カスタマーサクセス理論から考えるRPA導入効果拡大のためのポイント -前編-

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RPA導入における心得とプロセスのコツ~UiPath導入現場から~前編

以前のブログ(成長企業の常識、企業と顧客を成功に導く「カスタマーサクセス」-これからの時代の必勝法- ~第2回~にて、カスタマーサクセスの、お客様の成功(ゴール)に向かうために必要なサポートを行い、最後まで伴走するという基本的な概念をご紹介させていただいた。昨今、カスタマーサクセスはビジネスを進めるうえで、なくてはならない重要な考え方の1つとなりつつあり、弊社(バーチャレクス・コンサルティング)では、このカスタマーサクセスの概念を基として、RPA関連サービスの展開に取り組んでいる。弊社が提供するRPAのサービスは、単なる「業務効率化ツール」としてRPAを導入して終わり、というものではなく、RPAが本質的にお客様の成功に貢献するものにしていくための支援を目標としている。

今回は、弊社翻訳の書籍「カスタマーサクセス」に登場するキーワードに沿って、RPAがよりお客様のビジネスの成功に貢献していくために、弊社が必要だと考えるポイントの一例をご紹介させていただく。

キーワード

  1. CSM(Customer Success Manager:カスタマーサクセスマネージャー)
  2. タッチモデル
  3. 大成功
  4. タイムトゥバリュー
  5. カスタマージャーニー

【キーワード 1】CSM(Customer Success Manager:カスタマーサクセスマネージャー)

カスタマーサクセスの概念の中で、カスタマーサクセスマネージャーは「顧客が(購入してくれた)自社製品やサービスの価値を最大限に引き出せるように手助けする人物」と端的には定義されている。

RPAの導入に置き換えて考えた場合、RPAを使ったビジネスの成功を目指すRPA導入ベンダー、あるいはお客様社内のRPA推進役(経営企画室、IT部門等)から見て、実際にRPAを導入する部署の方をカスタマーと見立てることができる。つまり、RPA導入部署がRPAの価値を最大限に引き出せるように手助けする人物をアサインすることが重要と考えることができる。

実際にRPA導入部署がいくつかの業務に対して自動化を実施してもその後のコミュニケーションがなく、範囲の拡大や他業務への展開の温度は下がってしまうケースは存在する。また、更に望ましくない例として、一度は自動化したものの、上手く使いこなせず結局手動作業に戻しているようなケースも残念ながらレアではない。

こういった事例の発生を防ぎ、各導入部署がより効果的に、より広くロボットと付き合い、ビジネスを成功に導くために、一緒になって考えていくCSMのアサインが重要となる。

【キーワード 2】タッチモデル

CSMアサインの重要性については理解できるものの、実際には1導入部署ごとに1名にRPAの有識者を配置することは、現実的ではないだろう。導入する部署の数に対して推進役、RPA有識者を多く確保することは、大規模でのRPA導入に取り組む企業ほど難しいためだ。

そこで、「タッチモデル」というキーワードになぞらえたアプローチをご紹介したい。タッチモデルとは、カスタマーサクセス理論の中で、顧客価値ごとにアプローチ方法を階層化する考え方である。上からハイタッチ、ロータッチ、テックタッチと分類され、下に行くほど顧客価値が下がる一方で、一度に対応できる顧客数は増えるという構造を指す。

RPA導入に置き換えた場合、実際の導入対象業務の範囲や、自動化が見込める業務、また他部署への横展開が見込める要素が多い業務を持つ部署がハイタッチカスタマーと捉えることができる。現状一律で行われがちな業務量調査からの定量的な基準に加え、部署の影響度や、業務の汎用性なども観点として考えるということもポイントの1つとなり得る。

ハイタッチの部署に対しては、RPA有識者を専任で置いたうえで、寄り添って効果の拡大を目指していくべきだろう。エンジニアリングもできる要員をアサインして、プロトタイピングなども駆使して効果拡大のスピードアップを図ってもいいだろう。一方で、導入対象の業務が現状あまりない、あるいはまだ検討段階でない部署については、テックタッチモデルの対象として捉えることができる。メールや社内ポータルによる情報発信や、定期的な勉強会などの開催を通して、RPAの効果について説明、啓蒙活動を行って導入可能な業務の洗い出しや、RPAへの理解を促すことが主な取り組みとなる。実際に稼働しているロボットの動画コンテンツや、他部署での成功事例などを共有すると、とりわけ効果的なアプローチとなるだろう。

各部署がどのタッチモデルの対象になるかを適切に定義し、大きな効果が見込める部署についてはきめ細かくフォローを行い、効果があまり見込めない、あるいは不明な部署については、ITを使ったコミュニケーションにより継続的に機会創出を図っていくなど、部署の状況に応じたアプローチを採ることが重要である。

【キーワード 3】大成功

いずれのアプローチを採る場合でも、利用部署、ひいては実際にロボットの実行ボタンをクリックするユーザーに対して、なぜ我々(RPA推進側)がRPAに取り組んでいきたいのかを伝え、どのようにコミュニケーションを取っていくべきかを考える必要がある。

カスタマーサクセスの概念において、顧客はソリューションやサービスを、その特徴や機能を使うために買うのではなく、あくまで事業目標を達成するための手段として買っているのであり、提供側は顧客がその"大成功"に向かって正しく進んでいけるよう導くことが義務と説明されている。そしてそれにはまず何が「顧客にとっての成功」なのかを理解しなければならない。

そのソリューションをRPAとして考えてみよう。その場合、RPA導入の取り組みを単なる「業務自動化ツールの導入」として捉え、「いかに業務が効率化されたか」を目標に置くのでは、機能を買い、機能を使っているだけに過ぎない。リストアップされた業務を優先順位に従って自動化していき、コスト削減の定量的目標だけを捉えて正しく大成功に向かっているか否かを判断できるだろうか。RPAの取り組みにおける大成功とは、RPA(=デジタルレイバー)が企業の戦列に加わり、事業課題の解決、目標に寄与していくことではないだろうか。そして、その大成功に向けて伴走していくことが、RPA推進側に課せられるミッションということになるのである。

例えば、コンタクトセンターにおいては、今まで重要と認識していながらも、手が足りずに行えていなかったVOC分析をRPAに任せ、応対品質の更なる向上や取扱商品/サービスへのフィードバックのペース(月次→日次など)、品質を上げることにより、企業全体の売上アップへ導く。また業界を問わず、ビジネスプロセスのいたるところで管理されるべき(管理したい)KPIが、ヒトの業務効率化の元に諦められていることもあるが、RPAをそのようなデータの蓄積/分析を行う助手として活用することでPDCAサイクルを回し、ビジネスプロセスの最適化を図れば、企業の成功に貢献できるものになると考える。また、RPAは既にAIを搭載したOCR、BRMS製品と連携(製品によっては内包)することにより更なる高度化をはかっている。RPA×AIにより、貢献の幅も広がってくるだろう。

RPA導入のゴールはあくまでも「大成功」であり、それは利用部署、ひいては企業の目標達成に貢献することである。もちろん利用部署単位で何をもって成功とするかは異なるものであるため、コミュニケーションは何が成功なのかを理解するところから始めなければならない。そのうえで、目標の測定と管理を定期的に行い、目標を少しずつ更新し、成功を積み上げた結果が大成功につながるのだ。

中編へつづく)

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