
Catch up! Amazon Connectは、Amazon Connectの基本機能を紹介するシリーズです。
今回と次回のテーマはケース機能です。本稿では機能一覧とメリット・デメリットなどの概要を、次回の記事では注目機能を詳細にご紹介します。
※この記事ではAmazon Connectで標準提供されている機能についての解説をお伝えします。他のAWSサービスやサードパーティのアプリケーションとの統合については扱いません。予めご了承ください。
また、画面キャプチャ画像内の赤枠や赤文字の書き込みは弊社による注釈です。
実際のAmazon Connectの画面には表示されません。
※画面やメニュー名称は執筆時点のものです。アップデートにより表示が変更される場合があります。
目次
Amazon Connectのケース機能とは
Amazon Connectのケース機能を一言でまとめると、コンタクトセンターでの顧客対応を一元管理できる案件(問い合わせ)管理機能です。電話、チャット、タスクといった複数のコンタクトを1つのケースに紐づけて管理できるため、対応の抜け漏れを防ぎ、スムーズな顧客体験を実現できます。
実際のケースを作成する画面や参照する画面を例示します。
ケースを作成する画面

ケースをエージェントワークスペース(オペレーターが顧客対応をする画面)で参照するイメージ

ケース機能は、例えば下記のような用途に利用可能です。
- 顧客データに問い合わせ案件を紐づけて、電話、チャット、タスク、メールなどの履歴と一元的に管理する
- フローブロックにケースの処理を組み込むことで、ケースを自動作成・更新する(ボットによる処理)
- 紐づけたコンタクトを含めたケースのサマリー(AIによる要約)を生成する(*1)
なお、シンプルな画面構成で利用しやすいケース機能ですが、外部システムに連携する機能は標準機能には無いため、
Amazon EventBridgeなどの他のAWSサービスとの組み合わせで実現する必要があります。まずはケース単体で完結する業務で活用し、必要に応じて外部連携を構築するといった、段階的な利用が現実的と思われます。
*1 2026年1月5日現在、英語で要約を生成します。日本語での生成は未対応です。
Amazon Connect が AI を活用したケースサマリーの提供を開始 - AWS
基本機能
ケースは初期設定でテンプレートが用意されており、そのまま利用開始することも可能です。また、ケースの項目(ケースフィールド)やケースの入力・参照用画面(ケーステンプレート)をカスタマイズ可能です。ケーステンプレートは複数登録できるので、1つのAmazon Connectインスタンスで複数の業務を運用している場合、業務に合わせて作成すると便利です。
以下に、ケース機能を利用するにあたっての操作を一通り説明します。
ケースフィールドの作成
Amazon Connectのメニューからエージェントアプリケーション>ケースフィールドを選択します。
「フィールドを作成」ボタンをクリックし、任意の項目を作成します。
ケースフィールドを作成するイメージ
ケーステンプレートの作成
ケースフィールドを複数設定し、エージェントワークスペースでワークスペースで活用する
ケーステンプレートを作成します。
Amazon Connectのメニューからエージェントアプリケーション>ケーステンプレートを選択します。
「テンプレートを作成」ボタンをクリックし、任意のテンプレートを作ります。
予め作成された項目(システムケースフィールド)は削除できないものもあります。
ケーステンプレートを作成するイメージ
エージェントワークスペースでケースを作成・参照
エージェントワークスペースを開き、顧客プロファイルをクリックします。
画面の下側にケースの一覧及びケース作成のボタンがあります。
作成するには「+Connect ケース」からケース作成画面に、
参照するにはケースのタイトルをクリックして詳細画面に移動します。
顧客プロファイルに紐づくケースを一覧表示する様子
ケースの作成
ケースの参照
ケースを完了する
ケース詳細画面・ケース編集画面でステータスをOpenからCloseにすることで完了とみなします。
完了したケースもケース一覧に残りますが、検索条件を設定することでOpenのケースだけを表示する事が可能です。
ケースがAmazon Connectに登録されたままになるので、メトリクスで完了したケースを含めたパフォーマンスを測定することができます。
ケースを削除する
ケースを画面から削除することはできませんが、APIまはたCLIを使い、ケースを削除する事ができます。
(例)Delete Case API
削除されたケースは復元させることはできません。運用上は、原則としてステータス管理(Open / Close)で整理し、削除は誤登録など例外的なケースに限定するのが安心です。
ケース機能の利点
機能調査でケース機能のメリットであると感じた点は下記です。
- 顧客に紐づけた簡単な案件管理がAmazon Connectで完結します。ケース一覧の画面もあり、ケースフィールド(項目)やケーステンプレート(画面レイアウト)もある程度は事由にカスタマイズできるので、簡単な問い合わせ管理はケース機能の活用で十分可能です。
