今脚光を浴びるRPA市場、その情勢と主要ツールを調査

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IoT進展・深化に伴うリスク・問題とその打ち手としてのブロックチェーン

2017年度のRPA市場は、前年比412%(※1)という急成長を遂げ、業務自動化製品市場全体の牽引役といえる状態です。実際に、人手不足対策とコスト削減に取り組む国内企業からも熱い視線を注がれており、導入を希望する声が増えています。一方、どのRPA製品を選定するべきか分からないといった声や、一旦使い始めてみた製品では機能が不十分で想定していた業務が自動化できないといった声もあり、ご自身の企業や業務に合った製品について悩まれている企業が多いように見受けられます。

そこで本記事では、コンサルティング会社としての中立的な視点に立った上で、RPAを取り巻く現状を踏まえながら国内外のメジャー製品8つについて解説していきます。それぞれの製品の特長、強みなどを理解し、業務効率化の勘所となるRPA導入に踏み切る方の参考になれば幸いです。


RPA導入を希望する企業は国内で増加傾向

冒頭でも述べたように、RPAに対する企業の視線は日を追うごとに熱を帯びており、当社でもRPAに関するお問い合わせが増加しています。一説ではRPAを導入した企業のうち、5割以上の業務工数削減を達成した企業は97%以上にのぼるそうです。さらに導入企業の47%が、業務の完全自動化を果たしたというニュースさえあります(※2)。

これまで様々な業務効率化製品が登場しましたが、これほど明確に効果が示された製品は少ないのではないでしょうか。

では、今なぜこれほどまでにRPAが注目されているのかを、簡単におさらいしたいと思います。


1.労働力不足への特効薬

世界でも類を見ない「超高齢社会」に突入している日本では、総人口・労働力人口ともに減少傾向です。特に労働力人口は総人口の減少と高齢化という二重苦を背負わされた結果、2030年には6000万人を割り込むという試算もでています(※3)。また、ここ数年は完全なる「売り手市場」であり、人材の確保が難しい状態でもあります。RPAは、単に「現場の忙しさを改善してくれるロボット」ではなく、企業の人材戦略にも深いかかわりを持っていることがわかります。


2.複雑・高度化するシステムをつなぐハブ

仮想化やクラウドなど、この10年で登場したさまざまな技術トレンドにより、あまりにもツールが増えすぎて、それを管理する人の力が追い付いていないという現状があります。例えば、物理と仮想、オンプレミスとクラウドのように、技術トレンドが混在することで現場の業務負荷が高まってしまうわけです。これらを無理やり「人力」でつなぎ続けるには限界があるため、「ハブ」的な役割を担う存在としてRPAが注目されています。


3.守りから攻めへと~IT投資トレンドの変化

電子情報技術産業協会(JEITA)が2018年1月15日に発表した調査結果によれば、日本企業のIT投資予算は従来の「守り」重視から「攻め」へと転換し始めているのです。ここでいう「守り」とは、主に「業務効率化やコスト削減」への対策としてのIT投資を指し、逆に攻めは「サービス開発強化や新たな技術・サービスの利用」と言い換えることができます。このIT投資予算の変化が、業務効率化を達成しつつ、余剰人員をサービス開発や強化に傾けられるという「攻防一体」の技術であるRPAへの需要を後押ししていると考えられるでしょう。


具体的なツールごとの違いは?国内外メジャー8製品を比較

このようにヒト・システム・カネという3方向からの課題を解決する鍵として注目されていることもあり、国内外のベンダーから一斉にRPAが提供されています。しかし、ベンダー間でどのような違いがあるのかよくわからないという問い合わせも多いため、国内外の主要8製品を比較してみましょう。今回紹介するのは以下の8製品です(ABC順)。

製品名 発祥国 企業名 実行環境 日本語対応
Automation Anywhere 米国 Automation Anywhere社 サーバ型 ×
Biz Robo!/Basic Robo! 日本 RPAテクノロジーズ株式会社 サーバ型
Blue Prism 英国 Blue Prism社 サーバ型 ×
ipaS 日本 株式会社デリバリーコンサルティング デスクトップ型
NICE イスラエル Nice社 サーバ型 ×
Pega Robotic Automation 米国 Pegasystems社 サーバ型 ×
UiPath ルーマニア UiPath社 サーバ&デスクトップ型
(2018年夏予定)
WinActor 日本 NTTアドバンストテクノロジ株式会社 サーバ&デスクトップ型

各ツールの特長

  • Automation Anywhere

米国でRPAツールとしてシェアNo.1を獲得している製品で、請求書発行やメールチェック、Excel手作業に自動化といったバックオフィス業務の自動化が強み。さらに機械学習と自然言語処理技術を活用し、一部の非定型業務の自動化まで可能にしている。高度なセキュリティ基準にも対応し、中央管理型システムによりロボットの一元管理ができる。

  • BizRobo!

