サービスの多様化に伴い、顧客のカスタマーサービスは年々複雑化し、且つ高品質なサービスへの期待も高まる傾向にあります。同時に良質なカスタマーサービスはより売上を増加させる競合優位性の1つともなり得ます。
しかし、顧客の期待に応え続けるには、コンタクトセンターは顧客満足やパフォーマンス向上のために改善をし続けなくてはなりません。
2015年も半分を過ぎた今、これからの企業と顧客のコミュニケーションのあり方にも大きな影響を与えるであろう、コンタクトセンター関連のテクノロジートレンドに注目してみましょう。
モバイル対応
言わずもがな、スマートフォンなどのモバイル端末は殆どの人が持ち、日々利用しているツールです。
特にスマートフォンは単一のチャネルではなく、メール、電話、ビデオチャット、テキストメッセージ、ソーシャルメディアなどほとんどの機能を備えたオムニチャネルプラットフォームです。この普及に伴い、多くの消費者は問題の解決策をスマートフォン経由で検索したり、問い合わせたりする傾向にあります。
企業は自社が提供するWebサイトやアプリ、カスタマーサービスなどがこのスマートフォン経由でのアクセスを妨げたり、不便な状態にしておかないよう注意をしなくてはいけません。必要な情報にアクセスしづらい状況は自社のブランドイメージ悪化や競合他社への乗り換えを促進してしまうことにもなりかねません。
ガートナー社の調査によれば、この先3年間、モバイル対応がされていない企業は顧客満足度を5%以上低下させる要因になると予測しています。
セルフサービス化
ここでのセルフサービスとは、「顧客自身で問題を解決する」ことを指し、つまり顧客が企業のカスタマーセンターに問い合わせる必要がなくなることを言います。
前述のスマートフォンの普及なども関係しますが、今はインターネットなどのテクノロジに慣れ親しんだ消費者が多く、また面倒なカスタマーセンターへの連絡などをせず、自分だけで問題を解決したいという傾向にあります。
ガートナー社の調査では、2020年までに顧客と企業の交流の85%は実際に対面することなく行われるようになるとの予測もあります。
これは企業側から見れば「コスト削減」と「サポート体制の縮小」が同時に叶うというメリットもあり、多くの企業が積極的に取り組んでいきたいトレンドかと思います。
前述のモバイル対応にも関係しますが、モバイル最適化された環境下で自分の好きなタイミングで問題を解決できる状態にあれば、顧客満足度の向上にも繋がるでしょう。
積極的なカスタマーサービス
「お客様は次に何を求めるのか?」、こういった先を見越したカスタマーケアはいまや必須要件となっています。ただ顧客からの電話やメールを待ち続けるだけの時代は終わり、顧客が抱えている問題やニーズを察知し、相手よりも先に企業側からアプローチすることが肝要です。
その実現のために、Webサイトや電話、メールなど全てが統一されたプラットフォームが必要となってきます。
例えば顧客がログインで問題が起きて困っている際、またはWebサイトのヘルプページを数分間閲覧している場合、その顧客はサポートを必要としている可能性が高いと判断し、オペレータとのWebチャットを促したり、カスタマーセンターへの連絡を促すなど企業側から積極的なアプローチを行うことで、顧客満足度の向上や誹謗中傷などのブランドイメージ低下に繋がる顧客の行動を抑制することにも寄与するでしょう。
リアルタイム分析
先進的な企業では顧客体験の向上、売上の増加を目指し、顧客のウェブ上の行動や応対履歴など大量のデータ(ビッグデータ)を処理出来るツールを導入し、リアルタイムに分析する取組みが始まっています。こうした分析を通して顧客の行動パターンを把握し、最良の結果に繋げるための施策へと反映させています。
Boston Retail Partners(BRP)の「2014 CRM/Unified Commerce Benchmark Survey」によれば、大手小売業者のうち、こうしたリアルタイム分析を実施しているのはまだ22%程度で、向こう2年間で導入を検討している企業は61%いるとのことです。
便利な"チャット"機能
日本ではまだまだ発展途上ではありますが、主に海外のカスタマーサポート領域において、「インスタントチャット」は欠かせないものになってきました。
チャットは自社Webサイトに訪れ、購入の意思決定に迷っている人の助けとなり得ます。チャットは電話などの他チャネルと比べると、比較的手軽にコミュニケーションが始められ、また複数のチャットの同時対応が可能なためにオペレータの業務効率向上にも寄与する可能性があります。また、電話と異なり、通信費などのコスト削減にも大きなメリットがあります。
顧客体験が最重要
「Customers 2020 Report」によれば、2020年までにはブランドの差別化要因は価格や製品よりも「顧客体験」が上回ると予測されているそうです。
たくさんの競合達の中で自社を際立たせ、ファンを増やすためには、製品やサービスに独自の優位性を持たせることも重要ですが、顧客体験の質を向上させる必要もあります。
今日の顧客は情報の処理に優れ、意思決定の際には他のユーザーのレビューやレコメンドを重視します。自社に好印象を持っている顧客を増やすことは非常に重要であり、優れた顧客体験の提供は新規顧客の獲得のみでなく、既存顧客のLTV(顧客障害価値)向上にも貢献します。
ガートナーは「Gartner's Top 10 Strategic Predictions for 2015 and Beyond」で、2017年にはR&D予算の半分以上が顧客体験の改善に充てられるようになると予測しています。
皆さんの会社のコンタクトセンターではどこまで対応、実践していますでしょうか?自社が今後目指す姿に合わせて必要なテクノロジーを選定・活用していきましょう。
※本記事はTop Contact Center Technology Trends of 2015を参考に修正・加筆したものです。