この連載記事はAmazon Connectの機能を実際に試して、バーチャレクス・コンサルティングのメンバーがコンタクトセンターでの利用を想定したコメントをします。
Amazon Connectについての詳細情報はAWS公式ドキュメントをご参照ください。
Topic1. Amazon Connect にキューパフォーマンスダッシュボードが提供されました
Amazon Connectには、キューのパフォーマンスを把握するための機能として履歴メトリクスで過去の一定期間のキュー/エージェント/電話番号のKPIを表示する機能がありました。
履歴メトリクスでは一般的なKPI指標(AHT、着信数、発信数、中止したコンタクトの数など)をコンタクト全体、キューごとの区分で見ることができましたが、数値での表示にとどまることが難点でした。
今回のアップデートではグラフィカルな表示でキューの一定期間のパフォーマンスを表示することができるようになり、日/週/月の単位でキューのパフォーマンスを把握することが容易になりました。
※履歴メトリクスと同一の指標ではありません。
キューパフォーマンスダッシュボードの表示方法
メニューの「分析と最適化>ダッシュボードとレポート」を選択します。
メニューが表示されない場合、キューパフォーマンスダッシュボードへのアクセスが許可されていないユーザーでログインしている可能性があります。セキュリティプロファイルの設定を見直してください。
次に「ダッシュボードとレポート」の「ダッシュボード>キューパフォーマンスダッシュボード」を選択します。
キューパフォーマンスダッシュボードが表示されます。
一番上の表示エリアで、分析対象期間、比較対象となる月の選択、およびフィルター(絞り込み)の設定を行うと、パフォーマンスの状況が表示されます。
キューパフォーマンスダッシュボードの内容
【パフォーマンスの概要】
・対応したコンタクトの数
・サービスレベル20秒
・平均処理時間
・平均キュー応答時間
が表示されています。それぞれ比較対象の期間と比べてどれだけ向上 (緑色の文字) /悪化 (赤色の文字) したか自動的に分析されます。
分析結果のダウンロード、拡大表示は右上のアイコンをクリックします。各表示エリアの左下の線状のアイコンをドラッグすると、表示エリアのレイアウトを変更することができます。
【対応したコンタクトと平均処理時間のトレンド】
日別//月別の対応コンタクト数、平均処理時間(AHT)が表示されます。 各月のコンタクトの多寡だけでなく、平均処理時間と合わせて確認することで
・AHTが長くてコンタクト数が減少している月は、時間のかかる問合せが多かったから対応したコンタクトの数が減ったのかな?
・新人がたくさん入った数か月前と比較して、現在は対応するコンタクト数が増えてATHも下がってきているので、オペレータのスキルが伸びているのではないか?
などの考察を簡単に行うことができるようになります。
実際の分析では当該の期間のオペレータのシフトや、キャンペーンなど季節性のある行事に実施状況と合わせて確認するとよいでしょう。
Topic2. Amazon Connect に 会話型分析ダッシュボードが提供されました
Topic1で紹介したキューパフォーマンスダッシュボードと同様に、過去のコンタクトを横断的に分析するContact Lensの会話型分析ダッシュボードが新たに提供されました。
従来のContact Lensは個々のコンタクトの分析及びSpeech to Text化の側面が強く、期間を横断した分析については扱ってきませんでしたが、新機能を利用することで一定期間におけるContact Lensの分析結果を横断的に確認でき、 語句検出結果のトレンドの分析も可能です。
詳述するように、Contact Lens の会話型分析ダッシュボードはContact Lensのルール機能を活用していることが前提です。ルールを設定していない場合は、AWSの公式ドキュメントに従ってルールを設定しましょう。
会話型分析ダッシュボードの表示方法
メニューの「分析と最適化>ダッシュボードとレポート」を選択します。
「ダッシュボードとレポート」の「ダッシュボード>会話型分析ダッシュボード」を選択します。
表示されない場合、
①Amazon Connectインスタンスの設定でContact Lensが有効化されていない
②Contact Lensの利用が許可されていないユーザーでログインしている可能性がある
の2つの可能性があります。設定を見直してみましょう。
会話型分析ダッシュボードが表示されます。
一番上の表示エリアで、分析対象期間、比較対象となる月の選択、およびフィルター(絞り込み)の設定を行うと、パフォーマンスの状況が表示されます。
会話型分析ダッシュボードの内容
【パフォーマンスの概要】
キューダッシュボードでも表示されていた
