カスタマーサクセスに関する5つの誤解 -前編-

RPA導入における心得とプロセスのコツ~UiPath導入現場から~前編カスタマーサクセスは、もともと自社の提供するサービスを継続的に改善・高度化することで顧客の期待にこたえ続け、それによって顧客のビジネスを成功させ、ひいては自社の成功にも寄与するものとされてきました。アメリカに端を発したこのカスタマーサクセスの概念は、近年日本でも徐々に浸透してきており、積極的に導入する企業も増えつつあります。


「カスタマーサクセス」というワードのGoogle検索ヒット数は、2018年3月の時点では114,000件だったのに対し、2018年12月の時点では702,000件と大幅な増加を見せています。そのため、カスタマーサクセスはこの一年弱で注目度が急速に高まっているテーマであると言えます。しかし、この概念が浸透するに伴い、いくつかの誤解も生じはじめています。誤解されやすいポイントは、主に以下の5つです。


① カスタマーサクセスは、サブスクリプションビジネス以外には関係ない?
② カスタマーサクセスは、ポストセールスフェーズだけ考えればいい?
③ カスタマーサクセスは、専用のツールがあって初めて開始できる?
④ カスタマーサクセスは、全く新しくゼロから始めなければならない?
⑤ カスタマーサクセスは、自社内で完結すべき?


本記事では、前編として①~③について解説します。

誤解①カスタマーサクセスは、サブスクリプションビジネス以外には関係ない?

まず、「カスタマーサクセスはサブスクリプションビジネスだけに適用できるものか」という疑問をよく耳にしますが、答えは「No」であると言えます。

いわゆる「売り切り型」のビジネスモデルでは、売ることが目的となっているため、売れた後の製品やサービスの利用状況を追跡し、データを蓄積することは難しいかもしれません。しかし、ビジネスモデルの種類を問わずリピーターの獲得は企業を存続していく上で非常に重要な要素となります。そのため、カスタマーサクセスは今、サブスクリプションのみならずさまざまな事業展開に応用されてきています。

たとえば、新規営業重視型の企業であれば、既存顧客のリテンションのために新規部署を立ち上げるなど、顧客との向き合い方をひとつ見直すだけでも印象が良くなり、リピーターや見込み客の増加につながります。そうして顧客をつなぎとめ、信頼関係を構築することによってアップセルやクロスセルといった成果を上げられるのです。

どのような事業を展開している企業でも、カスタマーファーストであらゆるサービスや業務、システムを設計し直してみることが必要です。その結果、今まで売り切り型のビジネスモデルだったものがサブスクリプションに移行する可能性も出てくるかもしれません。

誤解②カスタマーサクセスは、ポストセールスフェーズだけ考えればいい?

カスタマーサクセスは、顧客が自社製品やサービスを購入した後の"ポストセールス"にしか適用できないのかと言えば、これも「No」です。なぜなら、カスタマーサクセスの原則には、「正しい顧客に販売しよう」というものがあり、その原則を守るためにはポストセールスのみならずプリセールスの段階から準備をしておく必要があるからです。

カスタマーサクセスへの旅は、顧客とのファーストコンタクトから始まっているといっても過言ではありません。その中心的役割を果たすのがカスタマーサクセスマネージャー(CSM)です。これを営業部門の直下に置き、営業部門やマーケティング部門、カスタマーサポート部門、R&D部門などと連携しながら、見込み客に最適なカスタマージャーニーやCXを経験してもらう必要があります。

正しい顧客を獲得すれば、自社のビジョンやコンテンツ、従業員や提携会社、顧客のオンボーディングを磨きあげて、自社の事業を正しい方向に進ませてくれます。そのような顧客を獲得するには、早めにリスクを表面化できる仕組みとプロセスを構築することが前提となります。仕組みづくりをスムーズに行うには、前もって社内に「正しい顧客獲得に取り組む」というメッセージを発信し続けることが大切です。

そういった意味では、カスタマーサクセスの成功は、プリセールスの段階からいかに社内調整を含め入念に準備をしておくかにかかっています。正しい顧客に最適なCXを提供しジャーニーを伴走し続けられるよう、アクイジション(新規顧客の獲得)を司るマーケティング部門や営業部門とも認識をすり合わせ、共有するべきでしょう。

誤解③カスタマーサクセスは、専用のツールがあって初めて開始できる?

