2017年 CRM/コンタクトセンターテクノロジートレンド

cover20170217.jpg様々な場面で持て囃されているAI(人工知能)や、ブロックチェーンに代表されるFintech(financial technology/フィンテック)IOT、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)。2016年も様々なテクノロジーが注目を浴び、多くの企業がその提供者または利活用者として方向性を模索もしくは実際の取組みに着手し始めています。 今回は、弊社バーチャレクス・コンサルティングの主戦場の一つである、CRM/コンタクセンター領域におけるテクノロジーのトレンドについて、昨年11月に行われた国内最大のコールセンター・CRM業界の一大イベント「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2016」の様子も振り返りつつ、ご紹介したいと思います。(すでに3月になってしまったので今更感もありますが、、)

CRM/コンタクトセンター領域のテクノロジーに対する需要は高まっている

米ガートナー社のレポートによると、エンタープライズソフトウェア市場において、CRM関連ソフトウェアは、ERP(Enterprise Resources Planning)関連ソフトウェアの売上を追い越す勢いです。ここ数年、各企業におけるCRM関連ソフトウェアへの投資意欲が高まっています。そして本レポートによると、2017年にはERPとCRMの規模が逆転。今後もこの流れが加速することが予想されています。
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(引用:Gartner Forecast: Enterprise Software Markets, Worldwide, 2012-2017, 2Q13 Update.)

CRM/コンタクトセンター領域におけるテクノロジートレンド

このように、テクノロジー需要が高まっているCRM/コンタクセンター領域ですが、現在、具体的にどういったトレンドがあるか、そして2017年はどんな展開が予測されそうか「コールセンター/CRMデモ&コンファレンス 2016」の各企業の出展内容、セミナーテーマや取扱商品、ソリューションなど各種公知情報を踏まえ、考察していきます。

まず、全体観としては、以前の本ブログ記事「2016年CRM/コンタクトセンターの潮流(テクノロジー編)」にまとめた内容の傾向が続いている状況です。ただし、クラウド、オムニチャネルといった2つの潮流については、特筆すべきトレンドと言うよりは、"当然のこと"となっているように思われます。「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2016」においても、クラウドやオムニチャネル自体をテーマとしたものは少なく、それらの活用を前提としたテクノロジー・ソリューションを取り扱っている企業が多く見られました。以下目立ったものをいくつか見ていきたいと思います。

AI導入によるチャットボットの先進化

AIの導入によって、チャットボット(人工知能を活用した「自動会話プログラム」)回答確度の向上や、多言語対応が可能となるなどの恩恵を受けています。現在は第三次AIブームと呼ばれるだけあり、様々な企業ブースで紹介されていました。

その言葉の解釈や機能の幅も様々ありますが、すでにアスクル社やコカ・コーラ社をはじめとする各社に導入されています。(アスクル社事例:http://web-tan.forum.impressrd.jp/n/2016/05/20/22891)。

他にも、公開されている事例としては、米eBay社でカスタマーサービスに送られてきた画像・テキスト・動画・行動ログなどのデータをもとに、ユーザーの嗜好性を解析した上で、商品のレコメンドを能動的に行ってくれるものがあります(参考記事:http://markezine.jp/article/detail/25461)。

また、三菱東京UFJ銀行のQ&Aサービスでは、多言語に自動対応してくれるなど、AI導入によってチャットボットが従来のFAQ回答の枠を越え始めている事例が出始めています。(参考記事:http://robotstart.info/2016/02/23/kozaki_shogeki-no9.html

2017年にはレコメンド機能がさらに発展し、ショッピングアシスタントサービスMeziのように、予算などのニーズ情報から、候補アイテム・コンテンツを自動で提案してくれるようなサービスがさらに増えるのではないかと思われます。より自立的にOne to Oneの回答を準備し、顧客管理機能と統合されたシステムに進化していくことが考えられます。

WebRTCによる"擬似"実店舗化

WebRTCというテクノロジーが注目されています。WebRTCとはWeb Real Time Communicationの略で、Webブラウザを介し、ユーザー同士が直接・リアルタイムに情報・データをやりとりすることを可能にするテクノロジーを意味します。Webブラウザ上で手軽に利用できるテレビ電話(インストール不要)のようなものをイメージしていただくと良いかと思います。

展示会では、コンタクトセンターのオペレーターが、WebRTCを用い、消費者がスマホや自宅PC画面で表示しているECサイトを共有することで、会話をしながら視覚的に誘導や操作方法の指南をすることを可能とするソリューション等が紹介されていました。WebRTCはAmazonなどで既に導入・利活用されており、自宅でも実店舗のような案内を受けることができるようになっています。

2017年は既存のCRMやPBXと連携可能なソリューションが現れ、WebRTCの需要はさらに増加すると考えられています。またDimension Dataのベンチマークレポート(PDF)では、複数のチャネルの中で、特にビデオチャットのニーズが飛躍的に伸びるであろうと予測しています。また、米ガートナー社も、2017年には、ビデオとビジュアル技術が、企業にとって、顧客やパートナーと対話する上で、さらに重要になると予想しています。(参考記事:http://www.gartner.com/newsroom/id/2934717

