IT技術を活用したコンタクトセンター再構築のためのフレームワークとは

IT技術を活用したコンタクトセンター再構築のためのフレームワークとは1_tobira.jpgサブスクリプション型ビジネスの台頭により、これまで以上にコンタクトセンターへの期待が高まっています。しかし、内外の環境変化を吸収しきれないことや、想定外の「落とし穴」によるプロジェクトの行き詰まりにより、コンタクトセンター強化が暗礁に乗り上げるケースも珍しくないようです。実際に弊社でも、AI・チャットボット・音声認識といった先端技術を、どのようにコンタクトセンター強化へつなげるべきかという問い合わせを受ける機会が増加しています。


コンタクトセンターに限らず、ITソリューション導入プロジェクトは、単純な技術力で成否が決まるわけではありません。導入プロジェクトを担うベンダーが採用するフレームワークや、クライアント企業との協力体制が色濃く反映されるからです。


そこで本稿では、「コンタクトセンターを取り巻く近年の環境変化」「技術活用施策の進め方と落とし穴」などに言及しながら、バーチャレクス・コンサルティングの導入支援事例を紹介していきます。

コンタクトセンターを取り巻く"変化"とは?

コンタクトセンターを取り巻く環境は刻一刻と変化しており、その変化に対応できる環境づくりが求められています。さらに、先端技術(AI、チャットボット、音声認識)などの進化・普及は目覚ましいものがあり、環境変化を考慮した先端技術の導入についてご相談・ご支援を承るケースが増えています。


そこで、まずは「コンタクトセンターを取り巻く環境変化」や「技術活用時の進め方」などを、弊社の考え方を交えながら紹介いたします。

●コンタクトセンターを取り巻く4つの環境変化

2019年現在、コンタクトセンターは、以下4つの環境変化の波にさらされていると言えます。


コンタクトセンターを取り巻く4つの環境変化.jpg・外的環境の変化(顧客側)...コミュニケーションの多様化、サービスへの期待値向上、訪日外国人の増加

・外的環境の変化(運用側)...採用難の進行、業務の煩雑化(難化)、問合せ量の増加

・技術環境の変化...IT技術の革新(AI、音声認識、チャットボットなど)


これら4つの環境変化の中で、コンタクトセンターには「サービス強化」「生産性向上」というミッションの達成を、従前よりもさらに強く・双方両立する形で課せられるようになりました。この2つのミッションを達成するため、適切なソリューションを、適切なプロセスで導入することによる、コンタクトセンター再構築が求められているのです。


コンタクトセンター再構築は、どの企業にとっても決して小さなプロジェクトではありません。場合によっては、基幹システムの入れ替えやバージョンアップに比肩するような、大規模プロジェクトになる可能性もあります。大規模なITソリューション導入では、プロジェクトの進め方や、適用するフレームワークの内容が、その成否を大きく左右します。そこで、まずはITソリューション導入における「典型的な進め方、落とし穴」について知っておく必要があるでしょう。

IT導入プロジェクトの進め方と落とし穴

一般的なITソリューションの導入では、次のようなステップでプロジェクトを進めていきます。それぞれの概要を、各ステップで陥りがちな落とし穴と共に確認していきましょう。


IT導入プロジェクトの進め方と落とし穴.jpg

1.技術調査

概要:

そもそも市場にどういった技術・製品・ソリューションがあるかどうかの調査を行います。

2.ベンダー選定

概要:

技術調査の結果を受け、必要な技術・製品・ソリューションを保持するベンダーを洗い出します。また、各ベンダーから製品紹介/デモ/概算見積もりをもらいながら、ベンダーを選定します。


落とし穴:

このフェーズで陥りがちな落とし穴は、「自社に適したソリューションの判断がつかない」というものです。ベンダー各社がいずれも自社製品の強みを訴えてくる中で、「そもそも自社/顧客が目指すあるべき姿は何か」「現状からあるべき姿の実現を目指すためには何が必要か(=課題は何か)」をしっかりと把握した上で、ベンダーの営業トークに振り回されるのではなく、自社/顧客がイニシアチブを取った形でベンダー/ソリューションの選定を行っていかないと、その後のフェーズを圧迫してしまうでしょう。

3.計画/企画書策定

概要:

選定済みの技術・製品・ソリューションを用いた具体的な施策を検討します。また、プロジェクトとして計画書や企画書に取りまとめ、予算確保に向けた社内承認作業なども進めます。


落とし穴:

計画書や企画書の内容を具現化するには、まず予算の確保が必要です。

しかし、上申する際に施策意義や費用対効果を明確にできないと、経営層の承認が得られず、予算確保が難しくなってしまいます。


結果として、「稟議が通らないことで施策(設計・開発)に着手できない」という問題が生じがちです。

4.システム設計

概要:

ベンダーの対応可能な範囲にて、機能要件/非機能要件定義、外部設計/内部設計を行います。


落とし穴:

システム設計では「ベンダーが保有する技術・機能に縛られるあまり、網羅的な要件定義が難航する」という問題が生じます。自社/顧客のセンターがあるべき姿を実現するために本来は必要であるはずなのに、ゴールイメージが明確化/共有化されていないため、ベンダーの提案する通常オプション範囲から逸脱した要件に関しては具備対象から漏れてしまう、ということは往々にして起こりがちであり、そういった事態が起こると、後続のフェーズ(構築、運用)に大きな負担をかけ、結果的にコスト肥大・品質低下を招く原因になります。

5.環境構築/設定

概要:

端末へのインストールや各種設定、インフラ構築など利用に向けた環境構築を推進します。


落とし穴:

