明けましておめでとうございます。
本年もCRM/コンタクトセンターに関連する情報を精力的に発信していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
さて、2015年に別れを告げ、やってまいりました2016年。
世間を賑わすマイナンバー制度や電力自由化など、様々な新しい制度が開始されるそんな年でもありますが、CRM、コンタクトセンターの領域ではどのような変化を迎える年となるのでしょうか?
国内外の統計や事例などをもとに、2016年CRM/コンタクトセンターの潮流について、考えていきたいと思います。
デジタルマーケティングの興隆に合わせ、カスタマーエクスペリエンス向上への取組みが加速、コンタクトセンターの重要度も増す
デジタルマーケティング、データドリブンマーケティング、One to Oneマーケティングなど、様々なトレンドワードが溢れるマーケティングも、CRMの1要素です。マーケティングの領域にお詳しい方であれば、2015年は「適切なタイミングに、適切なメッセージを、適切な人に」といった謳い文句をよく聞いた年だったのではないでしょうか?
この言葉が目指す所は「お客様1人ひとりに適切な対応を実現する」ことにあり、これが顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の向上に結びつきます。
例えば20代後半、丸の内で働いており、最近引越しを考え始めている人に対し、丸の内線沿線の住まい情報や物件情報を提供するなど、1人ひとりの趣味趣向やライフステージに合った顧客体験を提供することで消費者と親密な関係を築き、「この企業、サービスと契約したい!」と思ってもらえるような体験を提供することが、良い顧客体験を提供する1つの例です。
また、購入や契約に至るまでの道のりを設計したり、企業へ問合せに至るまでのプロセスを上手に設計することで、途中で脇道に逸れ離脱したり、どこに問い合わせて良いのか分からないなどの不満を感じないよう道を作ること(カスタマージャーニーの設計と実践)も、顧客体験を向上する上で重要です。
こうした顧客体験を重要視する傾向は、Deloitteが企業300社を対象に実施した「2015 Global Contact Center Survey」の中でも顕著に表れており、「顧客体験を追求することが競合との差別化に繋がる」と回答する企業の割合が年々増えています。また、同調査に回答した企業の96%が、事業拡大と顧客満足の追求のために、コンタクトセンターが重要であると回答し、ここ数年の間にコンタクトセンターの機能拡張を予定しているとのことです。
こうした取組みを実現する上で、その実行を下支えするテクノロジーやデータの整備、推進する組織体制の構築などが必要になってきます。
CRM施策、またその中の一つであるコンタクトセンターで顧客体験を向上させ、競合他社との差別化を図ることが、多くの企業において今年も重要な命題の1つとなるでしょう。
複数チャネル(マルチチャネル)への対応有無は「逆選別」の判断基準に
「この企業はWebで検索してもヒットしない。なんだか怪しい。」
「この企業のWebサイト、スマホだと見づらくて見る気がしない。」
「電話で話すほどのことではないけど、すぐに聞きたいことがある。」
「Twitterを見ると、この企業の悪い評判ばかり出てくる。」
など、Webの存在が当たり前になり、デジタルネイティブ世代が台頭してきている今、こうした声はそこかしこで聞かれます。
携帯電話、スマホの普及により個人間のコミュニケーション手段は電話よりもメール、メールよりもメッセージアプリと、どんどん変化しています。(Mix Channelなどを通じた動画でのコミュニケーションも、今後更に伸びていくことでしょう。)また、そうした変化は消費者間に限ったことではなく、消費者と企業間でも起こり得ます。「Webサイトの有無」や「スマホ対応の有無」、「WebチャットやSMS、LINEなど従来の電話以外のチャネルの有無」など消費者がよく利用するチャネルを企業が持っているのか、そこでコミュニケーションが円滑に取れるのか、といった点が、企業のブランディングや顧客との関係構築(CRM)のみならず、「この会社は不安だからやめておこう」といった、逆選別の要因にもなり得る時代がやってきています。
ジャストシステムズの調査によれば、36.1%のWeb担当者が「スマートフォン対応済み」と回答(BtoB企業41.9%、BtoC企業50%)。39.8%が「未対応」と回答
参照元はこちら
モバイルフレンドリーか否かは、企業の検索エンジン上での順位にも影響してくるため、Webサイトを活用した集客をする企業にとっては対応が必至の事項だと考えられます。
また、ZendeskとNuanceが実施した調査によれば、75%がセルフサービス型(自分で検索する等)が楽で便利と回答 67%が電話で企業担当者と話すより自分で解決したいと回答
参照元はこちら
となっており、またDimension Dataが2015年にコールセンターに対して実施した調査では、74%の事業者が消費者とのやり取りがここ2年間で増加したと回答 42%の事業者がコール(電話)が減少していると回答 87%の事業者がSNSやウェブチャットなど、「ノンボイス」でのコミュニケーションが増加したと回答
参照元:2015 global contact centre benchmarking report
など、問合せをせずに自己解決したい、電話ではなくチャットなどで済ませたい、といった需要が伸びてきていることも見受けられます。
オムニチャネルの本格化が企業の「差別優位性」を高めるカギを握る
マルチチャネルのそれぞれで異なる対応をするのではなく、どのチャネルでも一貫して顧客ごとに合ったコミュニケーションを実現することがオムニチャネルの理想像かもしれませんが、それを実現出来ている企業はまだほとんど存在していないのが現状かと思います。
《店舗とECの在庫連動、商品の取寄せを実現した、リユースデパートコメ兵のオムニチャネル戦略》
《セブン&アイグループの商品を24時間コンビニで受取ることが出来るomni 7》
コンタクトセンターでもオムニチャネル化を進めている事例があります。ドイツを拠点とする通販会社のHSE24(ホームショッピングヨーロッパ24)社は、24時間放送し続けるテレビ通販、Webサイト、スマホアプリなどで在庫状況や割引クーポンなどの発行タイミングをリアルタイムに全てのチャネルで連動させ、注文や問い合わせを受けるコンタクトセンターではその情報をいち早くユーザーに伝えることが出来ます。また、商品に基づくクロスセルやアップセルも実施しており、将来的には電話してくる個々人のニーズに基づく提案も出来るようにしたいと考えているとのことです。
このように、いくつかの企業がオムニチャネルの取組みを推進し、成果を出していますが、その多くは店舗・Webサイト間の在庫連動や取り置きサービス、ポイント統合などが中心で、目新しさというよりも、消費者が求める利便性を実現した、という印象が強いような気がしています。
また、これらの取組みはオンラインとリアルでの会員情報や購入履歴の統合など、データ統合を実現した上で可能となったことだとも言えます。
これからはこの統合されたデータをどのような目新しい、消費者の未だ満たされないニーズを埋めるイノベーティブなサービスに昇華していけるのかが、オムニチャネルの本分であり、競合他社との差別化ポイントになっていくのかもしれません。
ここまで書いてきたことは、実は2015年のトレンドと大きく変化していないことにお気づきの方も多いかと思います。
一昨年ほど前から日本でもよく耳にするようになってきたこれらのトレンドワードは、今しばらく残り続けていくものだと感じています。強いて言えば、この「流行りもの」をいかに「モノにできるのか」が、今の時代において既存顧客やこれから顧客となる層との関係を深め、「ひいき」でいられるのかという、CRMの本来の目的達成のカギになると言えるでしょう。