コンタクトセンター運営のあるべき姿とその実現に向けたアウトソーシング活用術 -前編-

contactcenter-outsourcing_tobira.jpg2018年5月に開催されたコールセンター/CRMデモ&カンファレンスin大阪においても、その潮流は顕著にみられましたが、少子高齢化社会による生産年齢人口減少が進む中、コンタクトセンター業界においても、AIやRPAなどの自動化ソリューションを駆使して、如何にオペレーション効率化していくかというテーマに取り組む企業が増えております。 一方で、AIやRPAという、いわゆる"流行の波"にのまれ、本来は効率化の一つの手段、選択肢であるソリューション導入自体が目的化する、もしくは、足元にある課題解決をおざなりにして、その手段にすがった結果、期待したソリューション効果が得られないというケースも耳にするようになってきました。 そこで今回は、原点に立ち戻って、コンタクトセンターの取り巻く環境変化を踏まえた上で、コンタクトセンターのあるべき姿の実現に向け、足元にある課題解決の代表的な方法の一つである"アウトソーシング"のあり方についてご紹介をさせていただきます。


●コンタクトセンターを取り巻く環境の変化


1.商品・サービスのコモディティ化の進行

昨今は技術の円熟化、モジュール化、海外の低価格商品やサービスの参入により、特定の商品やサービスが、特定の企業からしか買えない、という事が少なくなっています。結果として、商品やサービスそのものの差別性が失われ、顧客や消費者にとっては、どこで買っても大差が無い状態、つまり "コモディティ化"が進行していると言われています。

そのような中で、顧客対応などのアフターフォローを含む、いわゆる付加価値領域における質の違いが、商品やサービスに差別化ポイントであると言われています

ここ数年、コンタクトセンター業界ではCS(カスタマーサティスファクション)だけでなく、CX(カスタマーエクスペリエンス/顧客経験価値)という言葉を耳にする機会が増えています。これは商品やサービスそのものの価値だけでなく、商品やサービスを通じて顧客が得る、満足感や効果など、心理や感覚に訴えかける価値を指します。

スターバックス社はこのCX戦略に成功した代表的名な企業であり、コーヒー単体の味や価格で勝負するのではなく、来店時に得られる"顧客体験"を差別化する事で、そのポジショニングを確固たるものにしました

ちなみに私の妻はスターバックス(スタバ)のロイヤルカスタマーであり、本人曰く、コーヒーの味×価格の比較だけで言えば同等もしくはそれ以上のお店はたくさんあるが、結局、スタバが総合的に居心地よいとの理由で、最低で週三回は通っています。まさにスタバのCX戦略のとりこになっています。


2.サブスクリプション型ビジネスの拡大


時代は「保有」から「利用」へ移行し、ここ数年でサブスクリプション型(以サブスク型)ビジネスが急成長しています。この言葉を知らない方も、恐らくサブスク型のサービスを利用しているのではないでしょうか。

サブスク型とは売り切りではなく、利用期間に対して対価を支払うモデルで、簡単に言えば「期間定額で使い放題」というようなサービスです。その代表的なサービスであるAmazon Primeは2018年4月にUSAでの会員数が1億人を突破したというニュースが話題になっていました。USAの総人口(子供やお年寄り含む)が約3.3億人という事を考えると驚異的な会員数です。



また、これまではAmazon Primeのように、動画や音楽などネット配信されるものがサービスの中心でしたが、最近は洋服やアクセサリ、ラーメンや居酒屋など、オフラインで提供されるサービスまでサブスク型ビジネスの波が押し寄せています

このモデルでは、商品やサービスを買ってもらうこと(初期購入)以上に、如何に継続購入をしてもらえるかが重要であり、その為には利用開始後から、顧客接点における長期的で良好な関係構築が必須となります。

