サブスクリプションビジネスとカスタマーサクセス~新たなビジネストレンドの基礎知識

subscription.jpg近年、さまざまな業界において盛り上がりを見せる「サブスクリプションビジネス」。 「所有」から「利用」へとビジネストレンドが移り変わっていることを、如実に感じさせます。今まさに私たちは「モノ型ビジネス」から「サブスクリプションビジネス」への転換期の中にいるわけです。そこで本稿では、サブスクリプションビジネスの大枠と、それを支えるカスタマーサクセスについての基礎について、事例を交えながら解説していきます。


1.サブスクリプションビジネスとは?

サブスクリプションビジネスは、「継続課金型ビジネス」や「課金提供型ビジネス」とも呼ばれます。つまり、消費者に対してモノやサービスを切り売りするのではなく、利用期間や頻度・量に応じて対価を受け取るビジネスモデルです。

○サブスクリプションビジネスの特徴
・モノやサービスの利用期間、量などに応じて対価を支払ってもらう
・製品やサービスの売り切りではなく、継続利用が前提となる
・既存契約に新規契約を積み上げる「ストック型ビジネス」
・顧客を起点としたオムニチャネルかつ双方向なビジネス
・中長期的に顧客と良好な関係(顧客接点)を構築できるかが成功の鍵を握る

ビジネスモデルとしては新しいものではなく、音楽や映画などデジタルコンテンツの世界では、当たり前のように行われてきたモデルです。しかし、「非デジタルなモノ型ビジネス」の分野でも、サブスクリプションビジネスが拡がりを見せています。ではなぜ今、サブスクリプションビジネスなのでしょうか。

2.サブスクリプションビジネスが注目される理由

サブスクリプションビジネスが注目される背景には、以下3つの要因があると考えられます。
・企業を取り巻く環境の変化
・「所有から利用へ」消費者意識の変化
・継続的かつ安定的に収益を生み出すビジネスモデルへの要請

それぞれ具体的に見ていきましょう。

○企業を取り巻く環境の変化
近年、日本の企業を取り巻く環境は急激に変化しています。

1.人口減少社会への突入と販売機会の減少
2.「買い手」が減ったことで相対的に消費者が優位になった
3.政府主導のSociety5.0に代表される"高付加価値かつ高品質な社会"への要請
4.AIやIoTなど先端技術発展による"消費者ニーズと利用状況把握"の重要性増

このように社会構造の変化、技術革新によって、かつての大量生産・大量消費モデルは既に限界を迎えていると言えます。また、消費者側も、個別に期間・量などを自由に選択できる「カスタマイズ性」を評価する傾向が強まっていることも見逃せません。

○「所有から利用へ」消費者意識の変化
「所有から利用へ」消費者意識の変化 高品質な製品・サービスが生活の中に行き渡っている現代社会では、「モノ・サービスの購入」より、「利用した体験」に価値を見出す傾向が強まっています。言い換えれば「モノの消費」から「コトの消費」に価値を見出す人が増えているのです。身近な例で言えば、「映画DVDを購入」して所有欲を満たすよりも、「見たい映画を好きな時に好きな場所で見る」という体験を重視する消費者が増えています。これは昨今の動画配信サービスの人気ぶりからも明らかだといえるでしょう。

○継続的かつ安定的に収益を生み出すビジネスモデルへの要請
モノが売れにくい時代になり「常に買い手を見つけ続けること」の難易度は上がり続けています。企業が安定して収益を上げ続けるためには「お得意様」と長期的に良好な関係を構築し、出来るだけ長く・絶え間なく対価を支払ってもらう必要があるわけです。

3.サブスクリプションビジネスの具体例

では次に、サブスクリプションビジネスの具体的な事例について紹介します。身近な成功例としては、動画・音楽・ゲームコンテンツのオンライン配信サービスが挙げられるでしょう。ただし、前述のとおり「非デジタルなモノ型ビジネス」にも拡大している点に注目です。

○Amazon「動画・音楽・物品購入 Amazon Prime」
世界的に数千万人規模で会員数を増加させている「Amazon Prime」は、サブスクリプションビジネスの代名詞的な存在です。会員向け特典である「Prime Video」の限定配信の番組が制作されるなど、その人気ぶりが話題になることが増えましたよね。実際にAmazon社の2018年決算によると、定期購入売上(「Amazonプライム」の会員費など)は141億6700万ドルで前年比45.7%の売上増を達成しています。

○BMW「自動車定額乗り換えサービス」
ドイツの世界的自動車メーカー「BMW」が提供しているサブスクリプションサービスです。毎月約12万円で、規定のラインナップから好きな車を利用できます。月々の支払額にはメンテナンス諸費用、保険、ロードサービスなどが含まれており、乗り換え台数の制限もありません。日本では未提供であるものの、欧州や米国で人気を博しています。「購入」「リース」に続く、「新たな車の所有形態」として着実に浸透しているようです。