カスタマーサクセスは顧客データを構築したり・顧客行動を分析したりする専用のツールが必要であるかのような認識をされることもありますが、これも「No」です。

顧客の購入価格や頻度に合わせて、顧客の接し方を変えることが必要です。購入価格や頻度高いロイヤルカスタマーに対しては、人的コストをかけてでも直接会うなどのコミュニケーションを取ることが顧客満足度を維持するためにも大切でしょう。しかし、購入価格や頻度があまり高くない客層や見込み客層に対しては、かけられるコストや人的資源が限られているため、テクノロジーにどうしても頼らざるをえない部分もあります。そのために、MAやCRM、CSツール、BIといったツールが豊富にあれば必要最低限の手間やコストだけでテクノロジーを駆使して顧客とコミュニケーションを取る「テックタッチ」がより一層しやすくなるといえるでしょう。

ただ、そのような高度なテクノロジーを使ったツールを導入する余裕のない企業や、それらのツールを使いこなせるだけの技量を持つスタッフが在籍していない企業も少なからず存在します。その場合、テックタッチ以外にもやれることは数多くあります。

まずは「全社を挙げてカスタマーサクセスに取り組む」という決意を社内に打ち出し、個々のスタッフがカスタマーサクセスの何たるかを理解し、日々の行動に反映できるよう、オンボードさせることが先決です。そのためには、営業部門・マーケティング部門・カスタマーサポート部門・R&D部門などの各部門が、顧客のビジネスの成功をイメージし、それぞれ施策を検討することが大切です。

特別なツールがなくとも、たとえば、契約開始/製品納品してから一度もフォローしていないお客様がいるならそのフォローを定期的に行う、イベントや新製品の情報など有益な情報をメール配信していないならその配信から始める、Webサイトの更新が滞っているならそれを更新して掲載している情報を最新化する、といったことはすぐに始めることができるでしょう。

カスタマーサクセスに有用なツール(以下「CSツール」)には、顧客の行動を分析・観察するためのソフトウェアであるGainsight(ゲインサイト)や、カスタマージャーニーのそれぞれの段階に生じる問題にフォーカスしながら企業の収益成長を促すためのソフトウェアであるTotango(トタンゴ)等があります。それらのCSツールはないものの、上記のような顧客のフォローメール配信などを効率的に行うためにMAやCRMなどのツールを導入している場合は、それを擬似CSツールとして活用してみるといった方法があります。

それらを駆使して、カスタマーサクセスに必要な顧客のセグメントを分け、その中で社内にあるテクノロジーを活用して対応すると決めた顧客に対してはメール等でフォローし、リテンションやリアクションを見ることができます。また、アップセル・クロスセルを狙った新商品・サービスなどの情報を掲載したリコメンドメール等を配信するなどの方法も考えられるでしょう。それらのテクノロジーは、ハイタッチ層やロータッチ層への対応に一部利用することも可能です。

カスタマーサクセスにいきなり重点的にコミットするのではなく、ひとまずはライトに始めたいといった場合に、ツールの導入から入るのは少々ナンセンスと言えます。CSに使える既存のツールが多少でもあればその範囲で始めると良いでしょうし、ツールが全くない場合でもできる範囲で、顧客のエンゲージメントを高める施策を考えることから始めてみてはいかがでしょうか。もし、フォローメールなどをすでに終えている場合は、既存ツールに一定の工夫を加えてその作業を効率化するという方法も考えられます。


カスタマーサクセスの考え方は、決してサブスクリプション型ビジネスだけに適用できるものではありません。また、導入するのに高価なツールを使用することも必須ではありません。カスタマーサクセスの本来の目的は、顧客(カスタマー)の成功です。「何を売るか」という発想から、「自分たちは何者なのか」「一体誰にどういった価値を提供できるのか(求められているのか)」「そしてそれが常に充足できているのか」という発想へ転換する。製品や自社ではなく、きちんと「顧客」を中心に据えることが必須なのです。これが、「カスタマーサクセス」というコンセプトが、各企業に突きつけている命題の本質といえるのではないでしょうか。


(後編につづく)


バーチャレクス・コンサルティングでは、企業様のカスタマーサクセス導入に伴うコンサルティングやワークショップサービスをご提供しております。詳細または資料ご希望の方はこちらからお問い合わせ下さい。

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執筆者紹介
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部
部長 森田 智史(もりた さとし)

2013年に中途で入社。
前職より、CRM関連に限らず、新規事業策定・戦略立案案件や、システム構築案件など、 幅広いテーマのコンサルティング案件に従事。 2017年から現職。現在は、コンサルティング案件全般を所管すると共に、 自社デジタルマーケティング領域の事業拡大の他、RPAソリューション等新規事業開発にも従事。

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