RPA導入における心得とプロセスのコツ~UiPath導入現場から~前編

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1.イントロダクション

RPA導入における心得とプロセスのコツ~UiPath導入現場から~前編

52,400,000。これは、「RPA」というキーワードでGoogle検索を行った時にヒットするサイトの数です(2018年6月4日現在)。Twitterの国内月間アクティブユーザ数が45,000,000人(2017年10月時点)であることを勘案するとRPAというキーワードへの注目度の高さが伺えますね。本記事の読者様にもRPAの導入をお考えの方や、導入を考えながらも、具体的な導入イメージがつかず、迷われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、2回に渡って、RPA導入プロジェクトに参画している筆者が自身体験をもとに導入のポイントを皆様にお届けしたいと思います。

改めてですが、RPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)の実体とは一体どんなものでしょうか?極端な言い方をすればRPAはエクセルのマクロとあまり違いはありません。ルールベースで、決められたことを、決められた通りに処理するソフトウェアロボットを作り、業務を自動化するという取り組みです。

マクロに比べて優れている点としては、多くのシステムと繋がりやすいことが挙げられます。繋がることが可能なシステムとしては、Microsoft Office、Webブラウザ、基幹システムといった一般的に使われるものはもちろん、OCR(Optical Character Recognition: 光学的文字認識)や、AIなど最新の技術が投入されているシステムとの連携も可能となってきています。つまり、コンセプトとしては随分昔からあったものですが、他の技術との連携によって、人間の仕事を代替することが実際に可能になってきた、というのがRPAの背景です。マクロのようなもの、という実体が分かってくると、導入についての心理的なハードルも随分と下がったのではないでしょうか?また、RPAはシステム導入とよく比較されますが、システム導入と比べても、時間やコストの観点から導入のハードルは低いと言えます。

現在筆者は、数千人規模の企業のIT戦略部から発注を受け、UiPathによるRPA導入を全社的に行っています。導入するRPAの主たるユーザは(ITを得意とするとは限らない)各部門の担当者で、彼ら彼女らが日々おこなっている定型業務を自動化するのが、我々のミッションです。プロジェクト上の私の役職は開発者ですが、少人数のチームですので、要件定義から保守までの全ての工程を担当しています。ちなみに現在のプロジェクトは、他ベンダから引き継ぐ形でスタートしましたが、現場での初めての仕事は動かなくなったロボットを改修することでした。実はこれに随分と苦戦しまして、チームメンバの多くが大変な思いをしました。そこで、この経験から得た気付きや学びをRPA導入における3つの心得として次項から挙げていきたいと思います。


2.開発心得

2.1 心得1:上流から下流まで、すべての工程を一人で担当すべし

プロジェクトの性質によるところはあるのですが、RPA導入では可能な限り、要件定義等の上流工程から開発やテスト等の下流工程までの一連のプロセスを一気通貫で一人の人間に担当させるべきです。この方法では、ユーザ側との信頼関係を築きやすいことに加え、文書化されていない(されづらい)ナレッジから、ユーザが本当に求めているものを形に落とし込みやすいというメリットがあります。一般のシステム導入では、多くの人員が長時間をかけてシステムを作ることから、伝言ゲーム状態になりやすく、数億円を費やして導入を行ったが、実際に出来上がったのは、ユーザの求めるものとはまったく別のシステムであったという笑えない笑い話をよく耳にします(図1)。この様な事態を避け、ユーザが本当に必要としているロボットを構築しやすいことは、非常に大きなメリットです。


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図1: 顧客が本当に必要だった物(システム導入及び顧客要件理解の難しさを表した風刺画)(出典:PROJECT CARTOON

2.2 心得2:ユーザはチームの一員と考え、巻き込むべし


現在のRPA導入では多くの場合、人間の行っている定型業務をロボットに置き換えるという形で行われます。そのため、直接ロボットを利用するユーザは「利用者」であるだけでなく、「業務の内容を熟知しきったアドバイザ」とも言えます。このことから、開発時にユーザの協力を得る、もとい、当事者として巻き込むことが導入の成否を分けるといっても過言ではありません。

加えて、なるべく早期に協力を得ておきたいのがIT部門(情報システム部)です。現代企業において、ほとんどの部署では業務に何らかのシステムが利用されていますが、多くの場合、ユーザは業務の熟練者であっても、システムの管理者ではありません。よって、これらの仕様や内情を知るIT部門の協力を得ることもスムーズな導入においてはほぼ必須と言えるでしょう。人間関係の攻略法に王道はありませんが、ユーザやIT部門への日々のちょっとした気遣いとコミュニケーションがプロジェクトの進行に影響することは想像に難くありません。


2.3 心得3:開発後の姿を強く意識すべし

他のシステム導入でも同様ですが、RPAにおいても開発フェーズより運用・保守フェーズが長くなるものです。特にRPAの普及はまだ始まったばかりであることから、ユーザは知識としてRPAで何ができるのかを知っていても、具体的な運用イメージを持つことは難しいかもしれません。このような背景もあり、RPA導入では、開発が終了した後から要件の変更や追加が行われることが少なくありません。加えて、RPAから利用しているシステムに変更があった、対象業務に変更があった、などロボットの改修に繋がる要因は数えきれません。これらのことから、RPA導入では、改修の行いやすさとユーザビリティを強く意識する必要があります(図2)。


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(図2)心得の関係性



以上が、私がRPA導入を通して学んだ、特に意識するべき心得の3つです。

次回からはより開発者向けの内容になりますが、心得をベースにした具体的な導入プロセスについて、お話したいと思います。

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