- 2025年11月のアップデートで、問い合わせ内容、原因、解決策をAIが記入する「AIによるケースサマリー」が利用できるようになりました。2026年1月5日時点では日本語に未対応ですが、今後のアップデートで日本語で利用できるようになれば、ケース登録の手間が大幅に削減できると予想します。
- 電話やチャットのフローにケースを組み込めるので、ボットによる自動対応でもケースを起票したり、編集できます。追加開発無しでAI・自動化といった先進技術を気軽に取り入れるAWSらしいメリットです。本番運用ではボットが起票したケースを人間が見逃さないように通知設定などを追加する必要がありますが、通知設定のメソッドもAmazon EventBridgeを使う方法など、公式が用意しているので比較的容易と言えそうです。
- 重要なケース作成時の通知や、SLAの割当・違反監視ができます。重要かどうかの判定条件はAmazon Connectのルール機能で画面から設定することができます。フォローアップの抜け漏れ防止を自動化できる点が、多忙なコールセンター現場で価値を発揮しそうです。
- ケースのデータを顧客セグメント作成 (*3)に応用できるので、問い合わせ内容から顧客リストを作成することが簡単です。アウトバウンド業務に問い合わせデータを活用することができ、利益に貢献するコールセンターとしての運用も視野に入ります。
*3 顧客セグメントの作成については、アウトバウンド機能の紹介記事に詳しい解説がございます。ぜひお読みください。
電話もメールも1画面で完結!Amazon Connectのアウトバウンドキャンペーン - ソリューションバーチャレクス
ケース機能の難点
他の案件管理ツールと比較すると難点と言えそうな箇所は以下の通りです。
- ケースと各コンタクトを手動で紐づける処理はコンタクト対応中に行う必要があります。後から紐づける方法もありますが、直近のコンタクト履歴しか表示されないことがあるので、かなり前のコンタクトを紐づけることは不可能です。ただしAPIによる操作は可能なので、別途開発で対応することは可能です。
- ケースのデータベースはマネージドサービスに組み込まれています。直接アクセス・編集することはできません。ただし、ケースの項目やテンプレートは画面から編集可能です。また、一部のシステムケースフィールドを除き、ケースのデータはエージェントワークスペースのケース編集画面で編集可能です。
- 標準機能を利用できるようにセットアップするだけでも、AWS CLIによる設定が必要な箇所が数か所ありました。初期設定および運用にはエンジニアリング知識のあるメンバーが必要かもしれません。
- ケースを起点としたワークフローを作成する機能はAmazon Connect本体にはありません。Amazon EventBridgeなどの外部システムを利用した構築が必要です。
- 初期状態で存在するシステムケースフィールドは、ユーザーによる編集が制限されています。ケーステンプレートに表示したくない項目でも非表示にできない場合があります。
ケース機能の利用に関わる注意点
その他、運用に関係する注意点をいくつか紹介します。
- 顧客プロファイルを有効にする必要があります。
顧客プロファイルを有効にせず、ケースだけを利用することはできません。 - セキュリティプロファイルでユーザーへの権限を適切に設定する必要があります。
全ユーザーに全権限を与えると、一般のオペレーターがコンタクトセンター全体のケーステンプレートを編集してしまうなどのトラブルが発生する原因になります。 - ケースは1件作成するごとに料金が発生します。
必ず最新の公式料金ページで確認し、想定ユースケースで試算してから導入するのがおすすめです。
機能一覧
Amazon Connect管理者ガイドで紹介されている種々の機能を一覧形式にまとめました。
コンタクトセンター管理者やシステム担当者向けの詳細な機能一覧となっています。わかりやすさを重視したため、一部の名称がAmazon Connectの公式情報と合致していない場合があります。また、用語や名称はアップデートで変わることがあります。最新の正式名称はAmazon Connect管理者ガイドもあわせてご確認ください。
| 機能名 | 説明 |
|
ケース管理 |
初期設定ではケース機能が有効になっていないため、ケース機能を有効化します。 なお、一度作成したドメインは画面からは削除できません。APIまたはCLIで削除してください。 設定する画面:AWSマネジメントコンソール>Amazon Connect>インスタンスの設定 |
| ケースの作成・編集 | エージェントワークスペース(オペレーターが利用する顧客対応用の画面)で、ケースを作成・編集することができます。ケースは顧客プロファイルに紐づける形で管理します。 ■ 可能な操作の例 ケースを一覧表示する・ケースに担当者を割り振る・ステータス(進行中・解決)を編集する・ケースフィールドのデータを編集する・ケースをコンタクトと紐づける・ケースにタスクを作成する ※顧客プロファイルに紐づかないケースは作成できません。 ※ケースは画面操作で削除できません。ステータスを「解決」にすることで完了とするか、API / CLIを利用して削除してください。 利用する画面:エージェントワークスペース |
