「顧客接点領域」における2020年のテクノロジートレンド展望

2020テクノロジートレンド_tobira.jpg2019年も2018年に引き続き、サブスクリプション型ビジネスに代表される「リテンションモデルビジネス」が盛り上がりを見せた1年でした。顧客との長期的な関係を重視するリテンションモデルビジネスは、すでに一過性のブームではありません。これを反映するように、国内CRMアプリケーション市場も堅調な推移を見せています。IDC Japanによれば、CRMアプリケーション市場は、2023年まで年平均5.8%程度の成長が予測されるとのこと。特にコンタクトセンターアプリケーション市場は、CRMアプリケーション史上全体のけん引役を担っています。(※1)


そこで今回は、2019年の動向を踏まえつつ、弊社取り組みを交えながら、顧客接点領域における2020年のテクノロジートレンドを整理していきます。

2020年注目のCRM関連テクノロジーとは?

まず、2020年のテクノロジートレンドを推測するための材料として、ガートナー社のCRMハイプサイクルを見ていきましょう。2018年12月期と2019年11月期を比較すると、以下の4つのテクノロジー(下図、赤枠部分)が「黎明期」から「ピーク期」へと移動しています。


2018ハイプサイクル.png

2019ハイプサイクル.png

出典:ガートナージャパン


これら4つのテクノロジーの概況をまとめると、次のようになります。

●CDP(顧客データプラットフォーム)

マーケティング施策の多様化や顧客接点の増加により、企業が収集・管理すべき顧客データは日々増大しています。そこで注目されているのが顧客データプラットフォーム(CDP=Customer Data Platform)です。CDPは、Web上の行動履歴のみならず、オフラインの購買情報・位置情報・リサーチの回答(アスキングデータ)なども収集・管理の対象とします。

昨今の顧客接点領域では、顧客を「個客」としてとらえ、リアルタイムかつピンポイントに訴える施策が重視されています。これを成立させるためには、オンライン・オフラインの顧客データを統合的に収集・管理し、マーケティング施策に反映させる仕組みが必要です。しかし、収集はともかくとして、オンライン・オフラインに散らばる多種多様な顧客データを、統合的に管理・分析する仕組みをもつ企業はそれほど多くないでしょう。


一方CDPを活用できれば、Webサイト、実店舗、カスタマーサポートなどから収集した顧客データを活用し、より高い顧客体験の提供や効果的なターゲティング広告の配信につなげられるわけです。以下は、CDPを活用した施策の一例です。


・スマートフォンアプリから得られるオンライン情報と、実店舗の来店履歴・購買情報・天気などをCDPに取り込み、潜在ニーズ・顧客の獲得に活用

・イベントのチケット売上データをCDPに取り込み、オンライン・オフラインを含めた顧客体験の全体像を把握。さらにWebサイトやスマートフォンアプリ上で顧客ごとに異なったオファーやコミュニケーションを提供し、ファン層の形成に活用


ちなみにCDP市場は、誕生から3年程度と歴史が浅いものの、2018年から2023年まで毎年30%前後の伸びが期待されています。(※2)弊社でも、従来手掛けてきたCRMに関するお問い合わせだけでなく、CDP自体の構築や、CDPを活用したデジタルマーケティングやカスタマーサクセスの企画・実行についてのご相談も多く、注目度の高さが伺えます。

●CRM用消費者向けメッセージングアプリ

日本国内では、「LINE」などの普及により、メッセージングアプリは身近なテクノロジーとなっています。迅速さと柔軟さが求められる顧客接点領域において、メッセージングアプリが持つ「手軽さ」「リアルタイム性」は有用です。またデジタルネイティブ世代は、セルフ解決や時間・相手に縛られないコミュニケーションを好む傾向があり、対面・電話以外のチャネルの充実は時代の要請とも言えます。実際にCRM市場においてもメッセージングアプリとの連携で顧客対応品質向上・業務効率化を行う例が増えており、今後はごく一般的なサービスとして定着していくでしょう。弊社でもクラウド型コールセンターCRM「Virtualex iXClouZ(バーチャレクス・アイエックスクラウズ)」において、LINEとの連携オプションを提供しています。

●チャットボット

現時点でチャットボットは次の2タイプに分類されます。


・ルールベース型のチャットボット
人間が専門家や実務家の知識をルールとして記述し、AIがルールに従って処理し結果を返すタイプのチャットボット。ルールに記載されたレベルの質問のみに回答できます。「よくある質問」のように、定型的かつ簡素な質問への応対業務を安価に効率化できる点が強みです。ただし、ルールの構築に人手がかかるほか、複雑な質問には対応できないという弱点があります。


