オムニチャネル対応に求められる要素とは?

CRMを中心とした「顧客接点領域」における2018年のテクノロジートレンドと2019年の展望

最近、コンタクトセンターを運営しているクライアント様から、CTIやCRMの「オムニチャネル」トレンドや対応状況について聞かれる機会が増えてきた。「オムニチャネル」についてはあらゆる場面で定義されており、改めてここでは控えるものの、コンタクトセンター運営企業の目線で見ると、今の業務がどう影響するかが気にするポイントの大半を占めているようだ。


SNSやSMSなど、電話やメール以外のチャネルはスマートフォンの普及に伴い、コミュニケーション手段として大きく拡大して問い合わせチャネルの勢力図を変えつつある。一世代前、エンドユーザーからの問い合わせを受けるコンタクトセンターでは、新しいチャネルの窓口を開設する度に、チャネル専用のツールとコミュニケーターを用意してきた。その後「マルチチャネル」対応のツールが登場し、コミュニケーターが複数のチャネルに対応するスキルを身につけてきた。電話やメール、FAXという従来チャネルはそれでよかったが、LINEを始めとするチャットチャネルは多くのツールや機能が存在し、全てのツールを準備することは到底難しく、またコミュニケーターも新しいスキルを身につけなければならなくなってきたのだ。


またどんなチャネルでも、1人の顧客とコミュニケーションを取り、対応していくのがコンタクトセンターシステムでいう「オムニチャネル」対応だが、たとえ顧客を特定するユニークキー(メールアドレス、LINEIDなど)を連携してチャネルを跨いだコミュニケーションができたとしても、それらの対応履歴を統合管理するシステムがないと「LINEではこう回答していたのに話が違う」などのクレームが発生するため、質の高いセンター業務運営は難しい。


近年はコミュニケーターの採用難や業務効率化といった流れもあり、AIやBot、バーチャルオペレータなどの自動化技術が広がりつつある。これらは前述の課題解決に貢献してくれるが、その分ロボットの対応力が試される。チャットボットを導入してみたものの対応力がさほどよくなく、結果的には有人対応の増加を引き起こしてしまい、運営が頓挫してしまったクライアント事例も実際にある。このような場合においてはチャットボットの性能云々というより、回答候補やシナリオの準備が不十分だった事が失敗要因であったケースが多い。それらの整備をどう行うかが悩ましいところだが、それ自体は目新しい課題ではなく、実はコンタクトセンターにおける昔からの課題である「FAQの整備」と対応内容は酷似している。これまでのベースであった、エンドユーザの問い合わせ内容を咀嚼しながら振る舞い、属人的な対応が可能な人間とは違い、ロボットに対しては正確に伝える必要があることはいうまでもない。そして顧客からするとロボットも企業の窓口であり、コミュニケーターからするとある意味同僚でもあるため、その対応履歴は前述と同じように「オムニチャネル」対応として不可欠なものとなる。


様々な製品やソリューションが「オムニチャネル」対応を謳っており、素晴らしい技術を有するものも実際にはたくさんある。ただそれは一部の「チャネル」だけだったり、一部の機能だったりするケースも少なくなく、コンタクトセンターとして「オムニチャネル」対応しているとは言い難い。


業種や、目指すコンタクトセンター像によって「オムニチャネル」の対応範囲やレベルは変わるため一概には言えないが、少なくとも現場の混乱を防ぐためには、あらゆる顧客接点を統合管理するデータベースと、統一したルールをもとに利用するコンタクトセンターの運営力が重要な要素である。その上で、FAQやシナリオ、エスカレーションルールの定義などを(できればロボットが把握できるように)整備し、コミュニケーターの役割定義とそれぞれのスキルアップをすれば、対応品質を確保するための基盤ができあがるのではないか。そして最後に、それぞれの製品やソリューションにどういう特徴があるかを見極め、運営に即したものを採用していく事が結果的には近道と考える。


技術の進歩は著しく、これからも新しい製品やソリューションが次々と登場してくるだろう。FAQ最新化などの運営工数も減らせるようなソリューションの出現にも期待したい。しかしそればかりではなく、完全に履歴統合されたシステムと、役割が明確化された業務運営両面の運営基盤をしっかり作ることではじめて、過去のノウハウを活かした成長性と継続性のある「オムニチャンネル」センターが目指せるのではないだろうか。


「センターのオムニチャネル化」に関するご相談、センター開設や運営に関するお悩みなどございましたら、当社までお気軽にお問い合わせ下さい。


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執筆者紹介

バーチャレクス・コンサルティング株式会社
常務執行役員
クライアントパートナリング部 部長
江本 研(えもと けん)
2001年よりカード会社や生保などの金融、メーカー、通販業界等の多数のコンタクトセンターシステム導入プロジェクトにコンサルティングやプロジェクトマネージャーとして従事。コンタクトセンター業務改革支援とシステム構築マネジメント経験を活かした、顧客の課題に対する的確な提案力が強み。

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