カスタマーサクセス理論から考えるRPA導入効果拡大のためのポイント -中編-

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RPA導入における心得とプロセスのコツ~UiPath導入現場から~前編弊社では、カスタマーサクセスの概念を基として、RPA関連サービスの展開に取り組んでいる。我々が提供するRPAのサービスは、単なる「業務効率化ツール」としてRPAを導入して終わり、というものではなく、RPAが本質的にお客様の成功に貢献するものにしていくための支援を目標としている。前編に引き続き、RPAがよりお客様のビジネスの成功に貢献していくために、弊社が必要だと考えるポイントをご紹介させていただく。

キーワード

  1. CSM(Customer Success Manager:カスタマーサクセスマネージャー)
  2. タッチモデル
  3. 大成功
  4. タイムトゥバリュー
  5. カスタマージャーニー

前編では上記キーワードの1~3を取り上げたので、本編では4について詳しく紹介していく。


【キーワード4】タイムトゥバリュー

企業に対して製品やサービスを販売する場合、購入側にその価値を取引直後に実感してもらうことは難しい場合が多い。そして、購入側が期待する期間内に期待した価値を感じることができていなければ、ソリューションの継続、追加購入の可能性は極めて低いだろう。このような事態を防ぐため、迅速な価値提供を行うことが重要であり、それは「タイムトゥバリュー」の向上にとことん取り組むべきである、というカスタマーサクセスの原則の1つとして紹介されている。タイムトゥバリュー向上の秘訣は、顧客と協力して価値達成の具体的な指標を固め、その早期達成に向けて何度も取り組み、都度期待値との調整を行っていくことにある。

RPAというソリューションは、まだまだユーザーとなる方々にとって一般的なものであるとは言い難いため、とりわけ初期段階においては、まずRPAがどのようなものかを見せて、その可能性を実感してもらい、成功体験を積んでいってもらうことが重要なポイントと言えるだろう。またその際に、定量的な価値達成の指標に頼り過ぎないことも重要だ。ロボットを動かすユーザーが、ロボットが実際に動く様子を見て感動したり、着実に業務が自動化されていく様子を見て将来のあり方を一緒に議論できるようになったりするなど、定量化できない価値も大事にしていかなければならない。人を巻き込んでいくためには、論理だけではなく感情を伴うと効果的であるということは言うまでもないだろう。

RPA導入時に当たっては、導入を進める側は、まずは導入計画、工程設計を適切に行うことが重要になる。対象業務が10ステップあった場合に、全てを自動化してから使ってもらうのでは、もはや価値を期待する期間は終了してしまっている可能性があるからだ。それはつまり、ユーザーにとっての成功体験にはなり得ず、感動が生まれる可能性がないことを意味する。何を以て価値と感じてもらうか、その価値をなるべく短い期間で実感してもらうためにどうすべきかを、ユーザーと相談しながら推進していくことが導入成功のための肝となる。

例えば、10ステップのうち、2ステップごとに確認してもらうのがよいか、5ステップで確認してもらうのがよいか、あるいは、完成度は低くてもまず10ステップ通して確認できた方がよいか、そのサイクルが1週間単位なら長く感じるのか短く感じるのかなど、ユーザーによってもいろんな考え方があるだろう。いかにユーザーの成功体験、感情を連れて導入を進めて行けるかを考え、実際に利用するユーザーとコミュニケーションを図りながらどんなロボットなら役立つかを議論し、なるべく早期に動くそのロボットを見てもらい、更に有効なものにしていくための調整を繰り返していく。このことがRPA導入作業におけるタイムトゥバリューの向上につながる。

一連の導入作業が完了した後には、ユーザーにロボットの使用方法を理解し、親しんでいってもらうための手ほどきが必要となる。いわゆるオンボーディング(=新規ユーザーをサービスに適用させるプロセス)と呼ばれるフェーズであり、この期間を短くすることも非常に重要だ。仮にオンボーディングに数カ月かかってしまっては、ユーザーがロボットを有効に使えない状態が続くことになり、RPA導入の効果は期待値を著しく下回ってしまうだろう。オンボーディングをスムーズに進めていくためには、それぞれのユーザーに対して適切なサポートを提供していくことが重要だ。

しかし、ツールに対する理解度、業務に対する理解度は、当然のことながらユーザーによって異なるので、理解するために要する時間、あるいは実際に割ける時間も異なってくるだろう。加えて業務が違えばその業務をカバー範囲とするロボットの複雑さも異なる。そのためそれぞれのユーザーに対して適切な手ほどきを手厚く行っていくことは理想的ではあるが、リソース面なども考慮すると現実的ではないだろう。

ここで、前編で説明したタッチモデルの考え方が活きてくる。ユーザーの特性、ロボットの特性などの変数を整理したうえで、想定される大成功への寄与度合を一つの基準として、モデルに応じたオンボーディングプロセスの設計が重要になる。

タッチモデルに則ったオンボーディング設計の結果、いわゆるハイタッチモデルに該当するユーザーに対しては、1対1のサポートを実施していくことになる場合もあるし、部署単位であれば定期的な説明会/質問会の開催となることもあるだろう。一方で、テックタッチモデルのユーザーに対しては必要に応じて情報収集ができる場を提供していくことがポイントになる。実際にカスタマーサクセスを志向する企業を例にとると、オンライントレーニングプログラム、FAQの拡充や、製品ユーザー同士が交流できるコミュニティサイトを運営するなど、ユーザーが一定程度自走して学習できる機会の提供に力を入れていることが多い。モデルによってはチャットボットの仕組みを使って、より双方向でのサポート体制を引く企業もある。これらのことは、RPA導入の推進側が、テックタッチに位置づけられる導入先部署、ユーザー向かいに実施した方がよいことを示しており、弊社としても効果的な取り組みであると考えている。

RPA導入を推進していく側は、ユーザー、導入先部署がどのような期待値を、どのような時間軸で考えているかを意識することが非常に重要であるため、これらのオンボーディングプロセスもユーザーの声や足跡をもとに継続的にブラッシュアップし、更なるタイムトゥバリューの向上に努めていかなければならない。

(後編につづく)


執筆者紹介

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執筆者紹介:
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部
マネジャー 寺前 祐希(てらまえ ゆうき)

入社以来、通販、社会インフラ業界などの大規模システム導入や、 製造業の新規事業計画プロジェクトなどに従事し、多様なプロジェクト経験を持つ。 その後複数のRPA導入プロジェクトを経て、現在は自社RPA事業の推進を担当。