そもそも私たちが「落とし穴にはまらないためにはどうすればいいか?」という考えをするようになったのは、これまでコールセンター立ち上げに携わったクライアント様や関係者の方々より、以下のような声を多数頂くことがあったからです。
【よく聞く声】
いざアウトソーシングしてみたものの・・・
- 期待していたパフォーマンスが出ず、数年でアウトソーシングからインハウスでのコールセンターに戻した。
- 本当は、インハウスでコールセンターを運営したい、または別の業者に代えたいが、引き継ぎに時間と費用がかかるので、仕方なく現在のアウトソーサーに継続委託している。パフォーマンスには決して満足していない。
- コスト削減を期待して、アウトソーシングしたが、期待していたほどコストが下がらなかった。
上記のようなケースは、知らず知らずのうちに「アウトソーシング運営の落とし穴」にはまっていたのかも知れません。この「アウトソーシング運営の落とし穴」は、大きく分けると次の3つではないかと考えています。
(1) 「センターの見える化の設計」 → Case 1
(2) 「コストとパフォーマンスのバランス」 → Case 2
(3) 「アウトソーシング向け業務トランスファーの設計」 → Case 3
それでは順番に見ていきたいと思います。
Case 1: センターの見える化の設計
(1) 落とし穴にはまったA社の例:
A社が、インハウスで行っていたコールセンター運営を、ベンダーB社によるアウトソーシングに移管して1年。当初月次の報告定例会をテレフォンカンファレンスで行っていた。毎回提出される数値について、厳しい指摘を繰り返し、改善する方法も積極的に提案していたが、B社から提出される数値に改善の気配は見られなかった・・・。改善を促進するために定例会を週次に変更し、短いスパンでより詳細な報告内容を求めたところ、SVの残業時間だけが大幅に増加し、現状、業務の改善には繋がっていない・・・
(2) なぜ、こうなってしまったのか?⇒ センターの「見える化の設計」に落とし穴!
アウトソーサーからレポートは提出されており、そのため表面的な数字の上がり下がりは確認できます。ですが、根本的な原因に関しては、アウトソーサー任せの回答となり、信憑性に欠けるケースが多数あると考えられます。そのため、根本原因がブラックボックスになりがちで、本当の意味での解決にならず「同じ事象で何ヶ月、何年も悩んでいる」というセンターを多く見受けます。
(3) 解決策は?
アウトソーシングへの移管開始当初からコールセンターを俯瞰し、深堀した指標の設計やその指標を見える化するための詳細なレポーティングの設計をする必要があるのではないでしょうか。見える化の詳細設計を実行することで、ブラックボックス化を避けるとともに、アウトソーサー側にも"隠してしまう余地"を無くし、クライアント、アウトソーサー共に同じレベルで定性的な情報を共有できる仕組みを作る事が大切です。
Case 2: コストとパフォーマンスのバランス
(1) 落とし穴にはまったC社の例:
C社はコールセンターをアウトソーシングに移管し、コストを大幅に削減したいと考えていた。アウトソーサーD社から提案されたSV、スタッフの費用を更に削減するよう依頼し、かなり強引な交渉を重ねた上に、D社が渋々了承し、より安い交渉でコールセンターの移管ができることに安堵していたが・・・
D社委託によるコールセンターが稼働開始前になって「人が集まらない」という先行きが不安になるような報告があり、稼働後は、センターの運営品質が想定よりもかなり低い・・・。更にスタッフにも退職者が続出し、常に新人を投入しなければならない事態となり、教育コストが激増。
(2) なぜ、こうなってしまったのか?⇒ コストとパフォーマンスの考え方に落とし穴!
アウトソーシングする際の重要な目的である「コスト削減」を強く推し進めるが故にバランスを考えず、オペレーターの「単価」でコストダウンを図ってしまうと起こりえる事象です。単価のみで極端にコスト削減をすると、アウトソーサーは採用要件と採用単価を引き下げ、募集を行わなければなりません。そうなると必然的に当初想定していたスキルを満たさない人材を採用せざるを得なくなり、「生産性」や「品質」までも結果的に引き下げてしまいます。且つ、上がらない時給に退職者が増加し、更なる採用コストや教育コストがかさみ経費自体が上がってしまうということは非常によくあることです。
(3) 解決策は?