■ 時代はカスタマーサポートから"カスタマーサクセス"へ


そのようなサブスク時代の流れに背景に、「カスタマーサクセス」という考え方や取組みが企業にとって重要視されています。これは顧客の成功を第一に考え、設計し、行動する事が企業の成長に繋がるという考え方で、これまでのカスタマーサポートというものとは似て非なるものです。

サブスク型のサービスを提供する企業のうち、利用開始後の代表的な顧客接点であるコンタクトセンター部門で、この「カスタマーサクセス」の考え方をいち早く取り入れ、顧客の成功支援に力を入れていける企業が、サブスク型ビジネスの勝ち組になれるのではないでしょうか

カスタマーサクセスをもう少し詳しく知りたい、という方は以下の記事をクリック


3.労働人口の減少による採用難


日本では2010年頃から人口が減少し始め、特に15歳~64歳の生産年齢人口は減少をたどる一方です。このブログをお読みの方で、コンタクトセンター運営や採用に携わっていれば、既にこの影響を肌で感じている事かと思います。

そのような中、残念ながら日本ではコンタクトセンターの仕事(アルバイト)は"裏方"や"クレーム"のイメージがあるからか、人気のある仕事とは言えない為、その影響をダイレクトに受け、既に「良い人材が採れない」「採っても続かない」という悩みを抱えているのではないでしょうか。

こうした流れのから、業界ではAIやRPAなど人手に頼らないソリューションの導入や、オフショア拠点の活用などの検討テーマが増えておりますが、前述の通り、この手の施策を打つ前に、その効果を最大化するためにも足元にある課題をしっかりと視える化し、改善していく事が重要です。


4.コミュニケーションチャネルの多様化


スマートフォンの普及に伴い、コミュニケーションチャネルも従来の電話やメールといったものに加え、SNSやチャット、LINEへとチャネルが多様化しています。一方で、社会の高齢化が進む中で、すべての顧客が新たなチャネルへ移行するかというと、そうではない為、コンタクトセンターにおけるこの先10年は、従来のチャネルと新たなチャネルが混在した、いわゆるマルチチャネルでの対応が必要となってきます。


例えば、お問い合わせを受ける際、電話対応が出来る方は、メール対応が出来るのかというと、ベースの知識は同じでも、伝え方が変わることで求められるスキルが違ってきます。加えて新たなチャネルが増えれば、その分、求められるスキルやその教育、品質管理の手法も違ってくる為、チャネルの多様化に適用するマネジメントが求められます


●変化に適用できるコンタクトセンター


このようにコンタクトセンターを取り巻く環境は時代の流れと共に変わってきていますが、一方でコンタクトセンター運営の実態はというと、この環境変化に適用する以前に、足元課題の解決に苦しんでいるセンターも多いと感じています。

特に業務をアウトソーシングされているセンターで、コストを重視するあまり、運営改善に注ぐ力を失い、決められた業務範囲を粛々とこなすような、量産型のアウトソーシングが散見されます。このような状態では、環境変化を受け入れ、適用できる柔軟性を持つ事が困難です。

本来、アウトソーシングとはコンタクトセンターのあるべき姿を実現する為の打ち手で無ければなりません。したがって、アウトソーシングのあり方も同様に、刻々と変化するコンタクトセンターを取り巻く環境変化を踏まえた進化が必要です。

次回の記事では、その変化も踏まえた、コンタクトセンターのあるべき姿とその実現に向けたアウトソーシング活用のヒントについて触れたいと思います

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執筆者紹介

オペレーションサービス統括本部
オペレーションコンサルティング部 シニアマネージャ
西日本事業所 所長
藤谷 剛仁(ふじや たけひと)
2001年に入社後、ISPや通信会社、複合機メーカーなど多くのコンタクトセンター運営マネジメントを経験し、2011年よりコンサルティング部門へ異動。コンタクトセンターを中心とする非対面顧客チャネルにおける運営企画や業務改革に従事。現在は西日本エリアの事業強化に伴い、2017年4月に立ち上げた西日本事業所の責任者を兼務。

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