コールセンターにおける人手不足と採用難がますます深刻化している状況の中、高い品質を維持して、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を向上させつつ、生産性を高めるセンターオペレーションを行うことは必要不可欠である。主には、処理時間の短縮(AHTの削減)と業務量の削減(単純な問い合わせ件数を減らす)の2つで、それらに大きく貢献するのは、ナレッジとセルフサービスの充実である。今回は、ナレッジやセルフサービスをどのように活用していくべきか、また、効果的なツール選定のコツについて、ご紹介する。
スマートフォンの普及により、複数チャネルをシームレスに連携して一貫したサービスを提供するオムニチャネル対策は企業として喫緊の課題である。現在、それなくしては、消費者のロイヤルティを高め、カスタマーエクスペリエンスを向上させることは難しい。
企業に問い合わせる際、昨今の消費者の行動パターンは、大きくは以下の3ステップである。これがスムーズに行えると、顧客満足度は高まり、企業に対するロイヤルティが醸成される。
1. ネットで検索:企業HPやコミュニティサイト、口コミサイトで調べる
2. 問い合わせる:WEB問い合わせフォーム、チャット、メール、電話
3. 投稿:口コミサイトやSNSへレビュー投稿
上記2.の問い合わせに中心的な役割で対応しているのは、やはり、各企業のコンタクトセンターやカスタマーサービス部門であることがほとんどだが、各チャネルを横断的にまたいでオムニチャネルの顧客対応を行っているところはまだまだ少ない。
それを実現するには、IT化の徹底とチェンジマネジメント(オペレーション、プロセスや組織の変革)が必要不可欠で、それを現業でハンドリングするフロントラインのオペレーターには、必然的にマルチスキルが要求される。
旧来のトレーニングやOJTによる詰め込み型の研修、日数を要する経験値を増やしていくような育成スタイルは、日々、アップデートされる商品・サービス情報、多様化する顧客とのコミュニケーションチャネルにとても対応できない。
そこで、セルフサービスも含むナレッジツールの活用がキーなってくる。直接的な導入効果としては、以下の4つである。
1. AHT(Average Handle Time/処理時間)の短縮
2. トレーニング時間の短縮
3. 問い合わせ数の削減
4. カスタマーエクスペリエンスの向上
1.~3.については、オペレーターの必要稼働時間の削減に繋がり、昨今のコンタクトセンターが抱える、人手不足の改善に大きく貢献する。
また、4.についてはセルフサービスの使い勝手が良くなれば、消費者がわざわざ電話やメール等で問い合せる手間を軽減でき、CES(Customer Effort Score/顧客努力指数)等の向上につながる。例えば、ある大手メーカーのテクニカルサポートセンターでは、自社サイト掲載のFAQ等セルフサービスを充実させるだけでなく、電話対応中に、ブラウザ共有や操作方法をメールで送るなどして様々なチャネルを効果的に駆使し、エンドユーザーの置かれた環境に臨機応変に対応し、迅速に解決方法を提供し、高い顧客満足度を実現している。
ナレッジツールと言っても幅広く、主に次の3つに分けられる。
1.社内向けナレッジ、FAQ
2.エンドユーザー向けセルフサービス
3.オペレーターの応対ナビゲーション
1.については、大部分のセンターで導入されており、キーワード検索等で情報検索をしているが、、先進的なセンターでは、応対ログや音声認識と連携して、適切な情報がリアルタイムで自動表示されるサジェスチョン機能等がすでに導入されている。
2.については、例えば、FAQ等でわからなかった場合に、チャットボット・有人チャット、あるいは、電話に自動的に誘導されたりする機能が必要不可欠である。
(※チャットボットの活用方法については「チャットボット、4つの型で考える活用方法~第1回~」を参照)
3.については、キーワードでの検索やタグのクリックだけで、対応時に必要な情報にたどり着くことができるナビゲーション支援ツールである。
ナレッジツールの導入を検討する際には、上記3つがパッケージされている、もしくは、連携し、レポート機能も充実し、それぞれに蓄積されたデータから問い合わせ傾向を把握でき、それらを足掛かりに、適切な情報アップデートが容易に行えるものをオススメする。
以上、今回はナレッジツール見てきたが、導入の際には、センターの要件定義や現在の運用も鑑みながら構築していく必要があるので、システムベンダーとしてだけでなく、コールセンターマネジメント経験豊富なコンサルタントが在籍する、弊社のようなところを活用するのが、ナレッジツールの可能性を最大限生かす近道と言えよう。
ご興味がある方は下記までお問い合わせください。