カスタマーサクセス理論から考えるRPA導入効果拡大のためのポイント -後編-

atlas-continent-country-269850.jpg前編中編に引き続き、最終編となる今回は、RPAがよりお客様のビジネスの成功に貢献していくために、弊社が必要だと考える最後のポイントとまとめをご紹介する。

キーワード

  1. CSM(Customer Success Manager:カスタマーサクセスマネージャー)
  2. タッチモデル
  3. 大成功
  4. タイムトゥバリュー
  5. カスタマージャーニー

本編では最後のキーワード、5の「カスタマージャーニー」について紹介していく。


【キーワード5】カスタマージャーニー

前編の【キーワード3】で触れたとおり、RPA導入の目的は、導入先の企業内でロボットが内製化され、労働力の一部として自由に活用できる状態を作ることだ。そして、その状態を構築できたあとも、当然より効果的に活用するための取り組みは続いていく。このような背景から、RPAはプロジェクトではなく旅(ジャーニー)であると言われることがある。カスタマーサクセスの概念では、企業は顧客の成功のための旅路を描き、その旅路を顧客と一緒に伴走することが重要とされており、その旅路をカスタマージャーニーと言っている。

RPA推進を行うチームが、所属する会社、RPA利用部署の成功に向けた旅路(カスタマージャーニー)を描き、その中でRPAを成功に貢献する存在にさせるためにはどのように考えればよいだろうか。そのヒントはデジタルレイバーという表現だと考える。つまり、ロボットは利用部署に新しく配属される(形を変えた)労働者であり、配属後(導入作業が終わったあと)から、そのメンバーをいかに組織の戦力にしていくかの旅が始まる。そういった意味で、それは人間の新入社員に早期に活躍してもらうためにはどうすればよいかを考えることと同義だ(一緒にするなという若手社員の意見も聞こえてきそうだが)。新入社員は、もちろん企業によってキャリアアップのモデルは違うものの、業務を覚え、同僚にその個性、ケイパビリティを認知してもらい、任せられる業務が増え、社内外での知名度が上がり、更に仕事にアサインされていく。最初は研修講師に始まり、OJTでのスーパーバイザー、先輩・同僚、上司、そしてお客様からでさえも必要なスキルを学び取り、新入社員は一線で活躍するビジネスパーソンになっていく。ロボットも同様に、自社の1つの戦力として活躍してもらうには、常に周囲の人間によるサポートが不可欠であると考えることができるだろう。それが、内製化の取り組みが重要とされる所以である。

利用部署内での内製化を志向する場合でも、部署の状況によっては、リソースやスキル面で実現が難しい場合が出てくるだろう。部署内でたくさんのロボットが稼働し始めれば(状況によっては初期段階からかもしれないが)、いわゆる野良ロボットの誕生を阻止するために、どのような能力を持ったロボットがどこに配置されているかを把握しなければならない。ロボットが常に有効な戦力となるよう稼働状況を確認し、品質も管理していかなければならないし、新しい技術に合った業務も教えていかなければならない。しかし、内製化されたチームのみで、将来に渡ってそれらの対応を継続的に行っていくことは多くの部署にとって現実的とは言えないだろう。つまり、内製化が成されたあと、あるいは内製化を志向するプロセスの中でも、部署全体、ひいては企業全体にRPAの利活用を定着させるには、そのミッションと機能を有した組織・チーム・人材が必要なのである。それは、CoE (Center Of Excellence)と呼ばれる。1章でのCSMを支援、統制する機能でもあり、規模によってはイコールとなることもある。

CoEは、RPAをカスタマージャーニーの中でより効果的な戦力とするために重要な機能であり、RPAのリーディングカンパニーであるUiPath社もCoEを設置することを推奨している。UiPath社もまた、RPAをプロジェクトではなくジャーニーと位置づけ、クライアントの成功のために伴走していくことを提唱している企業の1つだ。

なお、CoEには、以下の機能が求められる。
・ロボット・シナリオ(デジタルレイバー)の統制・管理
・開発生産性、品質の向上
・ベストプラクティス・ナレッジ等、暗黙知化しがちな知的財産を形式知化のうえ一元的に管理・周知徹底
・RPAに関する定常的情報収集を通した習熟度の向上
・ロボット・シナリオ(デジタルレイバー)の開発・利活用状況の可視化・分析・インサイト提示
・より高次元でのRPA活用に向けた準備、推進

