
近年、コンタクトセンターにおける音声対応には「人が話しているような自然さ」が求められる場面が増えています。生成AIの普及とともに音声合成の技術も急速に進化し、IVRやチャットボットの応答品質がそのまま企業イメージや顧客満足度に影響する時代になってきました。
Amazon Connect Customer (*1) にも、標準で利用できる合成音声としてAmazon Polly (*2) が用意されています。今回は外部音声プロバイダーとしてElevenLabsのEleven API (*3) をAmazon Connect Customerのフローに組み込むことで、より自然な音声の自動応対が実現できるかを検証しました。本記事では、検証を通じて分かった音声品質・レイテンシ・工数や費用面での違いをまとめました。
※画面キャプチャ画像内の赤枠や赤文字の書き込みは弊社による注釈です。実際のAmazon Connect Customerの画面には表示されません。また、画面やメニュー名称は執筆時点のものです。アップデートにより表示が変更される場合があります。
*1 Amazon Connect Customer:AWSが提供するクラウド型コンタクトセンターサービスAmazon Connectの製品ラインの一つ。2026年4月にAmazon Connectから名称変更しました。
*2 Amazon Polly:AWSが提供するテキスト読み上げ(音声合成)サービス。Amazon Connectで標準的に利用できる音声エンジン。
*3 Eleven API:ElevenLabs社が提供する音声合成API。Amazon Connectでは外部音声プロバイダーとして利用できる。
目次
解決方法:ElevenLabsのEleven APIを組み込む
こんな方におすすめの記事です
Amazon Pollyで音声ボットを構築した際に、Amazon Connect Customerの音声合成に物足りなさを感じている、以下のようなお悩みをお持ちの方に読んでいただきたい内容です。
- 音声の質がいかにも合成音声という印象があり、実際のコールセンターで使うにはもう少し自然な音声にしたい。
- 会社やサービスのブランドイメージに合わせた合成音声をAmazon Connect Customerで利用したい。
- 固有名詞(社名・製品名など)の発音が不自然で、SSML (*4) で修正しようにも編集の時間や技術的知識が足りない。
なおAmazon Connect Customerでの音声再生は、LexBot (*5)を利用して動的にテキストを生成したものを音声合成で応答させる以外にも、録音ファイルを音声合成であらかじめ作成しておいて再生する方法もあります。本稿では動的に作成したテキストを音声合成で再生する方法を取り上げます。
*4 SSML:音声合成の読み方や間、抑揚などを細かく指定するためのマークアップ言語。
*5 LexBot:Amazon Lexで構築される対話ボット。音声やテキストによる自動応答を行う。
解決方法:ElevenLabsのEleven APIを組み込む
AWSのアップデートにより、Amazon Connect Customerのフローで外部音声(サードパーティーを利用した音声合成・読み上げ )が利用できるようになりました。今回はEleven APIを使い、Amazon Pollyの音声との違いを比較しています。
Amazon Connect Customerのコンタクトフローのイメージ