このフェーズでは「設定作業の中で要件の漏れやズレが発見され、開発(構築)が滞る」という問題が発生しがちです。場合によっては、追加改修機能について再び要件定義作業が必要になる可能性もあります。プロジェクト自体がロールバックしてしまうため、いわゆる「デスマーチ」状態に陥る遠因にもなります。前段の要件定義フェーズにおいて、可能な限り要件漏れ・ズレを防ぐことが重要です。

6.運用

概要:

システム・ソリューション運用担当者/ユーザー向けに、トレーニングを実施します。トレーニング終了後は、実運用を開始します。


落とし穴:

トレーニングや運用初期においては、「実装した機能が、実際には使い勝手が悪く(もしくは需要に合っていない)、使われる可能性が低い」という課題が発生しがちです。これは現場の声を十分に吸い上げていないことが原因といえるでしょう。開発・構築費用の無駄を防ぐためにも、運用前のフェーズから現場の声を十分に反映させる必要があります。


以上、一般的なITソリューション導入プロジェクトの流れと、それぞれのフェーズで陥りがちな落とし穴について解説しました。こういった落とし穴でつまずいてしまうと、プロジェクトの進行が遅れ、開発・構築コストが嵩んでしまいます。また、新システムへの移行期間が延びることで業務が遅滞したり、現場の負荷が高まったりと、コスト以外の部分でも問題が発生するかもしれません。

バーチャレクス・コンサルティングのIT導入フレームワーク

当社では、こういった落とし穴を回避するため、独自のフレームワークを採用しています。ポイントは大きく以下3つです。


バーチャレクス・コンサルティングのIT導入フレームワーク.jpg

ポイント1:「現状把握/目標設定」の徹底

まず、技術調査と計画/企画書策定の間に「現状把握と目標設定」を置きます。


目的:

企画段階で施策イメージを持ち、効果を最大化するための土台を作る


実施する作業:

・現状の業務内容/呼量/KPI/コスト等の分析を通じて定量的に施策の有効性/適正性を確認する。

・現場の課題感やお客様の声をヒアリング/収集し、定性的に施策の実現性/意義を確認する。

・上記をもとに、検討中の施策を当てはめる場所、期待できる効果、施策の妥当性などを確認した上で、企画チームとしての明確な目標設定およびその共有を行う。


目指す状態:

・定量/定性データを基にし、自信を持てる企画を策定する

・現状把握/目標設定を通じて、具体的な施策イメージを持つ

ポイント2:「効果測定/課題把握」と「チューニング」の実施

また、実際の運用フェーズでは、「効果測定/課題把握」と「チューニング」をサイクルさせます。


目的:

お客様視点/現場視点での最適解を模索し続ける


実施する作業:

・目的に沿ったKPI設定と効果測定を通じて、定量的に利用状況などを把握し、課題を一覧化する。

・現場やお客様の声を集約し、定性的な不満など含めて課題を一覧化する。

・上記をもとに、サービス、機能追加、運用フロー改善、システム改修といった課題解決に向けた企画/立案を継続的に行う。また、効果の最大化に向けて対策を講じ続ける。


目指す状態:

・施策の効果や状況を追いながら、サービス・運用などのチューニングが継続的に行えている

・上記のタスクが企画チームから現場に落とし込まれており、次なる一手を打つための準備を現場主体で進められる

ポイント3:「業務準備」の徹底

3つめのポイントは「業務準備の徹底」です。


目的:

(並行して行うシステム準備と併せ)ハード/ソフト両面において、CS向上/生産性向上に向けた仕組みをつくる


実施する作業:

・管理業務やオペレーション業務はもちろんのこと、その他の既存業務に対しても、ソリューション導入の効果最大化のための運用ルール/フロー、および、それらを実現するための体制を整備する。

・円滑で効果的なオペレーションを実現するために必要なドキュメント/フォーマット(マニュアル、想定問答集、報告書、課題管理表など)を事前に準備する。

・上記を実行する過程で、運用目線およびお客様目線での機能要件/非機能要件をまとめ、システム設計に反映させる。


目指す状態:

・現場の負荷を軽減できるオペレーションが構築できている

・効果測定/課題把握/チューニングにつながるオペレーションフロー/体制の構築ができている

・現場からシステムに対する要望をしっかりと収集できている

まとめ

本稿では、ITソリューション導入の一般的な進め方と、各フェーズで陥りがちな落とし穴を紹介するとともに、これらを防止する弊社独自のフレームワークを解説してきました。


日本のITソリューション導入の現場では、コンサルティングとシステム開発・構築、運用部門が分離しているというケースが珍しくありません。こういった「役割分担」が、本来解決すべき課題や本当に求められている機能を見失ってしまう原因になることもあります。


バーチャレクス・コンサルティングでは、コンサルティングから開発・構築・運用までを一気通貫で行える強みがあり、ITソリューション導入時の弊害を最小限に食い止めることが可能です。ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。


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執筆者紹介

オペレーションコンサルティング部
栗原 侑矢(くりはら ゆうや)
新卒で入社以降、大手鉄道会社・大手医療関連サービス提供会社・大手家電メーカー会社をクライアントに、「全社的顧客満足度向上に向けた計画策定および施策推進」「コンタクトセンター再構築に向けた現状分析/課題把握/ロードマップ具体化」「コンタクトセンターIT化を目指す上でのソリューション導入支援」等をテーマとしたコンサルティングプロジェクトに従事。現在は西日本エリアの事業強化に伴い、関東・関西両地区でのクライアント支援に携わっている。

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