○パナソニック「テレビ買い換えサービス 安心バリュープラン」
毎月決められた分割金を支払うことで、規定年数経過後に「買換え」もしく「買取」を選択できるサービスです。「常に新しいテレビ」を利用できる点が売りで、契約期間中は修理保証が無料になります。これまで売り切りが当たり前だった家電に、継続課金と中長期的な顧客接点を取り入れた例と言えるでしょう。

○エアークローゼット「月額ファッションレンタル」
毎月一定の利用料を支払うことで「返却期限なしの洋服がいつでも借りられる」ファッションレンタルサービスです。登録時の情報をもとにコーディネートやサイジングが行われ、洋服が到着します。「ファッション」というセンシティブな分野にも、サブスクリプションビジネスが浸透し始めています。

○REARS(リアーズ)「食品ロスの有効活用 Food PASSPORT」
月額料金を支払うことで、毎日1回おまかせ料理が食べられるサービスです。このサービスの特徴は、料理に使われる食材が「食品ロス」につながる過剰在庫であること。企業側の「食品ロス削減」と消費者側の「毎日1回安く食事ができる」というメリットを結び付けています。

このように非デジタルな分野にも、サブスクリプションビジネスが確実に浸透していることがわかります。また、いずれの事例においても「顧客接点」を非常に大切にしており、目先の利益よりも「顧客の不安解消や信頼獲得、成功体験」を重視しています。これは、サブスクリプションビジネス成功のカギを握る「カスタマーサクセス」を意識している証拠といえるでしょう。

4.サブスクリプション型ビジネス成功の鍵「カスタマーサクセス」

サブスクリプション型ビジネスでは、「カスタマーサクセス」をいかに実現するかが重要です。カスタマーサクセスとは、簡単に言えば「顧客の成功をサポートするという概念」を指します。具体的には以下のような要素を持っています。

○カスタマーサクセスの構成要素
・顧客の成功を第一に考え、ビジネスモデルを設計し、行動する
・リアクティブ(受身)で顧客の要望を受け止め、プロアクティブ(能動)でアプローチする
・問題を発生させるまえに顧客の成功に寄与する「攻め」の姿勢

「カスタマーサポート」と混同されることがよくありますが、両者には明確な違いがあります。例えば、カスタマーサポートは「受電率、応答率、顧客満足度」が主なKPI(評価指標)です。一方、カスタマーサクセスは「契約更新率、解約率、顧客満足度、アップ・クロスセル率」などがKPIとなります。もう少し簡単に言うと、カスタマーサポートが「問題の解決」によって価値を提供する一方、カスタマーサクセスは「成功の提供」で価値を創出するのです。

○カスタマーサクセスがもたらす成果
カスタマーサクセスが上手く機能すれば、最終的には「自社に対する好印象・認知が形成され、ビジネスが半自動的に成長する」という好循環を生み出します。しかし、その域に達するまでには、幾多の改善や試行錯誤が必要です。そこでもう少し手前の段階で享受できるメリットに目を向けてみましょう。カスタマーサクセスがもたらす成果には、以下のようなものがあります。

・顧客体験、顧客満足度の向上
・長期優良顧客層=ファン層の形成
・チャーンレート(解約率)の減少と契約更新率の上昇

サブスクリプションビジネスでは、「モノやサービスを売ること」がゴールではなく、「スタート」です。できるだけ長い間、顧客との良好な関係を維持し、顧客の成功を目指して「伴走」するイメージが大切です。顧客に成功体験を提供し、満足度を向上させ、自社のファンになってもらう。この好循環が結果としてチャーンレートを減少させ、末永く製品・サービスを利用してもらう礎になるわけです。

○カスタマーサクセスを実現するツール
ICTの発達により、顧客と企業はさまざまな経路で接点を持てるようになりました。電話や手紙だけではなく、SNSやチャットなどデジタルな接点が増えています。これら多種多様な顧客接点(オムニチャネル)において、いかに顧客に良い体験を提供するかが、カスタマーサクセスの実現には欠かせないのです。具体的には、CTI(コールセンターシステム)やAIチャットボット、これらを組み合わせたコンタクトセンターの構築などが有効だと言えるでしょう。

5.まとめ

本稿では、サブスクリプションビジネスとカスタマーサクセスの基礎知識について紹介しました。「モノが売れない時代」といわれる現代において、サブスクリプションビジネスが担う役割はますます大きくなっています。また、カスタマーサクセスは、国内ではそれほど認知されていないものの、今後はビジネスの中核的な考え方のひとつになるでしょう。この機会に、ぜひサブスクリプションビジネスとカスタマーサクセスについての知識を磨いてみてはいかがでしょうか。

本件に関して何かございましたらお気軽にお問い合わせください。

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執筆者紹介

取締役 常務執行役員
奥村 祥太郎(おくむら しょうたろう)
アクセンチュア株式会社等を経て、2014年当社入社。経営企画室長、IT事業部門長などを歴任し、2019年より現職。現在は、コンサルティング事業、IT事業および、経営企画、新規ソリューション開発、マーケティング・広報などを担当するとともに、カスタマーサクセスの啓蒙を推進。

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