日本最大規模のIT展示会である「2018 Japan IT Week 春」が、2018年5月9~11日の3日間にわたって開催されました。延べ13に及ぶIT関連の専門テーマについて展示が行われ、出展社数1800強、来場者数は10万人以上にのぼるなど、会場は活気と賑わいにつつまれていました。今回は、その中でも特に来場者の注目を集めていた「Web&デジタルマーケティングEXPO」、「通販ソリューション展」、そして当社も出展した「AI・業務自動化展」の3つについて、ハイライトをご紹介します。
●Web&デジタルマーケティングEXPO
近年、多くの企業でマーケティングオートメーション(以下、MA)やDMP、チャットボットといったデジタルマーケティングツールが導入されています。今回の展示会では、弊社含め、これら「マーケティングの自動化・効率化」を目的とした製品を扱うブースが多く見られました。特にMAは市場の成長が著しい製品です。
MAとは、マーケティング業務を自動化し、営業工数の削減やマーケティング活動全体の効率化を図るためのツールです。MAは、見込客の行動に合わせてステータスや育成シナリオ、属性情報の変更ができるか、という点が重視されます。また、ユーザーインサイト(見込客の潜在的欲求や興味・関心)を解析し、見込客に対して適切なタイミングで最も効果的なアプローチを実行できることも重要です。この場合のアプローチとは、メルマガ送信や広告の表示といった「One-to-Oneアプローチ」を指します。
実際、今回出展していたいくつかの企業では、見込客の性別や年代といった属性情報や、広告別の集客効果、自社サイトへの流入経路など、さまざまなデータを可視化し、営業戦略の立案や見込客に合わせたコンテンツの提供に役立てていました。こういった現状から、すでにMAは、デジタルマーケティングを支えるツールの代表格と言っても過言ではないでしょう。MAの導入によって、限られた人的資源、予算、時間を有効活用し、マーケティングの効果を高められるからです。
●通販ソリューション展
近年、通販の分野において、消費者の入口であるECサイトではシステム化が進んでいます。また、AIによる自動化が進むなど、先端技術を使ったソリューションの導入も珍しくありません。一方で、実際に注文された商品を消費者に届ける「物流」の部分では、革新的な技術の導入が進んでいませんでした。しかし、今回の通販ソリューション展では、倉庫管理、梱包、配送などを効率化する物流サービスや、越境EC(国境をまたいだ通販)を対象としたプラットフォーム等のサービスの提供を行う企業が出展しており、これまで停滞気味であった物流サービスの進化が感じられます。
中でも、以下2つの企業が、特に我々の目を引きました。
どちらの企業も物流業務におけるコスト削減、業務効率化を目指しており、現代において社会問題となっている、物流業界の負担軽減を目的としたソリューションです。
ひとつは、梱包サービスを提供している企業です。このサービスでは、非常に軽量かつ柔軟な紙の緩衝材を用いて、商品を素早く簡単に梱包できます。この企業が提供する紙の緩衝材は、優れた衝撃吸収性や断熱性を備えつつ、安価でかさばらないという特性を持っています。つまり、資材コストや保管スペースを削減し、物流コストの低減が期待できるわけです。
もうひとつは、人員配置の最適化サービスを提供している企業です。
物流の現場における人材不足を解消するため、物量や作業内容に応じた人員を育成し配置を行います。必要な時に必要な人数だけ技術と経験豊富な質の高い人材を配置することで、物流業務における人手不足の解消に寄与しています。
●AI業務自動化展
人手不足やコスト削減を実現する手段として「業務効率化」や「働き方改革」といったキーワードが注目される中、今回初めてJapan IT Weekに登場したのが「AI業務自動化展」です。「業務自動化」と言えば、RPA や チャットボット、OCRなどを思い浮かべる方も多いでしょう。ここでは、これら先端技術を用いたツールのトレンドと全体の印象をご紹介します。
まずは「RPA(Robotic Process Automation)」です。今最も注目を集めているソリューションと言っても過言ではないでしょう。あらかじめプログラミングされたルールに沿って動作し、事務作業を代行できることが強みです。RPAソリューションによって生み出された「ロボット」は、24時間無休で動作し、ミスもありません。そのため、雑務にかかる労働時間やミスの削減が期待できます。RPA市場は、ここ数年で市場規模が急拡大しており、様々なベンダーから製品が発表されています。ただし、海外のベンダーから提供された製品の委託販売・カスタマイズなどが主流で、取り扱い企業の間で「販売形態」に違いがあります。新たな動向としては、デスクトップ型、サーバー型に加えて、「クラウド型」を実現する企業もあります。この登場により、価格面での競争に新たな局面を迎える可能性があるでしょう。
次は「OCR(Optical Character Recognition/Reader)」です。OCR自体は、PDFファイルのように画像化された文字情報を抜き出す技術として、以前から存在していました。しかし、最近ではAIを組み合わせることで、文字認識の精度向上が図られています。実際に、帳票の画像データをテキストデータ(CSV形式など)として保存し、煩雑な入力業務の効率化が可能です。多くのツールでは、出力先のテキストデータのフォーマットを登録する必要がありますが、こういった作業の「手間の削減」を推し出す企業もみられました。
最後は「チャットボット」です。顧客との会話を自動化し、コールセンター業務などの効率化を図ることができます。チャットボットの中核を担うのは、「応答のさせ方」を定義づける「AIエンジン(ボットエンジン)」です。これまでのチャットボットでは、IBM社が提供している「ワトソンAPI」をAIエンジンとして適用する方法が主流でした。しかし、ワトソンAPIでは、会話の流れから質問を解析することはできません。そのため、独自エンジンを作成し、より現実の会話に近い対話型のチャットボットを提供する企業もありました。
今回展示されていた製品の例から、「業務自動化」を実現するためのツールは成熟期に突入しつつあるという印象を受けました。しかし、多くのブースで「ツールを使うことを目的にしてはならない、ツールを何のために使うかが大事だ」という点が強調されており、「ツールを導入する目的」を第一に置いた導入が今後の課題といえるでしょう。
●最後に
本展示会は商談を目的として出展している企業が多いため、出展企業の訴求ポイントや来場者の興味のポイントが、明確に打ち出されていました。当社ブースではRPA、MA/SFA、チャットボット、CRMの各ソリューション展示を行いましたが、どのソリューションに対しても、来場された皆さんの業務課題解決に対する真剣さがひしひしと伝わってきました。特に、最近人気のRPAツール「UiPath」。
想像を超えるお問い合わせを頂き、その関心・注目度の高さを痛感しております。働き方改革の推進、少子高齢化による生産年齢人口の減少、それに伴う人材不足の不安を抱える日本では、「効率化」「自動化」、そして「非人的リソースの積極的活用」がキーワードとなり続けるのかもしれません。しかし、前章でも述べたように、こういった様々なツールやサービスを「導入」することが目的になってはいけません。これらテクノロジーの力を最大限に利用し、「時間を短縮する」「無駄を省く」だけで満足するのではなく、「より新しいもの、質の高いものを生み出す時間を増やす」ことが真の目的ではないでしょうか。このレベルにまで到達できれば、今回紹介したようなテクノロジーの恩恵を十分に享受できるはずです。
更にもう一歩踏み込んで言えば、「日常業務において、ロボットの活用を当然とする働き方」、そういった"ヒトのトランスフォーメーション"を実現していくこと。これが恒久的人材不足という問題を抱える日本の、そして世界が目指すべき(もしくは目指さざるを得ない)ゴールなのではないでしょうか。
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