米国ではすでに多くのWebRTC開発プラットフォームが公開されており、コンタクトセンターを含むさまざまな分野でWebRTCコラボレーション製品やサービスの導入が進んでおります。その一例として、遠隔操作で自由自在に動き回って現場の様子を観察し、その場にいる人と会話することを可能とするDouble Roboticsが挙げられます。その場にいなくても、Webブラウザを介しFace to Faceでコミュニケーションがとれ、多少の作業も行えるため、一人の店員が複数の店舗で顧客を案内することができるような機能も、海外では実用段階に入っているようです。

日本企業でWebRTCを利用しているケースはまだ多くはありませんが、WebRTC用のオープンソースを提供するサービスも出始めており、今後本格展開・浸透が見込まれます。

感情分析によるコミュニケーション満足度向上

通話音声・解析関連テクノロジーの領域では、感情分析が台頭してきています。これはテキストでは分からない心理情報を声質など他の情報から分析し、トラブル防止・サービス向上に繋げるものです。展示会でも、スマホ画面のタッチの動きによって顧客心理を推定し、最適なタイミングでコンタクトセンターへ誘導するというソリューションも紹介されていました。ここでのポイントは、従来の顧客応対後の通話記録データに基づく事後分析から、通話中でのリアルタイム分析へ着眼点が移行している点が挙げられます。例えば、以前も紹介した、みずほ銀行の事例については今後その成否を注視していきたいところです。(参考記事:http://callcenter-japan.com/news_topics/1890.html

また昨今では、インバウンドの問合せ対応時の状況把握のみならず、アウトバウンドでの成約率向上、オペレーターのメンタル管理、オペレーター毎の顧客満足度評価など多くの用途で感情分析技術が使われ始めています。このような流れを受け、2017年は分析精度を高め、定量化された感情に基づいてどのような行動マニュアルを作るのか、また、どのような関連技術と接続・連携することで新たなシナジーを生み出すことができるか、その活用方法が注目されます。

テキストデータの自動要約による業務効率化

テキストマイニング関連の技術を高度化した、テキストデータを自動で要約してくれるソリューションも多く紹介されていました。ソーシャルメディアにe-mailやWebチャット等のノンボイス系の応対チャネルの存在感が増しつつある昨今において、このテキストデータの自動要約機能は、センターの運営効率化、ひいては、応対履歴作成の全自動化を期待させるものと言えます。

また、この技術の応用として、通話音声データの自動要約に関するソリューションも紹介されていました。多くのセンターにおいて、音声データは、クレーム発生時の確認、もしくはオペレーターの品質管理といった"耳で聞く" 使用用途に限定されがちです。そのため、ややもすればただ膨大で無価値になりがちです。このような状況に対し、音声認識技術と上記自動要約技術を組み合わせることで、音声データから、応対履歴等の価値ある情報を自動的に作成することを可能とします。まず音声認識技術で、音声データをテキストデータ化。次に自動要約技術で、通話中の言いよどみや不要会話文の削除、書き言葉への変換、主旨やキーワードを識別。そして、最終的に、タイトルと要約文まで作成してくれます。 なお、課題となっているのはコスト面で、予算に余裕がないとそもそもの導入が難しいというのが現状です。言い換えれば、現時点では投資対効果が期待できるのは、一定の席数を有し、一定の圧縮すべき"後処理時間"があるセンターということになります。有用性には疑問の余地はないため、2017年以降、この壁がいかに打破されていくのか動向を注視していきたいところです。

まとめ

これまで2016年を振り返りつつ、2017年以降のテクノロジーの動向をまとめてきましたが、やはり最注目は、(CRM/コンタクトセンターの領域に限った話ではないですが)AIがどのように発展していくのかでしょう。AIは今後5~10年で、顧客サービスを向上させる大きな要素になると予想されています。また、PTPのレポートによると、AIはデータ分析、消費者との非対面での対応業務、時間のかかる単純作業において、活用が進むであろうと述べています。国内でも、既に事例も出てきています。三井のリパークのコンタクトセンターでは、利用客の問い合わせ応対と清掃や集金を行う駐車場運営スタッフの報告受理業務について、AIを活用、効率化・高度化する取り組みが開始されています(参考記事:https://www.mf-realty.jp/news/2016/20161013_01.html)。

このようにCRM/コンタクトセンター界隈においても、テクノロジーの積極的活用が必要不可欠であるということは自明です。しかし、テクノロジーの活用は何らかの課題の解決・解消手段でしかありません。そのため、テクノロジーの活用に際しては、何をどのように活用するのか、何故活用するのか、そしてどういった成果を期待するのか、といった目的・意図をまず明確化することを忘れてはなりません。

テクノロジーに振り回されるのではなく、テクノロジーを使いこなす」こういった意識を持ち、テクノロジーと向き合う姿勢が今後益々重要になっていくのではないでしょうか。

弊社ではコンタクトセンターやCRMに関するコンサルテーションや各種関連ツールの導入支援などを行っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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