「コストを削減する」際は、パフォーマンスとのバランスを考えることが重要であると考えます。
Case 3: 【特に重要】アウトソーシング向け業務トランスファーの設計
(1) 落とし穴にはまったE社の例:
インハウスのコールセンター運営からアウトソーサーへの移管を検討していたE社。ベテラン社員が行っていた事務処理業務を委託することに決定。ベテラン社員が特にマニュアルもなく、迅速にこなせていた業務であったので、それほど苦も無く移管できるだろうと想定していが、アウトソーサーF社のSVに移管後、品質が劇的に低下、さらにF社よりエスカレーションが頻繁に来るため、社内リソースの応対工数が増加。F社にSVの品質向上と、自己判断できる人材確保を依頼したが、今度は判断ミスが多発してしまっている・・・。
(2) なぜ、こうなってしまったのか?⇒ アウトソーシング向けの業務トランスファーに落とし穴!
インハウスのオペレーションでは、権限を持つ社員が判断からオペレーションまでを一貫して行っていることが多く、そのために業務がスムーズに回っていたという事が考えられます。インハウスで効率的にこなされていた業務は、マニュアルが存在していたとしても、そのままの状態でアウトソーサ―に移管してしまうと、業務がスムーズに回らないという事がよくあります。アウトソーシングでは、SV(スーパーバイザー)/LD(リーダー)/OP(オペレーター)という三階層の権限ロールに分断された状態で、組織的な対応を行う必要があり、それに応じた業務設計が求められます。そういった部分で、しっかりと業務設計が出来るアウトソーサーを選定しないと、思わぬところで「業務が回らない」という結果となってしまいます。
(3) 解決策は?
アウトソーシング向けの業務トランスファーの詳細設計と構築が出来るアウトソーサーを選定することが、インハウスからアウトソーシングへの移管を成功に導く重要なポイントであると言えます。
■ 業務設計は綿密に行う
上図から、注意すべき点は以下の3点となります。
- インハウス運営用とアウトソーシング運営用の業務詳細設計は違う
- 権限範囲をSV/LD/OPと分けて考える必要がある
- BPR (Business Process Re-engineering/ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が可能なアウトソーサーを選定する必要がある
つまり、設計しておくべき項目×インハウスでのベテラン作業者のナレッジ、それらをアウトソーシング用にカスタマイズしたり、構築し直す(BPR)が可能はアウトソーサーを選定する必要があるわけです。
インハウスでは通常、業務が縦割りで人に紐づいているケースが多いが、アウトソーシングは役割により業務を横軸で区切る運営が想定されるので、移管する際に「業務の再設計」が必要となります。
まとめ:アウトソーシングに失敗しないポイントを整理
アウトソーシングへの移管について「落とし穴」にはまらないための3つの手法を念頭に置き、アウトソーサーを選定すべきとお伝えしてきました。特に重要と考えているのは、BPRが出来る(アウトソーシングにあった業務トランスファーが出来る)アウトソーサーを選定することであると言えます。読者の皆さんが、失敗しないアウトソーシングのポイントを理解することで、自社と協働し、コールセンターの価値向上を促進できるアウトソーサーを選択する視点を手に入れていただければ幸いです。
なお、バーチャレクス・コンサルティングでは今回ご紹介した「3つの落とし穴」に関して以下の対応を取り、インハウスでのセンター運用からアウトソーシングへの業務移管をご支援しております。
ツールでセンター業務の見える化を支援します
- 全体数値から個人全ての数値をリアルタイムで確認できるツールを提供しております
- 利用しているナレッジも共有することで業務がブラックボックス化することを防ぎ、クリーンな運営を実現しています
パフォーマンスを定期的にチェック
- パフォーマンスレビュー会を現場運営・マネージャー・部長と連携し、月次で運営状態を定期チェックできる仕組みを導入しています
- 貴社内/弊社東京センター、佐賀センターによりご要望にあった運営を実施しています
立上げ専任担当が業務設計構築を行います
- 現場運営以外に立上げ専任担当が責任を持ってセンター運営構築を行うことで、インハウスでの運営からアウトソースへの運営業務ナレッジトランスファーが実現できます
最後になりましたが、今回の記事が少しでもお役に立てる情報であれば幸いです。本記事のご意見や「アウトソーシングについて詳しく話を聞きたい」などありましたら、お気軽にページ下にある「お問い合わせ」から相談いただけると幸いです。
弊社ではクライアント企業様のニーズに 応じて付加価値の高いアウトソーシングサービスをご提供しております。アウトソーシングサービスに関して興味、または具体的な課題がある場合など、お気軽にお問い合わせください。
執筆者紹介
オペレーションサービス統括本部 業務運営管理グループ
CRM/BPOソリューション構築担当 マネジャー