成長企業の常識、企業と顧客を成功に導く「カスタマーサクセス」-これからの時代の必勝法- ~第1回~

第1回 カスタマーサクセス台頭の背景、カスタマーサポートとの違い

成長企業の常識、企業と顧客を成功に導く「カスタマーサクセス」―これからの時代の必勝法-

カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセス(CS)」という言葉をご存知でしょうか。CSと聞くと、カスタマーサポートを連想する方も多いと思います。カスタマーサクセスとカスタマーサポート、言葉は似ていますが、それらの本質はまったく異なります。簡単に言うと、カスタマーサポートは「顧客の満足度」の向上が目的であり、カスタマーサクセスは「顧客の成功」の実現が目的です。

カスタマーサクセス(=顧客の成功)」とは一体何なのか?以下の全3回にわたって紹介していきたいと思います。

第1回 カスタマーサクセス台頭の背景、カスタマーサポートとの違い(今回)
第2回 カスタマーサクセスを実行するうえで重要となる3つの要素
第3回 顧客を成功に導くための10の原則


カスタマーサクセスの台頭

カスタマーサクセスとは、「顧客の成功こそが、自社の成長・成功の鍵」である、という概念です。
具体的に言えば、

  1. 自社製品やサービスを顧客に活用してもらうことを通じ、顧客が抱えている、あるいは今後直面するであろう様々な課題の解消を継続的に支援し、顧客が理想とするゴールに向けて伴走し、

  2. その過程において、自社が提供する製品やサービスを継続的に改善・高度化し、顧客の期待値に応え続けることで、良好なパートナー関係を維持・深化させていくと、

  3. この顧客による自社商材の活用(商材による継続的価値提供)自社商材の継続的高度化(商材自体の価値向上)が好循環となる結果、顧客のビジネスの成功(=売上・粗利増、顧客開拓等)が達成され、ひいては自社のビジネスも成功する。

という考え方です。この概念が台頭してきた背景には、CRM(顧客関係管理)領域でクラウドコンピューティングサービスを提供してきた世界トップベンダーであるセールスフォース・ドットコム(以下SFDC)が、2000年初頭にいち早くその重要性を唱え始めたことにあります。

当時、ITベンダーのビジネスモデルは、システムを導入・納品した際に売上をあげる「売り切り型」が主流でした。そんな中、SFDCは顧客に対し、システムをSaaS(Software as a Service)形式で提供し、顧客が必要とするITシステムを必要なだけ利用することで、その対価として利用料を支払うという「継続課金型(サブスクリプションモデル)」のビジネスモデルを採用し、市場を席巻することを狙いました。しかし、利用継続の判断を顧客が握るこのビジネスモデルでは、「顧客が満足しなければ顧客であることを辞めてしまう=サービス利用を辞めてしまう」 ― そこに危機感を感じたSFDCが、試行錯誤の末に辿り着いた概念こそが「カスタマーサクセス」なのです。


なぜカスタマーサクセスの重要性が増しているのか

従来の売り切り型モデルではシステムの導入時に大きな収益を得ることができます。一方、サブスクリプションモデルでは、導入時の初期費用はできるだけ抑えつつ、毎月の利用料を徐々に積み重ねていくことで最終的に大きな収益を得ることができます。従い、サブスクリプションモデルにおいて目標とする収益を達成するためには、新規顧客を獲得することに加えて、一旦獲得した顧客を手放すことなく如何に自社サービスの利用者として繋ぎとめておくことができるかという点も極めて重要です。言い換えれば、顧客との関係が「売って終わり」から、「売ってからが始まり」へと大きくシフトしているのです。

昨今のITシステムやソフトウェアは、SaaS提供が一般的になってきています。またITビジネスに限らずサブスクリプション型のビジネスモデルも増加してきています。このような背景から、導入・販売後の顧客に積極的に働きかけ、自社の製品やサービスを継続的に利用してもらうことが企業のKSF(重要成功要因)として認識されるようになり、カスタマーサクセスの重要性に注目が集まりつつあるのです。


身近に存在するサブスクリプションビジネス

サブスクリプションビジネスには、SFDCのようなB2Bのものだけではなく、私たちの身近なところで展開されているB2Cのものも多くあります。例えば、新聞・雑誌の定期購読、月会費制のフィットネスクラブなどが挙げられます。そして、このサブスクリプションビジネスは、昨今のテクノロジーの勃興に伴い、その適用範囲をどんどん拡大しています。Netflix(映画・ドラマなどの映像配信サービス)、Apple Music(音楽配信サービス)などがその代表例と言えるでしょう。今後も多くの製品やサービスが、単なる売り切りモデルからサブスクリプションモデルに移行し、私たちの生活に大きな変化をもたらすことは間違いないでしょう。モノを「所有」する時代から、モノを「利用」する時代へと変化しつつあるのです。