「音声の設定」ブロックの設定詳細

上記の設定をする前に、ElevenLabs のAPIを利用するためAWS Secret Manager (*6) を利用してシークレットを設定しています。設定方法の詳細は本稿で扱いませんが、AWSJapanの有志の方が書かれているZenn記事がわかりやすかったです。
公式のドキュメントだけでは設定詳細が把握しにくい場合、ご参照ください。
*6 Secrets Manager(AWS Secrets Manager):APIキーなどの機密情報を安全に管理・取得するためのAWSサービス。
音声品質について
Amazon Pollyでは、自社名などの固有名詞の発音が不自然になることがあります。SSMLを使えば間や速度の調整は可能ですが、日本語におけるSSMLの制御範囲は狭く、満足のいく調整結果が得られないケースが多いのが実情です。
また、生成AIが出力する文字列に対してSSMLを設定する方法自体は存在します。しかし、技術的な難易度の高さに加え、日本語における制御範囲の狭さという課題もあるため、コンタクトセンターでの実用は難しいと言えます。
一方Eleven API(記事執筆時点ではEleven V3モデルを使用)では、SSMLのような特別な調整をせずとも、自然な日本語の発音が実現できます。声色や話す速度についても、窓口の受付担当者を想起させるような落ち着いた話し方を日本語で細かく指定することができ、あらかじめ用意された音声パターンから選ぶだけのPollyと比べて柔軟性が高いといえます。例えば、クレーム対応の窓口では、通常より落ち着いたトーンで、ゆっくりと共感を示すような話し方を指定することで、顧客の感情を逆撫でしない誠実な印象を演出できます。
Eleven APIによる発話サンプル
eleven_v3_test_21sec.mp3
Elevenlabs APIでボイスを作成した時のプロンプトの例
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ホテルフロントで働く40代の女性。深い声でゆっくり、はきはきと話すが、顧客の話はしっかり聞き、事務的な注意事項など、お客様からするとそれほど重要ではない内容は手早く済ませるなど、機転を効かせることができる。 |
レイテンシについて
Eleven APIを利用する場合、通話開始から発話が始まるまでにわずかな間、レイテンシが生じることがあります。弊社の検証では東京リージョンのAmazon Connect Customerを利用しましたが、ほとんどレイテンシがない場合から3秒近くレイテンシが発生する場合まで様々で、一概にどの程度遅れるとは言い切れないものでした。AWSサポートにも改善方法を確認しましたが、ElevenLabsのサーバーとAmazon Connect Customerのインスタンスの物理的な距離によって発生している可能性が高く、現時点では有効かつ確実な対策手段はないとのことでした。
💡Tips:定型文のアナウンスであれば、事前にEleven APIで作成した録音ファイルをAmazon S3に配置し、Amazon Connect Customerのフローから参照することでレイテンシを短くすることができます。
Eleven APIには最新モデルのEleven v3をはじめ複数のモデルが用意されており、応答速度を重視したEleven Flash 2.5を選択することでレイテンシを短縮でき、弊社での検証範囲では平均1秒以下に収まっています。ただし、語尾の発音の棒読み感や発話スピードのブレが気になったため、多少の遅延を許容できるのであればEleven v3の利用が最適と考えられます。
導入による影響 ― 工数や費用面
工数面
プロンプトのテキストをそのまま使えるため、Amazon Pollyを利用する場合のSSML調整作業を削減できます。一方で、外部音声プロバイダーの設定のため、初期セットアップの工数が新たに発生します。具体的には、ElevenLabsアカウントの作成、APIキーのSecrets Managerへの登録や、利用量に応じたElevenLabsのプラン選択などが必要です。
費用面
ElevenLabsの費用体系は、月額プランごとにクレジットが付与され、利用量に応じて消費するサブスクリプション型の従量課金です。無料プランも毎月一定のクレジットが付与される仕組みで、有料プランでは設定により超過分の追加課金も発生します。詳細はElevenLabsの公式サイトをご確認ください。
モデル別特徴比較表
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モデル名 |
音声品質/対応言語 |
レイテンシ(発話までの待ち時間) |
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Amazon |
音声品質はやや機械音声っぽく、合成音声だとすぐわかる印象。 日本語の場合、一部の発音や固有名詞の発音の調整が難しい場合がある。 2026月7月現在、日本語を含む41の言語に対応。(*7) |
ほとんどない |
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Eleven v3 |
声色、話すスピード、トーン、方言(例:標準語、関西)などを自然言語でカスタマイズ可能。テキストを設定するだけで固有名詞についても自然な発音で話す。 2026月7月現在、日本語を含む70以上の言語に対応。(*8) |
ほとんどない場合から少し長いと感じる遅延までさまざま |
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Eleven |
声色、話すスピード、トーンなどを自然言語でカスタマイズ可能。語尾の発音や固有名詞の発音に不自然さが認められることがある。 2026月7月現在、日本語を含む32の言語に対応。(*9) |
ほとんどなし |
「レイテンシ」については、Lex経由で利用した場合の弊社での検証での体感値を記載しています。
*8 Eleven v3:最も表現力のあるAIテキスト読み上げモデルをリリース
Eleven API利用のメリット/デメリット
Amazon Connect Customerにサードパーティー音声としてElevenLabsのEleven APIを組み込むことで、以下のメリット、デメリットがあることが分かりました。
- メリット
- SSMLの難しい設定なしで自然な発話を実現できるため、現状の音声品質を手軽に短時間で改善できる。
- 日本語のプロンプトで声色や話し方を多様に調整できるため、窓口の特性やサービスのイメージに即した電話対応を実現できる。
- デメリット
- 多少のレイテンシが発生する可能性がある。
- Amazon Pollyを利用するよりもコストがかかる場合がある。請求がAWSに一本化できずElevenLabsからの請求となる。
- Amazon Connect Customer以外のAWSサービスやElevenLabs側の設定など、初期設定で余分に工数が発生する。
まとめ
本稿では実際の動作検証を通した、Amazon PollyとEleven APIの音声品質・レイテンシ等の違いを紹介しました。
ElevenLabsの音声は無料アカウント登録で簡単に試すことができます。音声品質をアップグレードさせたい方は、一度試してみる事をおすすめします。
Amazon Connect CustomerとElevenLabsの諸機能を組み合わせた構築・PoCは弊社でもご案内が可能です。下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。
執筆者紹介

プロダクトエンジニアリング&サービス部






【追記:2026年7月21日】
本記事の公開直前となる2026年7月20日、AWSから、Amazon Connect Customerのエージェント型セルフサービスにおける音声機能のアップデートが発表されました。日本語を含む50以上の言語や100種類以上の音声への対応に加え、発話速度・音量・感情の調整、自然な間の補完、話者交替の改善など、AIとの対話をより自然にする機能が拡充されています。
今回の発表からも分かるとおり、Amazon Connect Customerの音声体験は現在も急速に進化しています。本記事は、この発表前の時点でAmazon PollyとElevenLabsを比較・検証した結果をまとめたものです。今回発表された機能のについては別途確認が必要ですが、Amazon Connect Customerの標準機能と外部音声プロバイダーの違いを考える際の参考としてお読みください。