立案支援を行うコンサルティングプロジェクトに従事。現在は、カスタマーサクセスを活用した顧客の事業改革支援も推進中。