| AIによるケース サマリー |
顧客との通話やチャットの内容をAIが解析し、自動的に問い合わせ内容の要約文を生成します。 生成した文章を保存すると、ケースの「概要」欄にその文章が記入されます。ケースの編集画面でケースサマリーの文章を担当者が修正することもできます。 2025年11月末に発表された新機能です。 ■ 生成したケースサマリーの例 現時点で担当者による具体的な約束(確約事項)は記録されておらず、ステータスは「オープン」のままです。また、これまでに担当者が行った対応や措置についても記録がありません。 補足事項: 配送の遅延によりエンドユーザーに不便が生じており、顧客は現在の配送状況に関する情報を求めています。 利用する画面:エージェントワークスペース |
| ケースフィールド 管理 |
ケースで管理する項目を作成・編集できます。 ケースフィールドは大きく2種類あります。 1: システムケースフィールド(初期設定。変更できない) 2: カスタムケースフィールド(ユーザーが自分で作成・編集できる) カスタムケースフィールドは、データの形式を次から選ぶことができます。 数値・単一選択・テキスト・True/False・URL(リンク)・日時 また、権限設定が可能です。例えばSV以上は編集可能、オペレーターはケースフィールドの閲覧のみが可能とするなど、ケースフィールドを現場主導で柔軟・安全に運用することが可能です。 (参考)システムケースフィールドの一覧 Amazon Connect Cases でケースフィールドを作成する 設定する画面:Amazon Connect>エージェントアプリケーション>ケースフィールド |
| ケーステンプレート 管理 |
エージェントワークスペースで利用する、ケーステンプレートの作成・編集ができます。 ケーステンプレートは案件・商談の情報を記入するためのフォーマットです。こちらもセキュリティプロファイルで権限設定をすることが可能です。 ケーステンプレートの作成数は上限があるので、不足する場合はService Quotasコンソールでクォータを引き上げます。 設定する画面:Amazon Connect>エージェントアプリケーション>ケーステンプレート |
| ケースフィールド条件 | ケースフィールドに下記の条件を付与できます。 ・条件付き必須フィールド テンプレート上のフィールドを条件付きで必須またはオプションにします。 例:項目Aが入力された場合、項目Bは入力必須 ・条件に応じてフィールドを表示または非表示 条件に応じて、テンプレート上のフィールドを表示または非表示にします。 例:ステータスが進行中の場合、項目Aは非表示 ・単一選択フィールドのフィールドオプションを表示または非表示 条件に応じて、単一選択ケースフィールドのフィールドオプションを表示または非表示にします。 例:項目Aで選択肢1が選択された時、項目Bでは必要な選択肢だけを表示 設定する画面:Amazon Connect>エージェントアプリケーション>ケースフィールド条件 |
| ケースのメトリクス | ケースの登録状況や解決までにかかった時間などの種々のKPIが参照できます。利用するには、少なくとも1つのケーステンプレートが有効になっている必要があります。 KPIの例 ・作成されたケース数 ・ケース解決までの平均所要時間 ・ケース関連の平均連絡回数 ・初回対応解決率 ・ケース解決のために実行されたアクション数 ・ケース再開のために実行されたアクション数 ※2026年1月5日現在、項目名などの表示は英語のままです。 |
| ケースSLA | Amazon Connect Contact Lensのルールと連携した設定をすることで、ケースのSLA(例:期限までにケースが解決したか)を満たしているかどうかをチェックできます。 チェック結果を活用し、必要に応じて「対応期限を過ぎたケースがある」などのEメールを管理者に送信するといった設定も可能です。 設定する画面:Amazon Connect>分析と最適化>ルール |
| 添付ファイルの利用 | Amazon Connectインスタンス全体の設定で、添付ファイルの利用許可・不許可を設定できます。初期状態では不許可になっています。
有効にすると、エージェントワークスペースのケース>添付ファイルで添付ファイルをアップロードすることができるようになります。 ※インスタンス全体の設定なので、例えば、顧客とのチャットコンタクトでは添付ファイルを利用せず、ケースでは利用するといったような細かい制御は標準機能の範囲ではできません。 |
| 問い合わせフロー内でのケースの作成・更新 | 電話やチャットなどのフローに「ケース」のブロックを設定すると、フローでケースを取得・更新・作成できます。ボットによる自動処理などに応用することができます。 自動的な処理を行ったことの通知を担当者に送信する、Amazon Connect外のシステムへ連携処理をするといったことを実現するには、AWS CLI(AWSの種々の操作をコマンドラインで操作する方法)でケースイベントストリームを作成します。 2025年11月末に下記のアップデートがあり、ケースの運用の手間が削減されました。 ・該当ケースに電話やメールなどで対応した場合、問い合わせ履歴を自動的にそのケースにリンクする機能 ・電話、Eメール、チャットなど、複数のチャネルにまたがる問い合わせを1つのケースで管理できる機能 設定する画面:Amazon Connect>ルーティング>フロー |