国内の導入実績は400社を超え、実績ではNo.1。Webサーバを1台用意すれば複数のロボットを作成・運用できることが強み。Webサーバ上で稼働する統合化された専用ブラウザエンジンの下で、複数のロボットを同時に運用できるため、大規模なWebアプリケーションに適している。

  • Blue Prism

エンタープライズ向けに特化したRPAソリューション。スケーラビリティ、セキュリティ、コンプライアンスを強化する機能を有しており、クラウドやAI機能を組み込んだ導入をサポートする。汎用性に優れ、様々なインターフェースへの連携が可能であるほか、ドラッグ&ドロップを用いた直感的な操作が強み。また、ロボット管理機能として、更新に伴うバージョン及びスケジュールの管理、ユーザー権限の付与などにも対応する。

  • iPas

自社開発のテスト自動化ツールを発展させたRPAツールで、開発経験(コーディング経験)が一切なくても細かな条件分岐や繰り返し処理をセットできる。

画像認識によってターゲット識別を行い、一般的なPC操作の延長で動作シナリオの作成ができるため、非IT部門の担当者でも簡単に業務の効率化が達成できる。

  • NICE

コールセンター業界の業務(顧客メール管理、カスタマーサービスなど)に適したツールで、大規模コールセンターの業務に対応する。オペレーターなど、ユーザーの操作画面の手順に応じながら、必要な情報をリアルタイムにロボットが表示するので、業務の半自動化が実現できる。

また、デスクトップモニタリングという機能により、オペレーターと顧客との対話から音声を認識し、顧客の属性やステータス、購入などのメタデータを自動作成できる。半自動化から全自動化まで柔軟に対応可能。

  • Pega Robotic Automation

BPM(ビジネスプロセス管理ツール)やCRM(顧客関係管理システム)の老舗企業が開発したRPAで、BPMS機能との連携が可能。

  • UiPath

現状のRPAソリューションの中でもひときわ技術力が高く、サーバ・デスクトップ双方で動作する。特に大手金融機関や広告代理店への導入が急増中。画像認識、HTML/CSS構成分析によるオブジェクト認識、OCRエンジンによる文字イメージ認識等、多様かつ高度な認識方法で、webアプリ・デスクトップアプリ・仮想化環境の自動化に対応。

ドラッグ&ドロップを用いた直感的操作でロボットの動作シナリオを変更できる。

「ヒトとロボットの協働」に対応し、システムの規模や自動化の割合に関わらず、柔軟な導入・運用が可能という強みを持っている。さらに、他の海外製品に先駆けて積極的に日本語化を進めており、日本市場への意気込みが感じられる。

  • WinActor

NTTアドバンストテクノロジが開発した国産RPAツールで、国内では300社以上への提供実績があり、シェアNo.1。デスクトップ型がベースだが、「管理ロボ」のインストールでサーバ型の機能も使用可能になる。画像認識とHTMLタグ座標によるターゲット識別を行い、直感的な操作やVBAでの自動化スクリプト作成も可能。VBAのノウハウを持った現場との親和性が特に高い。WinActorフル版(自動化シナリオ作成・実行)、WinActor実行版(フル版で作成した自動化シナリオを実行)、WinDirector(作成したロボットの管理・統制ツール)という3つの製品がある。

RPAのタイプは大きく2種類

ここまでの内容からすでにお気づきかとは思いますが、RPAは実行環境の違いによって大きく「サーバ型」と「デスクトップ型」に区別されます。では、この2つの違いを簡単に解説します。

  • サーバ型

処理のコントロール用端末と実行用の端末が分かれており、複数の処理を並行して自動化できます。また、複数のロボットを一括管理する機能を持っていることが大半で、いわゆる野良ロボット(=管理者不明のロボット)の増殖を防ぐことが可能です。

ただし、専用の管理サーバやネットワークを構築する必要があり、非IT部門単体では導入が難しいという側面があります。高いセキュリティ性能やクラウドとの連携機能を搭載する製品も多く、BPM(ビジネスプロセス管理ツール)と連動した業務プロセスの効率化・デジタル化を促進に貢献する製品が多いでしょう。

  • デスクトップ型

単一のPCのデスクトップ上で動作し、環境構築(インストール)が非常に簡単です。

PC作業者の作業を自動化するのに適しており、バックオフィス業務専門のソフトウェアとして使われることが多いです。

ただし、ロボットが動作している間は人間の操作を受け付けないことが多く、最初から大規模展開や大量データ処理を見込む場合には向いていません。まず一部の業務に対して導入し、効果を見極めてから徐々に展開をしたいという企業には、こちらのデスクトップ型から開始されることをお勧めします。

このようにRPAソリューションは、用途や状況に応じた使い分けが可能です。導入する範囲やシステムの規模によって、どちらを選択するかが、RPA導入における最初の勘所といえるでしょう。


RPA導入を成功に導くために

今回紹介した主要8製品の比較を見ても分かる通り、一口にRPAソリューションと言っても、機能や強みによってさまざまな違いがあり、導入範囲や業務固有の性質に合わせ最適なソリューションを選択していかなくてはなりません。

しかしそれ以前に、自動化の対象とする業務(RPAに置き換える業務)の洗い出しを綿密に行うことが重要です。対象を誤ってしまうと導入の効果が薄れてしまいます

また、RPAの導入そのものが目的ではないことも忘れてはいけません。あくまでも目的は、業務効率化や人材配置の最適化、ビジネスプロセスの強化であり、RPA導入はこれらを達成する手段のひとつです。

さらに、RPA導入後の運用やメンテナンスを正確かつ継続的に行うことで、導入の効果が高められます。当社においてはツールのライセンス販売、ツール導入だけではなく、導入前の「自動化する業務整理」「RPA導入を含めた総合的な業務行為率化の提案」といったコンサルティングから導入後の「運用・メンテナンス・技術者育成」までワンストップで提供しております。是非お気軽にお問い合せください。 

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<出典>
※1:https://it.impressbm.co.jp/articles/-/15356
※2:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1803/13/news042.html
※3:https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/pl170531.pdf

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