・機械学習型(マシンラーニング型)チャットボット
教師データ(回答候補を集めたデータベース)の中から「正解する可能性が高い回答」を、一定のアルゴリズムに従って見つけ出すタイプのチャットボットです。機械学習型の正解を導き出すために着目すべき「特徴」を、人間が指定し、AIに教育することで動作します。運用が適切であれば、ルールベースよりも複雑・高度な対応を自動化できることが強みです。「特徴の設計」「AIへの教育」「教師データのチューニング、メンテナンス」に人手が必要で、開発・運用コストが大きくなりがちです。


これまではルールベースのチャットボットが中心であり、1次受付のように比較的簡単な対応をチャットボットが行い、複雑で高度な質問に対しては人間が対応するという形式が一般的でした。しかし、顧客対応をより高いレベルで自動化するために、機械学習型のチャットボットも徐々に増えています。また、機械学習型チャットボットへの教育までを対象にしたソリューションも登場しています。弊社でも、多くのお客様でチャットボットの導入に関する各種ご支援を手掛けており、現状分析・企画設計・システム選定と導入・運用後のチューニングまでを含むワンストップサービスで、確実に業務が定着するよう伴走させていただいております。


また、最近では、チャットボット単体ではなく、音声認識・Speech to Text、RPA、NLP/NLG、AI-OCR等別の先進テクノロジーと組み合わせて活用することで更なる自動化・高度化を図る、一歩先を行くお客様も増えつつある状況です。

●モバイルフィールドサービス管理

モバイルフィールドサービス管理は、CRMをはじめとした各種システムとモバイルを接続し、フィールドサービスの業務効率化、対応品質向上を目指すソリューションです。カスタマーサポートで受けた問い合わせを、現地対応によって解決する例は少なくありません。このとき、顧客に対して安定した修理・保守サービスを円滑に提供できれば、顧客満足の向上や顧客エンゲージメントの強化につながることから、フィールドサービスの重要性が見直されています。製品やサービスに何か不具合があったとしても、フィールドサービスによって短時間に修正されれば、顧客はパフォーマンスを落とすことなくビジネスを継続できます。つまり、顧客企業に対し、「サービスの安定性」や「企業ブランドの向上」といったメリットを提供できるわけです。


このことから、フィールドサービス自体を「価値」と定めたビジネスモデルを展開する企業が増加していくと考えられます。これは、「モノ型ビジネス」から「コト型ビジネス」への移行という、昨今のビジネストレンドにも合致した流れといえるでしょう。


ちなみに、弊社パッケージ「インスピーリ」の導入事例でも、CRM上の受付システムとモバイルシステムを連携させ、コールセンター及び現場外注業者の業務効率化を達成した事例があります。(※3)

2020年は既存技術の進化に注目

本記事では、顧客接点領域のテクノロジーについて、弊社取り組み事例を交えながら紹介してきました。2020年はCDPやチャットボットといった既存技術の精度が向上し、高機能化していくと予想されます。リテンションモデルビジネスが一般化するにつれ、CRMを中心とした顧客接点領域の強化は、ますます重要さを増していくでしょう。複数のITソリューションを理解し、適切な選定・導入を行いたいところです。「どのソリューションを導入すべきかわからない」という疑問がありましたら、お気軽にお問合せください。

参考:
※1:IDC Japanによる国内CRMアプリケーション市場の調査結果より
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ45356819

※2:NEC 次のステージへ向かう顧客データの未来 ~欧米におけるCDP利用の最新動向~ https://wisdom.nec.com/ja/business/2018120401/index.html

※3:システム統合を実現するCRM~業務システム再構築の成功事例
https://solution.virtualex.co.jp/2019/07/inspirx-case.html

執筆者紹介

執行役員
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長
森田 智史(もりた さとし)
2013年に中途で入社。前職より、CRM関連に限らず、新規事業策定・戦略立案案件や、システム構築案件など、 幅広いテーマのコンサルティング案件に従事。 2017年から現職。現在は、コンサルティング案件全般を所管すると共に、 自社デジタルマーケティング領域の事業拡大の他、RPAソリューション等新規事業開発にも従事。2018年6月に出版した『カスタマーサクセス ー サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の訳者であり、カスタマーサクセスに関するコンサルティングや講演なども行っている。

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