カスタマーサポートとの比較からみるカスタマーサクセス

続いて、カスタマーサクセスの概念理解を深めるため、5つの視点からカスタマーサクセスとカスタマーサポートを比較してみます。


1. 顧客の成功を目指して伴走

カスタマーサポートは、顧客がサービスに対して何か不満を持ったり困ったりしている場合、その解消・解決のためのサポートを行うこと、そして顧客のネガティブな体験を解消することで満足度を向上させることが主な目的です。

一方、カスタマーサクセスは、一連のビジネス活動のなかでどのような場面において顧客が「お困りごと」を感じるのか、どういった事象が顧客の成功を目指すうえでの障害となるのかを予め明確にし、直面する数々の障害を顧客と一緒に乗り越え、その先のゴールへ向けて伴走します。顧客に関わる全ての体験に寄り添い、共に成功を目指していくことがカスタマーサクセスの最大のミッションなのです。


2. 顧客とのプロアクティブなコミュニケーション

カスタマーサポートの考え方では、常に顧客からのアクションが先行するため、商品・サービスの提供側は基本的に受身のスタンスにならざるを得ません。言い換えれば、顧客がサービスを利用する中、で何か問題が生じた際にのみサポートに問い合わせるため、何も問題がなければ顧客がカスタマーサポートを利用する必要はありません。

一方、カスタマーサクセスにおいては、顧客が使っている製品やサービスに問題はないか、不満はないかなどの顧客の状態(ヘルススコア)を各種データを通じて把握した上で、プロアクティブにコミュニケーションを取ります。ゴールを目指す旅の途中で顧客に問題が生じた場合はいつでもサポートできるよう、常にこちらから積極的に顧客へ働きかけていくことを心掛ける姿勢が必要不可欠と言えます。


3. 様々なデータから顧客の状態を予測

カスタマーサポートでは、顧客からの問い合わせやアンケートなどの「顧客の声」からのみ該当する製品やサービスについての利用状況を把握します。また把握する以上のアクションを取ることは多くありません。

一方、カスタマーサクセスでは、これら顧客の声に加え、製品・サービスの利用頻度や利用時間、こちらからのメールに対する反応率、相互コミュニケーションを通じて獲得するフィードバックなどのデータをテクノロジーを駆使し収集します。そして収集結果から、顧客がどのような状態で、製品やサービスに対してどういった感情を抱いているかの現状把握に加え、将来どのような行動を起こすかの予測を行い、適切な打ち手を講じることが重要になります。


4. 顧客が成功へ向かうためのKPI

カスタマーサポートでは、製品・サービス提供側の作業効率化が重要なポイントであり、いかに受電率や応答率を高めていけるかがKPI(重要業績評価指標)となります。

一方、カスタマーサクセスでは、顧客が目指す、あるいは理想とするゴールに辿り着くために、自社製品やサービスに満足し使い続けてもらうことが必要不可欠です。そのため、製品やサービスの契約更新率向上や解約率減少、こちらからの働きかけに対する顧客反応率や顧客満足度といった指標がKPIとなります。


5. 企業にとってのプロフィットセンター

カスタマーサポートは、どれだけ非効率的な業務を省いてコストを削減できるかがポイントであるため、企業に直接的な利益をもたらす可能性は大きくありません(=コストセンター)。

それに対して、カスタマーサクセスは、定常的に収益を生み出すための仕組み(=プロフィットセンター)と言えます。上述の通り、カスタマーサクセスの実践を通じ、コストをかけて獲得した顧客との関係を深め、契約を維持(Retention)し、解約(Churn)リスクを抑制することが可能です。また顧客からの期待に応え続けることができれば、より多くの機能を備えた上位エディションへのアップセルや類似サービスへのクロスセルに繋がります。更には、満足度の高い顧客による口コミや紹介での新規顧客の獲得も期待できます。


このように、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは全く異なる概念です。繰り返しになりますが、カスタマーサクセスの最大の目的は「顧客の成功」の実現です。顧客のサクセスジャーニー ―成功への旅路― を描き、共有し、ゴールまでの旅路を共に走ること。やや回りくどく、一見偽善的もしくは理想論にも見える概念ではありますが、ギブアンドテイク・持ち持たれつといった、人間のもつ心理(心理学でいう「返報性の法則」)に照らせば、理解・納得しやすく、馴染みやすい概念なのではないでしょうか。

もちろん、実際にカスタマーサクセスの概念をアクションに落し込む際、理念として会社全体でその重要性を理解した上で取り組むこと、そしてその推進を司る組織・体制を構築することなど、いくつかの乗り越えるべき壁・ハードル(言い換えれば、カスタマーサクセスの要点)があるのもまた事実です。

次回は、カスタマーサクセスを実行するうえで重要な3つの要素についてお話ししたいと思います。


s_morita

執筆者紹介:
ネクストバリュークリエイション事業本部
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部
金井 昴(かない すばる)

新卒で入社以降、顧客の保有する膨大なデータを一元管理し、BIツールでの可視化/活用から経営課題を解決するITコンサルティングプロジェクト及び、複数メーカーのIoT戦略方向性検討支援や事業戦略立案支援を行うコンサルティングプロジェクトに従事。現在は、カスタマーサクセスを活用した顧客の事業改革支援も推進中。