| 顧客プロファイルへの統合 | 顧客プロファイルにケースをオブジェクトとして統合できます。 ケースのデータを顧客プロファイルの項目と同じように活用するためには、ケースを顧客プロファイルのオブジェクトとして登録する必要があります。これにより、例えば顧客セグメント作成といったアウトバウンド施策へのデータ活用ができるようになります。 設定する過程でAmazon Connect Cases から Event Bridge にデータをストリーミングするため、他のシステムへのイベントの連携などにも活用できます。(例:重大度が高いケースが作成された時、SQSキューへ配信し、リアルタイムでメール通知すると同時に外部システムへ登録する) Event Bridgeを利用したデータ統合は別途システム構築が必要です。 設定する方法:CLI ※画面からの設定はできません。 |
| 各種API(CLI) | ケース機能の各種操作ができるAPI、CLIが提供されています。 Amazon Connect Cases connectcases -- AWS CLI 2.33.2 Command Reference |
| 複数インスタンスへのケースフィールド・ケーステンプレートの設定 | AWS CloudFormationを利用することで、複数のAmazon Connectインスタンスに同じケースフィールド・ケーステンプレートを設定できます。 また、設定内容をコードとして保存・管理できる(IaC)メリットがあります。 設定する方法:AWS CloudFormation |
ケース機能にまつわるFAQ
ケース機能に関するよくある疑問点をまとめました。
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Q. ケース機能は、完全に日本語で利用できますか? |
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A. ほとんどを日本語で利用できますが、2026年1月19日現在は下記の機能は英語で表示されます。
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Q. ケース機能とタスク機能は両方ともTODOを管理する機能です。それぞれの違いは何ですか。 |
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A. ケースはエージェントスペースで参照・編集できる案件台帳であり、電話やチャット、タスクなどの個々のコンタクト履歴を紐づけて案件の進捗を管理することができます。 |
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Q. ケースの全機能は画面からの設定だけで利用できるようになりますか? |
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A. ほとんどの機能は画面からの設定で利用可能ですが、一部の機能(例:ケースイベントストリームの設定)にはAWS CLIの利用が必要です。ケースイベントストリームの設定の手順及びCLIのサンプルは公式情報がありますが、どのデータを連携するかを含めた実際の運用を検討するにはCLIの内容を理解するための知識が必要になります。 |
まとめ
Amazon Connectのケース機能の概要をご紹介しました。項目やテンプレートの柔軟性、AIの自動要約など、比較的簡単な業務であればケースを利用するだけで案件・商談を管理することができそうだというイメージを持っていただけたでしょうか。
次回の記事ではフローによるケース自動化、SLAとルールの活用、ケースデータの活用方法など、運用で効果が出やすいポイントを具体例とともに紹介します。更新通知を受け取りたい方は弊社のメールマガジンにぜひご登録ください。
バーチャレクスでは、Amazon Connectを中心としたAWSサービスと生成AIを組み合わせ、顧客接点領域に向けたソリューションを提供しています。今回ご紹介したケース機能以外にも、Amazon Connect Contact Lens、Amazon Q in Connectなどの最新機能の知見をご提供可能です。導入を検討されている方は、ぜひご相談ください。
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過去の記事で顧客プロファイルの紹介もしていますので、ぜひお読みください。
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執筆者紹介

プロダクトエンジニアリング&サービス部





