三菱総合研究所がボット元年と名付けた2016年、FacebookやLineなどの主要ソーシャルメディアプレイヤーからチャットボット機能搭載サービスが次々とリリースされました。その結果、チャットボットがECやCRMの世界で広く知れ渡るようになりました。また、野村総合研究所がリリースした「2021年までのITロードマップをとりまとめ」によると、9つの重要技術(AI(エーアイ:人工知能)、VR(ブイアール:バーチャルリアリティ)、FinTech(フィンテック:ファイナンス・テクノロジー)など)の中でも特に期待されるのが「チャットボット」であると指摘しています。
これだけ話題になっているチャットボット、導入の検討は必要であると感じつつも、いざ自社サービスでの活用となると、どのように最適化すればよいのか悩んでいる方も多いと思います。
そこで本ブログでは、今後数回にわたり、この分野での経験豊富な当社社員が、企画から運用に至るまでのチャットボット活用法について考察いたします。第1回は「チャットボットとは何か?」「なぜ流行っているのか?」そして「チャットボットの型別による活用方法」についてご紹介いたします。
1. チャットボットとは?
「チャット」とはテキストベースのコミュニケーションのことですが、具体的な例としてすぐに思い浮かぶのはFacebookのメッセンジャーやLineなどではないかと思います。昨今、利用率が激減しているSMS(ショートメッセージサービス)もチャットの一種ですが、"友達申請"不要のチャットであると捉えるとビジネスにおいては有効なツールとなるかも知れません。
次に「ボット」です。「ボット」とはロボットという単語の短縮形であり、特定のコンピュータ処理を自動的に実行するプログラムをさしています。
よって「チャットボット」とは、「チャット」+「ボット」=テキストによる会話を自動的に実行するプログラムということになります。
2. なぜチャットボットが流行っているのか?
前述の通り、2016年頃から急速に広がり出しているチャットボットですが、その誕生は50年前に遡ります。米国のマサチューセッツ工科大学が開発した「ELIZA(イライザ)」がそれにあたりますが、当時の機能レベルとしては、相手のコメント(テキスト)をオウム返しする程度のものでした。その後、長い間、製品レベルでの進化がなかったため、ビジネスの世界で広く認知されることはありませんでした。
では、そのチャットボットがどのようにしてビジネスの世界で急速に広まったのでしょうか?理由は大きく3つ挙げられます。
まず1つ目として「チャットボット自体を支えるソフト、ハードの両面における技術の発達と社会へ浸透してきたこと」が挙げられます。老若男女を問わず、誰でも操作できるアプリの開発、いつでもどこでも通信できるインフラの充実、気軽なチャット利用を可能にしたスマートフォンによるインターフェイスの進化・・・こうした技術の発達に伴い、顧客のチャット利用機会が大幅に増えました。
そして2つ目として「チャットの利用機会増加による顧客行動の変化」が挙げられます。電話離れが進み、チャットのように時間や場所を選ばないコミュニケーション方法や、チャネルが好まれるようになりました。
更に3つ目として「サービス提供側の変化」が挙げられます。顧客行動の変化に対して、機会損失を回避すべく、多くのサービス提供者はチャットチャネルへの参入を進めています。また、労働力不足や人件費の高騰という社会的背景も"ボット化"に対する取り組みを後押ししていると考えられます。
上記のような理由から、広まりつつあるチャットボット、他社との差別化を図る上でも早めの取り組み検討をしたいところです。
さて、次に、チャットボットが実際どのように活用されているのか、代表的な4つの型別に整理してみたいと思います。
3. 4つの型に見るチャットボット
i. FAQ(エフエーキュー)型
FAQ型チャットボットは、顧客から受けた質問内容を理解し、データベースの中から適切な回答を返信します。
例えば、顧客がある企業の提供するサービスについて不明点があったとします。これまではウェブサイト上のFAQを閲覧し、その中から回答を探す、そして見つからない場合は類似質問の回答を参考にする、もしくは諦めるといった行動が一般的でした。
これに対しFAQ型チャットボットを活用しますと、顧客は用意されているチャットへ質問を書き込むだけで、より適切な回答を受け取ることができます。受け取った回答で解決しない場合は、更に別の回答を受け取れるため、問題解決率が改善されます。こういったFAQ型のチャットボットについては、顧客向けの対応だけでなく、社内FAQとして活用する事例も生まれています。
導入効果については、
(1)顧客自身の自己問題解決率の向上による電話による問い合わせの削減
(2)(1)に起因する顧客満足度の向上、コンタクトセンター、カスタマサポート等運営のコスト削減
(3)問い合わせ内容のデータ蓄積による、商品・サービス開発等における顧客の声(VOC)活用の高度化
などが挙げられます。
ii. 処理代行型
処理代行型チャットボットは、顧客との会話の中で得た情報を元に、システム処理を代行します。
想定される利用シーンとしては会議設定作業などがあります。希望日時および対象者をチャットに書き込むことで、対象者の都合を踏まえた候補日時をピックアップしてもらい、日時確定の返信をすることで参加者全員のスケジュールを確定します。そのほかにも最近では宅配ピザの受注業務を行うチャットボットも登場しています。このようにチャットボットが後処理業務を代行することで処理の自動化による生産性や品質の改善が期待されています。
iii.配信型
配信型チャットボットは、顧客と会話を行うことを目的としておらず、決められたタイミングで情報を配信します。
例えば、対象者に対してチャットで新商品やセール、メルマガなどの情報を配信するといったケースが挙げられます。新商品情報などの配信サービスは、メールを活用することで既に多くの会社が実施していますので、「伝達媒体をメールからチャットに変えただけ」との指摘はその通りです。ただ冒頭でも述べました通り"顧客行動の変化"や"活用方法の工夫"により、場合によってはメールよりも大きな効果が期待できますので、配信先や配信内容を踏まえた検討が重要になってきます。
変わったところでは、経費精算などの締め切り案内などの社内事務処理での活用が挙げられます。これまで月末締め処理の案内は掲示板機能の活用やメールによるものが大半ではなかったでしょうか。これを先の例と同様に伝達媒体をチャットに変え、FAQ型と組み合わることにより催促等のフォロー活動の実施が容易になり、情報を自動で配信するだけでなく、社内業務品質の改善に繋がる取り組みとしても期待されています。
iv.雑談型
雑談型チャットボットは、顧客の疑問の解決や、顧客に情報を届けるという「業務」的な目的ではなく、顧客との会話を成立させることを目的としています。
活用事例としては、何らかの問題を解決するためということではなく、文字通り、顧客とのゆるい会話を続けるようなケースでの利用が挙げられます。
一方で、多少シナリオ色の強い雑談型チャットボットの例としては、新商品に関するVOC(ブイ・オー・シー:顧客の声)を収集するための雑談という形での活用も考えられます。
いずれの活用においても、雑談型は直接的な効果というよりはブランディングやロイヤルティの向上といった領域を中心に活用が期待されているチャットボットになります。
まとめ
チャットによるコミュニケーションが一般化してきたことから、ECやマーケティング、コンタクトセンター等のCRM全般においてチャットボットの活用機会は今後ますます増えてくるものと思われます。
次回は、チャットボットの活用について弊社事例などをご紹介したいと思います。
ご興味ありましたらお気軽にお問い合わせください。