このようにRPAを導入する部署、企業が、ロボットと共に事業目標に向かう(カスタマー)ジャーニーを歩んでいくためには、ロボットの面倒を見る仕組みを内製化すること、そしてより効果的に活用していくためのCoEを設置することが望ましい。そしてそれは重要なポイントの1つであるのだ。

おわりに

我々バーチャレクス・コンサルティングではカスタマーサクセスの概念を基に、クライアント企業様に寄り添い、クライアント企業様がゴール(成功)に向かっていくために必要なサポートの在り方を常に考え、日々の業務に取り組んでいる。そして訳者として紹介させていただいているとおり、カスタマーサクセスは今後のビジネスにおいて欠かせない概念であり、あらゆる企業が取り組んでいくべきテーマであると考えている。

本稿ではカスタマーサクセスのキーワードをちりばめて、主にRPAの取り組みを推進する方々が実際にロボットを利用する方々をクライアントと見立てた場合のRPA導入効果拡大のためのポイントを紹介した。これらは、弊社がRPAの導入を検討されている企業様、導入中の企業様のご支援をさせていただく際においても当然根底にあるポイントである。RPAに関わるソリューションは、ツール販売、コンサルティング、エンジニアリング、サポート、トレーニングなど、どのレイヤーであっても常に成功からブレイクダウンしたものでなければならず、目的地に到達するための工程として用意されるべきであり、弊社はその実現に日々取り組んでいる。

下記に「カスタマーサクセス10原則」に沿ったRPA導入における各ポイントをまとめている。本稿の内容が、また弊社の取り組みが、少しでもRPAを伴った貴社成功への旅路の一助となれば幸いである。

カスタマーサクセスの10原則

RPA導入におけるポイント

【原則①】正しい顧客に販売しよう 業務自動化で効果が見込める業務、部署などを見極めた上での導入決定が重要。
【原則②】顧客とベンダーは何もしなければ離れる 利用状況をチェックしながら、定期的なコミュニケーションや、使用方法についてのフォローアップが必須。
【原則③】顧客が期待しているのは大成功だ RPA(=デジタルレイバー)が企業の戦列に加わり、事業課題の解決、目標に寄与していくことが、RPAの取り組みにおける大成功。
【原則④】絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する 管理ツール等の活用による実行ログの集積・分析、アンケートやヒアリング等による導入後の利活用状況の把握、行動予測、ユーザー部門管理が必須。
【原則⑤】ロイヤルティの構築に、もう個人間の関係はいらない 社内各部署をタッチモデルで分類、サポートややり取りの指針を決定。
【原則⑥】本当に拡張可能な差別化要因は製品だ 保守性、拡張性を視野に入れた構造をロボット作成時から考慮、導入後ユーザーからのフィードバックを元に、継続的な改善、技術の深掘り、(習熟度により)高度化の実施。
【原則⑦】タイムトゥバリューの向上のとことん取り組もう 導入後短時間で実感できる効果の提示、集中的なサポートによる導入後のオンボーディング時間の短縮。
【原則⑧】顧客の指標を深く理解する 導入における各ユーザー(部署)のチャーン(離脱)とリテンション(継続利用)の理由及び頻度理解により、拡張または横展開の際の早期定着または問題解決を容易化。
【原則⑨】ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める カスタマーサクセスを行う実行部隊の成熟も重要要素。CSM/CoEが求められる役割を継続的に担っていく中で反復、プロセス標準化が可能になり、さらに成熟すれば定義した指標に基づいた計測と、継続的改善が可能。
【原則⑩】トップダウンかつ全社レベルで取り組む 全社レベルでRPA(=デジタルレイバー)の重要性や必要性、ロボットと共生していくという働き方やそのマインドセットを、共通概念として持ち、取り組むことが重要。

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執筆者紹介

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執筆者紹介:
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部
マネジャー 寺前 祐希(てらまえ ゆうき)

入社以来、通販、社会インフラ業界などの大規模システム導入や、 製造業の新規事業計画プロジェクトなどに従事し、多様なプロジェクト経験を持つ。 その後複数のRPA導入プロジェクトを経て、現在は自社RPA事業の推進を担当。