・対応したコンタクトの数
・平均処理時間
・平均キュー応答時間
に加え、転送済みのコンタクト(受信)が表示されます。
それぞれ比較対象の期間と比べてどれだけ向上 (緑色の文字) /悪化 (赤色の文字) したのか自動的に分析される点はキューダッシュボードと同じです。
【パフォーマンスの概要: Contact Lens の会話分析によって分析されたコンタクトの内容】
パフォーマンスの概要と同じ項目が表示されます。
パフォーマンスの概要はすべてのコンタクト(Contact Lensでの分析対象外であるコンタクトを含む)のデータを表示しますが、 Contact Lens の会話分析によって分析されたコンタクトではContact Lensが有効化されたコンタクトフローによって生成されたコンタクトの概要を示します。
【コンタクトカテゴリ】
分析対象期間のコンタクトカテゴリ(Contact Lensのルールとして登録したルール名)について、下記を表示します。
・コンタクト(%):Contact Lensでの分析対象となるコンタクトのうち、当該のコンタクトカテゴリを持つコンタクトはどれだけの割合を占めているか。
・コンタクト:コンタクトの件数。
・AHT:当該のコンタクトカテゴリを持つコンタクトの平均処理時間。
・平均キュー回答時間:エージェントが該当のコンタクトカテゴリを持つキューに対応開始するまでの平均時間。
・転送されたコンタクト:転送が発生して別のコンタクトIDが採番されたコンタクトを個別に計上した場合のコンタクトの件数。
画像の出典:Contact Lens conversational analytics dashboard
【Movers&Shakers のトップ 5】
分析対象の期間と比較対象期間で、発生頻度が特に高かった、または低かったコンタクトカテゴリを表示します。発生率での表示のため、分析対象の期間のコンタクトカテゴリのトレンド(件数が特に多かった・少なかった)を把握することに役立ちます。
チャートは変化率の絶対値が高い順に表示されます。
・変化率:(コンタクト数%-以前のコンタクト数%)/(以前のコンタクト数%)で算出。
・コンタクト%:Contact Lensでの分析対象となるコンタクトのうち、当該のコンタクトカテゴリを持つコンタクトはどれだけの割合を占めているか。
・コンタクト:コンタクトの件数。
・先行コンタクト%:比較対象期間における、当該のコンタクトカテゴリを持つコンタクトの数を、Contact Lensの分析対象であるコンタクトの総数で割った割合。
・先行コンタクト:比較対象期間における、当該のコンタクトカテゴリを持つコンタクトの数。
画像の出典:Contact Lens conversational analytics dashboard
【上位のコンタクトカテゴリの平均処理時間】
出現回数が上位10個までのコンタクトカテゴリについて、当該の期間と比較対象となる期間とのAHTを並べて表示します。頻出するコンタクトカテゴリのAHTを比較することで、対応に時間がかかりやすいコンタクトの動向を考える手助けになりま
す。
(例)先月はクレーム、暴言に相当する文言のコンタクトカテゴリは対応時間が伸びやすかったが、今月は対応時間が減少した場合
→システム的な変更要因のほか、現場での動きをオペレータにヒアリングするなどで理由を調査。 「オペレータがよくあるクレームのパターンを学習した」「SVによる対応の手助け」が理由として考えられる、など。
画像の出典:Contact Lens conversational analytics dashboard
【キュー別のコンタクト数】
分析対象の期間に対応したコンタクトがキュー別に表示されます。マウスオーバーで件数を確認することが可能です。
【対応したコンタクトと平均処理時間のトレンド】
キューパフォーマンスダッシュボードの「対応したコンタクトと平均処理時間のトレンド」と同じです。
キューはもちろん、Contact Lensを普段から利用している場合は特別な設定をしなくてもすぐに利用開始できるビジュアルなダッシュボードが提供されたので、コンタクトセンターですぐに使ってみる価値がある機能だと感じました。
一方で、表示する項目は自分でカスタマイズできないといった、ダッシュボードを自社業務に合わせて重用したいときには機能不足と思われる面もありますので、今後の継続アップデートに期待がかかります。
今月のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
バーチャレクスでは、Amazon Connectの導入支援や、AWS基盤活用のコールセンターシステムクラウドサービス「Connectrek」の開発・提供を行っています。お気軽にお問い合わせ下さい。
執筆者紹介
プロダクトエンジニアリング&サービス部